第3話【入隊試験①】
「入隊試験に合格しもらう必要がある。」
「入隊試験?…」ししおどしが鳴りそうな空気が流れた。
「入隊試験の内容としては、その年の入隊志願者同士で無作為に構成されたチームで戦ってもらう。言わば、サバイバルゲームだ。」
「サバイバルゲーム?…」
どうやら、敷地面積約5000ヘクタールという広大な土地で5~8人で構成された分隊×50で勝ち抜き方式を採用している。半数の脱落者は不採用となりそこから残りの半数が採用されるみたいだ。採用部隊からは順位が高い順番でより優秀な部隊へ配属さあれるため採用されたからと言えゲームを終わらせるわけにはいかない。それぞれの部隊が待遇のいい場所に配属されることを祈って最後まで戦い続ける。もちろん敷地面積が広い分、演習範囲も狭くなってくる。バトロアの安置縮小と言えば簡単だ。そう、まさにこの試験はバトロアなのだ。
「試験の内容はわかりました。でも、やっぱりまだ状況が…」
「ま、合格することを願っているよ。もし合格できたら俺の部隊に派遣されるように手を打っておくよ。俺はこう見えても軍の人事部の人望を持っているからね。」
そう言い残し蓮は退室した。その蓮についていくように鞘も海斗に一例をし、退室していった。
入隊試験当日
海斗はとある部屋に案内された。そこにはおそらくこれから仲間になるであろう人たちが集っていた。海斗はその人達に向かって軽い挨拶をしたが返事が返ってきたのは1人だけっだった。
「(なんで、こんな不愛想な人達なんだろう…)」そう思ったとき別の一人が声を上げた。
「貴様今、”なんでこんな不愛想な人達なんだろう”って思っただろ?」そんな問いに海斗は思わず思考が停止した。海斗が口を開ける前に彼は続けた。
「俺は、相手の心を読む異能を持っている。俺の前で嘘は通用しないよ。」
彼に対する海斗の第一印象は恐怖だった。
「相手の心を読むってどういうこと?」
「そのままの意味だ。貴様もしや、そんなことも知らないのか?」知らないに決まっている。続けて彼は言った。
「もしや、お前…。あの噂になっていた転生者か?」海斗はギョッとした。心の声も見抜かれた挙句、自分の身分も言い当てたからだ。海斗がどう答えればいいのか考えているうちに彼は図星だと気づいた。
「まじかよ…。なんで転生者なんかと一緒に行動しないといけないんだよ。ふざけんな。」彼の発言にその場は凍り付いた。
「転生者なんてほとんど無能力者みたいなもんだろ。圧倒的に不利じゃん。」そんな空気にはお構いなしに差別を連発する彼に向ってまた別の一人が声を上げた。
「黙って聞いていたけど、君。そういうのはよくないよ。」この部隊一背の高い好青年だ。
「一時的ではあるけど。この試験の分隊隊長に任命されている名において、同じ仲間への侮辱は許さない。無能力者といえど、活躍している軍人たちはたくさんいるじゃないか。」なんとも、イケメンな海斗へのフォロー。
「すまない。この私”霧山葵”が代わりに謝る。本当にすまない。…、ところで君、名前は?」本日二回目のなんともがでた。なぜ、少し年が違いそうなだけでこんなに礼儀の差が生まれるのだろう。不思議で仕方がない。握手を求めてきた葵の手を海斗は強く握り返し海斗自身も名を名乗った。そうしている内にアナウンスが部屋に響いた。
「まもなく、第165回防衛軍入隊試験を開始します。参加者は至急、本館地下第3講堂まで移動せよ。」
「よし。ほんなら、行くか。」続々と部屋を出ていく仲間の後を海斗は追った。
ー本館地下第3講堂ー
「参加者はこれで全員か?」
「はい。参加者743名の入場を確認しました。」軍の幹部らしき者がステージ上に立っていた。
会場には言葉では言い表せられないほどの緊張感が漂っていた。
「諸君!よく我々防衛軍の入隊試験に来てくれた!快く歓迎しよう!だが、誠に残念ながらここにいる半数は脱落してもらう。脱落したくなければ精々試験に励むがいい!」
ついに始まる入隊試験に海斗は深呼吸をした。これからの選択一つ一つがこの先の命運を分けることにプレッシャーを感じていた。
「大丈夫だ。海斗という者よ。我らがついている。」葵の励ましに海斗は自信を持った。
ー第1演習場(エリアH‐73)ー
木々や草花が生い茂る山の中、海斗はここに来る前の出来事を少し思い出してしまい、気を悪くしていた。
「顔色が悪いけどどうかしたか?かれこれ3時間は潜伏しながら移動しているからな、無理もない。」緊張で一杯の状況でも優しく声をかけてくれる葵、なんていいやつなのだろう。海斗はこの試験に合格してもこの人と一緒にいたいと思ってきた。
「だ、大丈夫です。」少しの微笑みがこぼれた直後、部隊内により一層緊張が高まった。
「敵6名視認。距離およそ260。こちらには気づいていない模様。どうしますか?隊長。」
「6となると狙撃するにもリスクがある。我々の隊には今7名いるが二人以上外した場合カバーも取り切れない。たとえ人数を大幅に減らしても我々の一人でも欠けたら後々不利に
なる。一旦ここはGPS型静寂弾でやつらの動向を監視しろ。」
とても長い時間が過ぎた。支給された時計を見るとその時刻は、試験開始時刻から28時間も過ぎていた。試験日数は最大で七日(168時間)だ。まだその内の七分の一しかたっていないというのに海斗の体力は限界を迎えていた。さっきの部隊の動向を探ってもこれといった動きはない。そのそろ第一縮小が始まる時刻もあって全部隊はより一層慎重になっているようにも思える。そんな中、一筋の弾像と銃声が辺り一面に響いた。敵の襲撃だ。それに合わせ海斗の部隊長の霧山は各隊員に命令を下した。
「部員番号2,3は直ちに敵の方角を算出しろ!4,5は反撃用意を整えろ!6は直ちに防衛網を作れ!」手慣れているのか素早い指示を各隊員に出した。
「敵、およそ6名。距離120で7時の方向!」2,3が算出した敵の位置により早急な対応をとることができ海斗達の第17分隊は反撃を開始した。海斗が今一度周りの状況を見るため辺りを見渡すがとあることに気が付いた。葵隊長の姿が見えなかったのだ。そして、次に海斗が葵を見たのは先ほどは持っていなかったはずの青白く光り輝く刀を片手に敵部隊へと突っ込む姿だった。海斗が呆気に取られている間に葵は敵部隊を一瞬で全滅判定に追い込んだ。海斗がその光景を見て唖然としていると葵からの無線が入った。
「こちら葵。至急に部隊の被害を確認したのち直ちにこの場を立ち去る準備をしろ。オーバー…。」各隊員は命令通りに動いたのち撤退の準備を始めた。
怪物討伐 @waramotchi
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