少しむかしむかしの話

「ララ、1組に転校生来たらしいよ」

「へぇー。あっそう。」

「、、、いいんだ。仲間増やさなくて。」

「うっさい。別に良いし。」

「この、テルちゃんで十分?」

「それでいいよ、、、」


***

「ももちゃん、おはよっ!」

元気な声で雪菜ちゃんが近づいてくる。

「おはよ。」

こっちも笑顔で返す。私と姫芽ひめと雪菜ちゃん。最近おなじみの朝。


少し歩いてから、雪菜ちゃんが訪ねる。

「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、、、」


雪菜ちゃんが聞きたいことは、

①最近そこそこ美人な女子二人組がこっちをジロジロ見てくること。気になって「あったこと、ある?」って話しかけたら、「あ、いや」って言われたこと

②算数の問題教えて

以上。


私の回答はというと、

①背が高い方が、3組の学級委員、篠川しのがわ蘭々ららで、二つ結びの子が2組の学級委員、神田かんだ 瑛流てるる。あんまり関わらない方がいい。

③おけ。


実は蘭々ららさん、クラスのよくいるカースト上位勢で、いじめにも関わってたらしく、、、クラスでは一匹オオカミで近寄りがたいし、なんか怖いし、、、


同じく学級委員の糸兎いとちゃんも、

「なんなんあいつら。ロクに意見も出さないのに前期も後期も学級委員なんかやってて。正直邪魔なんだけど。マジで!」

とか言っていました。ちょっと言い過ぎかもだけど、、、


「ありがと。すっきりした~!」

「そんなにいやだったの?」

優しい姫芽が優しく聞いた。

「まあね。すこーしウザかっただけ。」

話し方から少しだけウザいわけではなさそうだが。

「それにしても暑いね。溶けちゃいそう。」

みんなは汗だく、冷蔵庫から出したアイスキャンディーで、夏休みの話を楽しそうにしている。

「うん。もうすぐで夏休みだからね。」


今は1学期の終盤、7月始め。

雪菜ちゃんが転校してきたのが6月の初め。

1ヶ月で随分この学校にも慣れてきたようだ。


初めの頃は、もの凄く大変だったからな。


***

「ちょっとまってぇ~」

体育の授業前、体育館へ移動しているときのこと。

「あと2分!あと2分!」

私はやっぱり鈍足で。

「やーいモモタロ!遅刻して怒られるぞ~!」

いつもいじってくる男子、例の茶太郎ちゃたろうに煽られまして。

「ざけんなチャタロー!」

「ボーゲンはよくないんだ~!」

本当に!


でも、言い返したって何ともならない。

「はあ、疲れた。」

前には、誰もいない。


後ろにも、誰もいないんだろうな。


廊下に、靴の音が木霊する。

「はあ。」

溜息一つ、項垂れ一つ。

置いていかれてばかりだ。


あーあ。

足さえ速ければ良かったのに。


「あの、中川さん?」

いつの間にか、廊下に木霊していた靴の音が2つになっている。

あれ。って

「あ、雪菜さん。」

「あの、体育館てどこ?」

「あ、そか。知らないもんね。」

2人でゆっくり体育館を目指す。

チャイムがなる。でも構わない。


「あれ、雪菜さんは?」

ま、まさか迷子?

「ゆきなさーん?」

階段を急いで降りる。

「いたっ!」

「あ、中川さん。ごめんね、前の学校は1階に体育館があったの。」

「うん。いいよ。こっちももうすぐつくから。」


「おーい中川。あと転校生!早く来い!」

「「はいっ!」」

焦って走る。雪菜さんの方がやっぱり早い。

「なーぜ遅刻した?」

「あの、案内してて、、、」「迷子になって、、、」

あ。ハモった?

「そうか。よし、運動して早く練習しろ!」

「「あ、はい。」」

なんとか許された、、、よかったぁー。


***


と、まあこんな感じでよく迷子になっていまして。

今では、

「おーい、ももちゃん。次は体育館だよ~!」

「おっけ~。もう迷子にはならないよね?」

「勿論。」

自信満々に答えてくれました。


「あれ、あの子、、、」

「ん?どした?」

「ううん。何でもないの」


私、機織雪菜はたおりゆきなの目には、あの女子二人組が写っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る