夜雀と、座敷童
(ブ、ブラックバードじゃなくて、夜雀だと……?)
弱いと思っていたものが、実は強かった。これは戦闘力に限らず、日常生活でも良く起こる現象だろう。ギャップ、ともいうかもしれない。まぁ、この場合、俺が女の子であれば恋愛通り越して心臓発作起こすくらいには驚いているのだが。
「ピ?ピピイ!」
俺が呆然としていると、夜雀は心配したのか、足をつついてきた。
「あ、あぁ、大丈夫だよ。助けてくれて、ありがとな。」
「ピピイ!」
俺がお礼を言うと、もともと自慢げだった夜雀がさらに自慢げになって、胸を張りすぎて反り返るような姿勢になっていた。
「そうだ、腹が減ったな……」
そう、俺は朝から何も減ってない。今までは焦りで気付かなかったが、何か食べないともうそろそろ飢えて死にそうだ。
家を出るとき、必死で掴んできた持ち出し用バックから、乾パンと水を取り出す。防災対策しておいてよかった。
「ほら、お前も食え。」
「ピピッ!」
俺が乾パンを三枚ほど落としてやると、夜雀は嬉々としてつつき始めた。ここだけみれば、完全に鳥だな……
そうして俺達は軽い朝食を終え、そこらの散策をすることにした。
幸い、そこは自然が多く、木の実を採ったり、ウサギを狩ったりすることができた。そうして、食事は用意できたのだが……
「はぁ、雨が降ってくるなんて……」
「ピィ……」
俺達は近くにあった洞窟で雨宿りをしながら、ため息を漏らした。
雨で体温が奪われれば、生存率が大幅に下がる恐れがある。
だが、今も雨は地面にたたきつけるように降り、気分を落としていく。
「はぁ、あいつら、元気かな……」
気分が沈むと、どうしても魔物たちのことを思い出す。変な話だ。あいつらと出会って、少ししか経っていないのに。それだけ、あの時間が濃密だったという事だろうか。
「いけない、これはダメだ。気分が落ち込むと、体も元気じゃなくなる。」
何とか自分を奮い立たせ、洞窟のなかで飯を作る準備をしようとした矢先、夜雀がけたたましく鳴き始める。
「おいおい、どうした?」
俺の問いかけに返答することなく、夜雀は洞窟の奥に向かっていく。
そして、あるところで立ち止まると、そこで立ち止まり、あるところを蹴り飛ばす。
「ピピィ!」
夜雀が蹴った先に、うっすらと扉が出てくる。
「まさかこれは……幽霊の隠れ家か?」
幽霊の隠れ家。それはダンジョンに稀に存在する、空間系の魔物が操っている空間のことである。空間系の魔物は、小部屋などを拠点にできるだけでなく、どこからでも拠点に入れるようになる。つまり、拠点の心配をしなくて済むのだ。
「千載一遇のチャンスだ!夜雀、入るぞ!」
「ピピイ!」
掛け声と同時に、俺は幽霊の隠れ家の中に突入する。姿は見えないが、存在は感じることができる。
「夜雀、そこの窓のそばだ!」
「ピピイ!」
窓のそばに夜雀が風魔法を当てると、スゥッと幼い幼女が姿を現した。
「あぁ、こいつは座敷童だな。」
「お願いだべ!殺さないでくんろ!」
「ピピィ!」
「ヒィッ、なんだべ、この鳥!?」
座敷童。亜空間を形成し、自分の家のようなものを作る。性格は非常に憶病で、珍しいモンスターとされている。
「おい、命は奪わないし、取って食おうってわけじゃない。だが、俺達の仲間になってくれるか?」
「仲間になるって……どういうことだっぺか?」
「そのままの意味だ。実は俺、帰る家がなくてな。そんな時にお前がいると、非常に助かる。俺の仲間になれば、殺さない。これでどうだ?」
「あぁ、選択肢はあるけど拒否権ない奴だっぺよ……はぁ、おら、あんたたちの仲間になっべ。これから、よろしくけろ。」
(主従関係の発生を確認しました。)
頭の中にアナウンスが鳴り響き、光があたりを包む。この感覚、いつやっても慣れないものだ。
「座敷童、ステータスを見せてくれるか?」
「ほい、これで見えるっぺか?」
座敷童 ランクD
力:F
魔:C
知力:C
俊敏D
スキル:座敷童の棲む家:(和風の亜空間を生成することができる。拡張収縮を自由
に行い、どこからでも入ることができる。
また、亜空間内に入った味方のモンスターの能力に補正をかけることができ
る
かくれんぼ(自分が生成した亜空間の中で隠密行動をとることができる)
座敷牢(自分が生成した亜空間の中で、相手の行動を縛ることができる)
お茶くみ(お茶であれば、緑茶やほうじ茶、紅茶までどんなものでも美味し
く淹れることができる)
……最後のスキルは便利枠と割り切るとして、亜空間内で味方にバフをかけたり、相手の行動を縛るというのは、かなり便利である。
拠点にも困らなくて済むし、案外、座敷童は本当に幸福を呼び込んでくれているのかもしれない。
そう思っていると、外からモンスターが飛び込んできた。
「キッキッキッ!」
小鬼。小柄ながらも鬼族特有のパワーを持ち、侮れない相手である。
「夜雀、黒の羽だ!座敷童は、俺と夜雀と自分をかくれんぼで隠せ!」
「ピピィ!」
「わ、わかったべ!」
夜雀が黒の羽をまき散らし、小鬼は呪いにかかった。
「キキキ!?」
だが、小鬼は問題ないと考えているようで、夜雀に向かって突進していった。が、座敷童のかくれんぼで姿が見えなくなった夜雀を、小鬼はとらえきれなかった。
「夜雀、風魔法でじわじわ削っていけ!」
「ピピッ!」
「キキキィ!?」
そうして、小鬼の体に増えていく傷と反比例して、小鬼の動きはどんどん遅くなっていく。最終的に、小鬼は衰弱して、畳の上で息絶えた。
(おいおいおい、絵面はじみだが、えげつねぇことできるじゃねぇか!?)
「よくやったぞ、夜雀、座敷童。」
一旦二匹にねぎらいの言葉をかけ、もう休むことにした。今日は疲れた。明日になって、状況が改善していればいいのだが……
そんなことを考えながら、俺は深い眠りについた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
本作はパロディなどが多く含まれるため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。
読んでくれただけでも嬉しいですが、♡やフォローなどもしてくれるとさらに嬉しいです!
それでは次回もよろしくお願いします!
オークたちとのほのぼのダンジョン探索譚 白福 @shirahuku314159
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。オークたちとのほのぼのダンジョン探索譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます