第15話 おまじない

あの、お姉さんって、怪談、好きですか?


あ、好きなんですね。私も好きです。フィクションとして。でも、小説以外は苦手です。この前見た映画なんかは怖すぎました。たぶん、絵があると駄目なんだと思います。怖がりですから。え、主題歌に女の子の声、ですか? いえ、私は気づきませんでした。


話を戻しますと、私、学校で図書委員なんですけど、図書室の見つかりにくいところにぼろぼろの冊子みたいなの、見つけて。見たら、表紙に、うちの学校の文芸部誌の名前が書いてあったんです。私、入学してから文芸部に入り浸って、バックナンバーを読ませてもらったりしてたんですけど、見たことないものでした。


変だなって思って、文芸部の友達に訊いたら、その子も見たことないって言ってました。それで、二人で確認したんですけど、ちょうどバックナンバーの抜けているところのだったみたいでした。


けど、文芸部では、部ができてからずっと、部誌は二冊ずつ保管しないといけないルールなんです。何年度のものか、とか、第何刊か、とかが書かれていなかったから、それまで気づけなかったんですが、それを発行した時に在籍していた部員の欄を見ると、確かに抜けている年があるんです。ルールがあるのに。


それで、何はともあれ読んでみよう、ということになりました。私も、友達も、例にもれず活字中毒だったので。


中身は、おおむね他と変わらない普通の文芸部誌でした。詩と小説が載ってる、まあ黒歴史の塊です。ただ、一点、違うことがあるとすれば、それは冊子内の特集でした。


特集自体は、昔はありました。どうしてだかぱったりと辞めてしまったみたいですが、まあ企画がつぶれることはよくあります。バックナンバーにはちゃんと特集があるものが残っていますし。


それで、その特集が、「巷で流行っているおまじない特集」だったんです。何をもって巷としているのか、甚だ謎ですが。


それで、文芸部長に訊いたんですけど、その人もわかんないって言ってました。だから次に、顧問の先生に聞いたんです。そしたら、当時の部員を知っている人に連絡を取れるそうで、メールで訊いてもらいました。


それで、その方の言うことには、文芸部誌に書いてあったおまじないを試した人が、続々と体調不良……、まあ、風邪が長引くとか、熱が高めとか、その程度らしいですけど、とにかく体調不良になったらしいんです。でも、その時の部員が図書室に冊子を置いたわけじゃないそうです。


それで、さらに詳しい話を聞こうと、当時の部員に話をつなげてもらおうと思ったんですが、そう上手くはいきませんでした。


当時の部員、全員死んじゃってたらしいんですよね。


35年以上前の冊子だったので、死んでても別におかしくはないです。タイミングも死因もバラバラだったそうですし。問題は一つだけ、当時に何があったかわからないことだけです。



というわけで、どうしてその文芸部誌が図書室にあったのかは、やっぱりわかりません。


ただ、友達が特集のおまじないを試そうと言ったのだけは、止めました。



だってあんなの、やったって意味のない、ただの気休めじゃないですか。

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