第11話 言ってた
まず、返信が遅くなり申し訳ございません。忙しかったわけでも放置したわけでもなく、単純に怪談というのが思い当たらなかっただけなのです。
けれど、思い返してみれば、少しだけ不思議な話というのはあります。
私が子供の時でした。私の家庭は核家族ではなく、私の両親、それから祖母と、三世代にわたって一緒に住んでいました。田舎だったので、それが普通でしたね。
当時、私は毎週塾に行っていました。一度家に帰って道具を揃えてから、バスを使って行くんです。家に帰った少しの間に、祖母がよくおやつをくれるんです。その時に、祖母と軽く話したりするのですが。
塾のある日に、祖母がそれを止めたことがあるんです。
「今日は行かんとき」って、軽い調子で言ってたので、特に何も思いませんでした。私もその日はあまり気乗りしなかったので、休む口実ができたと、それ以上は特に考えませんでした。
その日の夕方だったんですよ。祖母のお姉さんの訃報が入ったのが。
母がばたばたしながら、「○○おばちゃんが亡くなったんやって」と言うと、祖母が「まあ、年やからねぇ」と返していました。かなりのニュースであるのに、そこまで驚いた風ではありませんでした。
それから私に向かって、「××ちゃん、塾行かんどってよかったねぇ」と、祖母は言いました。普段なら塾に行っている時間帯なので、呼び戻すのに手間がかかったはずでした。だから、塾に行っていなくてよかったのだと、祖母は言ったのです。
その時の私は、亡くなった大叔母としばらく会っていなかったのもあり、何かを思ったりはしませんでした。
けど、大人になってから、もしかして祖母は、自分の姉の死を予感していたんじゃないかと思うようになったのです。荒唐無稽な話ですし、単なる偶然だとは思うのですが。
なんとなく気になり、私は祖母に尋ねました。
「なんであんとき、○○さんが亡くなるってわかったん?」と訊くと、
「お姉さんがね、言うとったわけよ」と答えます。
「自分はおらんこうなるけぇ、おうちのことよろしくねぇって言っとったのよ」
「○○さんが?」
「そうよ」
「死んどったんやないの?」
「そうやけどねぇ、言われたもんやからねぇ。そうやわ、××ちゃんにお願いがあったんよ」
「私に?」
「そうやよ。今度はね、××ちゃんにお家のこと頼みたいんよ。売っちゃってもええけどね、ばあちゃんとかの墓参りはちゃんと行っとってね」
「うん、わかった」
それから、私は祖母と別れ、家に帰りました。
そういえば、祖母は5年前に死んでいました。
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