第2話:栄光ある名前を引き継いで新造された艦!
朝霧造船所“第12番ドック”巡洋駆逐艦「雪風」
巨大な乾ドックに、淡い朝霧が立ち込めている。
白い靄の中に浮かび上がる艦影……それはまさに伝説となった駆逐艦“雪風”を模した新造艦だった。
その艦首には、かつての“雪風”の設計を踏襲しつつも、現代技術と神秘的な力を注ぎ込まれて再建された新たな姿があった。
艦体は漆黒に染まり、装甲表面には古代文字のような呪紋がうっすらと浮かび上がっている。
巡洋駆逐艦“雪風”は、史実の奇跡の駆逐艦を超える存在へと生まれ変わっていた。
甲板に立つ『富嶽武夫』艦長は、その姿を静かに見つめていた。
彼は、会社をリストラされて餓死及び凍死寸前のところ、朝霧翁に助けられた過去があった。
濃霧の中、ふと一陣の風が吹き、霧が割れる。
「……久しいな、富嶽よ」
その声に、富嶽は振り向いた。
霧の中から、ゆっくりと現れたのは朝霧翁。
長い白髪と白衣をまとい、手には神楽鈴を携えている。
「朝霧翁……様、お久しぶりです! どうしたのですか? 神々しいお姿になられて? コスプレですか」
富嶽は帽子を取り、深く一礼した。
朝霧翁は笑いながらどうかな? この登場はというと富嶽も笑みを浮かべて頷く。
「この巡洋駆逐艦……“雪風”かつての大日本帝国海軍の幸運の名を引き継いで最新鋭の艦として建造されたのですね?」
「そうだ」
朝霧翁は静かに頷いた。
「かつての雪風は幾度もの死線を超え、奇跡の艦として歴史に刻まれた。だが、君には酷な任務になるが……初めての航海になるが……この戦いは奇跡だけでは勝てぬ! 日本は分断され、歴史が捻じ曲げられている。列強による支配は、国民の魂をも蝕みつつある」
富嶽の眉が険しくなる。
「……つまり、別世界の日本を救えというのですね?」
「そうだ!」
朝霧翁の瞳が鋭く光る。
「この雪風を率いて、伊400艦長『日下敏夫』少将と合流せよ! そして、共に日本を取り戻せ」
富嶽の表情が一瞬、硬くなる。
「伊400……あの伝説の潜水艦ですか……!?」
「日下敏夫は、数多の並行世界を救ってきた男だ! 彼が導くならば、日本は再び一つになれる! 神も半分あきらめているが期待もしている」
「……分かりました! 今こそ、ご恩をお返しする時ですが……しかし、この歪みをもたらした敵は?」
「列強だけではない。」
朝霧翁の顔が険しくなる。
「歴史を捻じ曲げた存在……影に潜む何者かが、時の流れを狂わせている。単なる武力では勝てぬだろう」
富嶽は瞳を閉じた。
雪風を建造した理由が、今、はっきりと理解できた。
「わかりました」
富嶽は帽子を被り直し、きびきびと踵を返した。
「この富嶽、日本を取り戻す旅に出ます!」
「では、頼むぞ、富嶽武夫! お前と雪風、そして日下敏夫に日本の未来を託す! 先ずは並行世界移動要塞“高天原”へ行くのだ」
「了解しました!」
富嶽は艦橋へと向かう階段を登ると、朝霧が声をかけてくる。
「富嶽よ!」
「?」
「“雪風”は奇跡をもたらす艦。だが、その奇跡を引き寄せるのは、お前の覚悟とお前を支える仲間たちだ!」
富嶽は振り向かずに応じた。
「覚悟なら……とっくに決めています! 4年前に・・・・・・・絶望のもと、死にかけた時に助けられた時から」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます