2、小学生 学級にて

今日は始業式。小学生4年生になった。

ワクワクしながら学校へ向かう。誰と同じクラスかな。先生は誰かな。ドキドキしながらいつもの通学路を歩いていた。


学校に着くと、昇降口にクラス表が貼られているのが見えた。4年生のクラス表は……あそこだ!

見知った顔がたくさん見えて、学校が始まったことを改めて感じた。

まず1組から自分の名前を探していく。苗字が相原だから、上の方だけ見れば分かるんだよね。でも友だちの名前を見つけたくて、結局一番下まで見ちゃう。

あ、りりちゃん1組だ。1番仲のいい幼なじみなのに、離れちゃった。

悲しんでる暇もない、とりあえず次2組!2組のクラス表を見ると、1番上に名前があった。2組かぁ。先生誰だろう。先生は始業式で発表されるんだよね。楽しみ!友達いるかなぁ。

2組のクラス表を下まで見ていき友だちの名前を探すと、去年同じクラスだった友だちもいたし、2年生のときに同じクラスだった子もいた。嬉しい!

「いっちゃん!」

「わぁ!りりちゃん!クラス離れちゃったね〜!」

「離れたねぇ……。でも来年林間学校あるから!今年はその準備として?一緒じゃなかっただけだよね!」

「あはは!そうだね!来年こそは一緒だから!」

「ね!ねー、りり1組じゃ先生怖いかなぁ。」

「あー、そうかも。」

1組の先生は基本的に学年主任を担うから、怖い先

生のことが多い。去年も怖い先生だったもんなぁ。全然有り得る。

「やだぁ怖い先生。山田先生とかかな。」

「3年の時も2年の時も山田先生1組だったもんね。誰だろ〜?」

そんな話をしながら、4年生のフロアに向かう。学年が上がるにつれて上の階の教室になるから、階段を登るのが大変だ。

やっと教室にたどり着き、自分の席を探す。探すといっても1番前なことは分かりきっているから、確認するくらいなんだけど。

1番前だと一番最初の号令とかやらなきゃいけなくなるから嫌だなぁなんて思い始める。毎年そうなんだよね。自分の名前を恨んでも仕方ないんだけど。

そんなことを思っていると、隣の席に見知った顔の子が座った。

「あ!いっちゃんの隣だ!よかったぁ。」

2年生の時に同じクラスだった子。隣の席みたいだ。

「久しぶりー!知ってる子いてよかったぁ!ねぇ、先生誰だろうね。」

「誰なんだろう。いっちゃんは去年2組で森山先生だったもんね。2組だからまた森山先生っていうのも有り得るよね。」

「ん〜、でも同じ先生じゃつまんないなぁ。」

「えー、そんなこと言わないでよー!ウチ森山先生結構好き。」

「まああんま怒ったりしないしね。始業式で先生発表だよね。わードキドキする!」

「ね!誰だろうなぁ。」

そんなことを話していると、ガラガラっと教室の扉が開いた。新学期の朝の会だけをする代わりの先生だ。

「席着いて〜。朝の会するよ。じゃあ、相原さん号令お願い。」

やっぱり私になるよね、と思いながら号令をかける。

「起立、気をつけ、礼。」

朝の会は私の号令とともに始まり、先生の話をなんとなーく聞いていると、すぐに始業式のある体育館に向かう準備が始まった。

廊下に整列し、クラスごとに列になって体育館に向かう。4年生の教室からじゃ体育館遠いな、なんて思いながら、あまり見慣れない廊下を歩いた。


体育館に着くと、全校生徒が集まっていた。うちの学校はそこまで人が多いわけではないんだけど、1学年に3クラスくらいはある。1学年100人くらいかな。まだ1年生は入学してないから、500人くらいが体育館に集まっているわけだ。

でも始業式って集まっても意外と始まるの遅いんだよね。早く始まらないかな、と思いつつ時計を見つめていた。周りの皆もなんとなくソワソワしていて、先生に静かにしなさいと怒られていた。

始業式がはじまると、早々に担任発表になる。2年生から順番に発表だから、4年生はちょっと先だ。

へぇ、あの先生2年生の担任になったんだ。ちょっと意外、とかそんなことを思っていると思ったよりもすぐに4年生の担任発表になった。

1組は、やっぱり怖い学年主任の先生。今まで学年主任だった山田先生とは違って、前まで6年生の学年主任をやっていた先生だ。怖そう……。りりちゃんドンマイ。

そして次、2組。2組は……。あれ、知らない人だ。羽田先生?っていうみたい。若い女の人。喋ってる感じはすごく優しそうな先生だ。先生の感じを見てなんとなくほっとする。

そしてそれから先の始業式の話はぜーんぜん頭に入ってこず、先生どんな人だろうばっかりが頭をよぎっていた。1年間どんな感じになるのか、楽しみだなぁ。


教室に戻ると、羽田先生が待っていた。

「皆さん初めまして!羽田真理子といいます。今年から先生として赴任しました。よろしくお願いします!」

明るくて優しそうな先生。2組でよかったかも!

その後、春休みの宿題を提出したり、雑巾を椅子に引っ掛けたり、新学期らしいことをして今日は午前中でおうちに帰った。

4年2組になって、これからが楽しみ!



4年生になってちょっとして、授業が始まった。羽田先生の授業は丁寧で、いつも分かるまで教えてくれる。でもちょっとだけ字が汚い。先生は、私も字が上手くなるように頑張るね!といつも言っていた。難しい算数の授業も、ちょっと楽しく受けられた。


国語の授業の時、好きなものの詩を書く授業があった。

「みんなのすきなものを自由に書いてみてくださいね。」

羽田先生はニコニコでそう言った。

うーん、好きなもの。まずはいちごでしょ。

『わたしはいちごが好き

あまくて

ちょっとすっぱくて

赤くてかわいい

いちごが大好き

緑のへたはいりません

まっ赤ないちご

わたしのこころも

赤になって

どこかあまいよ

おいしいね』

いい感じにできたかも!

先生がみんなの席を回っている。私の席の近くにも来て、「いちごが好きなの?いい詩だね。かわいい。」と言ってくれた。

「いちご好きです!えへへ、ありがとうございます。」

「じゃあ、できたらもう1個考えてみようか。」

「はーい!」

そうしてもう1つ詩を考え始めた。すきなもの、すきなもの。うーん。先生とか……?先生に見せたら喜んでくれるかも。そんなちょっとあくどい気持ちもありながら、先生についての詩を書いていく。

「わたしは羽田先生がすきです。

いつも優しくて

楽しくて

かわいいです

ちょっと字が下手だけど

それも先生らしくて大好きです

挨拶すると

ニコって笑って返してくれる

私もニコニコになれる

来年も羽田先生がいいな」

なんて、ちょっといい子ぶりすぎてるかな。でも本心だし、悪くないよね。

先生が席を回ってくるのをワクワク、ちょっとドキドキしながら待った。

「あ、一笑ちゃんもう2個目できたの?早いね。」

先生が後ろから話しかけてくる。

「はい!できました!」

「あら、これ先生?」

「あ、えへへ。そうです……。」

先生を目の前にして言うのはちょっと照れくさい。っていうか、結構恥ずかしい。

「嬉しいことしてくれるじゃん。うふふ、ありがとう。とっても嬉しい。来年も一緒だといいね。」

「はい……!」

「えー、嬉しいなぁ。うふふ。ありがとう見せてくれて。」

先生はそう言うと他の人の机に行ってしまった。恥ずかしかったけど、喜んでくれていたみたいで私も嬉しかった。よかったぁ。

大好きな先生。学校に行けばいつも教室にいる。おはようございますって言うと、おはようございますって笑いかけてくれる、そんな先生が大好きだ。


そんなこんなで一瞬で過ぎていった一学期。

二学期も元気な顔を見せてくださいって先生が言ってた。風邪ひかないようにして、二学期の始めには絶対一番乗りで教室に行くんだ。


そしてながーい夏休みが過ぎ、一番乗りで学校に行ったのに、羽田先生はいなかった。

夏休み明け元気な顔を見せてくださいって言ったのは羽田先生の方なのに。

二学期から新しい先生に代わり、羽田先生は元からいなかったみたいに二学期三学期が続いた。

もちろん、戻ってくることはなかった。

今頃何をしているんだろうって。なんでいなくなっちゃったんだろうって。あんなに良い先生だったのに。すごく不思議だ。

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