異世界なら、きゅん死しそうなリンゴの木の精霊といたい

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 リンゴの木の精霊の謎に、せまる!問題です。どうして、あのリンゴはきらわれなくてはならないんでしょう?

 異世界の精霊も、いろいろ。

 リンゴの木の精霊という者も、いる。

 手の平サイズの、リスのような妖精で、たまりにたまった不満を神様にぶつけているところだ。

 「神様!どうして私たちは、殺されるほどにくまれなければならないんです?リンゴの木の枝が、人間たちに切られてしまうんですよ!」

 聞かされて、神様は困り顔。

 何と答えてあげれば良いのか、慎重に言葉を選ぶ。

 「それはな…お前たちの木が、枝を伸ばしすぎだからだよ」

 「え~?」

 精霊は、不機嫌になるだけ。

 「木が枝を伸ばして、何が悪いのでしょうか?」

 神様は、静かにさとすのみ。

 「リンゴの精霊よ」

 「何です、神様?」

 「お前たちが枝を伸ばしすぎれば、日陰が多くなるぞ?」

 「ええ…。でも、日陰が多くなるのは、すずしさを求める人間にとっては良いことなのでは?」

 「いや…」

 「?」

 「それが、困る素なのだ」

 「?」

 「枝が伸びすぎて日陰が畑を覆ったら、どうなる?」

 「日陰が、畑を覆い尽くして…あ!」

 「枝が伸びすぎれば、作物に影が落ちて育ちにくくなるではないか」

 「…あ、はい。そうかもしれません」

 「それで、人間どもは怒っておるのだ」

 「神様!」

 「何だ?」

 「私たちの問題は、わかりましたが…」

 「ふむ」

 「でも…」

 「ふむ」

 「私たちリンゴの木は、なぜ、殺されるほどにくまれなければならないのですか!」

 精霊のほっぺたが、怒りで真っ赤。

 神様も、押される剣幕。

 「…こりゃ、どうしたもんか」

 「神様!どうしたもんかじゃあ、ないでしょう」

 「そうだな」

 「神様は、枝を切られたくなければお前が変わることが必要と言いたいんでしょう?」

 「う…」

 図星。

 精霊の言葉に、たじたじの神様。

 「お前が変われ変われといわれても、神様のほうが変われていないじゃないですか?いつも、同じ姿で!」

 この精霊は困ったことを言うもんだと、頭をかかえはじめる神様。

 「…こうなったら、仕方あるまい」

 神様は、精霊に本当のことを話してしまうのだった。

 「…ならば言おう、リンゴの精霊よ」

 「何です?」

 「…なぜ、そなたたちの木がきらわれるのかを」

 「はい」

 「それはな…」

 「それは?」

 「お前たちの木はな…」

 「私たちの木は?」

 「リンゴはリンゴでも、毒リンゴの木だからじゃ」

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