第10話 【出発らしい】



 エルスさん達の家を出た後、1日特にやることもないので村の中を見て回った。

 ここに来た初日の時は、話を聞いて回るのに夢中であまり見て回る余裕がなかったのだが、改めて見るととても綺麗な村で、エルフらしい自然と調和しているような、地球では考えられないような景色だ。


 それから夕方くらいまで村の色々な所を見て回り―――


 ―――そして、その日の夜。またエルスさん一家に夕食をご馳走してもらった。

 とても美味しかった。会話も楽しかった······のだが、明日出発しようと思っているということを話した途端、エルフィナの機嫌が悪くなったような気がする。


 次の日。


「エルスさん。俺、そろそろ出発しようと思います」


「そうか、もう行ってしまうのか―――ならばこれを持って行きなさい。きっと君の旅の中で役に立つだろう」


 エルスさんは一つの布袋をくれた。

 中を確認してみると、金色の硬貨が数十枚入っている。


「袋の中には、一般的な家庭であれば贅沢をしなければ3年は暮らしていけるくらいの金貨が入っている。これは村を救ってくれたことに対する皆からのお礼と思ってくれ」


「こんなにもらって良いんですか?!」


「村を救ってもらったのだから、これくらいはさせてもらわないと君に頭が上がらないからね」


「ありがとうございます!大事に使わせてもらいますね」


 ――そして出発の時が来た。


 村の皆が見送りに来てくれている。


 「では行ってきます」


 「ちょっと待ったぁぁあー!」


 「······ん?」


 エルフィナがこちらに走ってくる。

 ―――うん?どうして君も今から旅に出るような服装をしているんだい?


「私もあなたについていかせて。絶対に足手まといにはならないと約束するから·····お願い」


 うむ。急すぎて困るな。どうしようかな


「危険な旅になるかもしれないし、ここには二度と帰ってこれないかもしれないけど、それでも良いのか?」


「ええ、覚悟はできてるわ」


「わかった。それならこれからもよろしく頼む」


 想定外の出来事もあったが、こうして俺の異世界での旅は再び始まった―――

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