第9話 【魔族だったらしい】



――奴らを倒し、すぐにエルフィナのもとへ駆け寄った。


「怪我はないか?」


「えぇ、膝を少し擦り剥いたくらい。ありがとう」


「それならよかった」


 なんだか彼女との距離が急激に縮まったような·····気のせいかな。

 その後、他のエルフ達の拘束も解いていった――


 最後の1人を解放した直後、緊張がほぐれたのか先程の戦闘を思い出して気分が悪くなる。


 村を守る為とはいえ、初めて人を殺めたのだから当然だ。

 そしてそこからの記憶はない。恐らく俺はそのまま気絶したのだろう――


 気が付いた時には借してもらっている部屋のベッドの上にいた。

 外はもう明るい。どうやら誰かがベッドまで運んでくれたらしい。


 服を着替え、装備を整えてから部屋の外に出る。あれからどうなったのか話を聞こうとエルスさんの家へ向かっていると、道中でエルフ達から感謝されたが、素直に喜べない。


 部外者である俺が、誰かもわからない人を殺して感謝されてもいいのだろうか······

 そんな思いは、エルスさんの家に到着してすぐに打ち消されることになるのだが。


 エルスさん宅に到着すると、外で花の水やりをしていたエルフィナがすぐさまこちらへ駆け寄ってくる。


「おはよう。それと、昨日は本当にありがとう」


「おはよう。助けになったのなら良かったよ」


 それから少し会話していると、その声に気付いたのかエルスさんとエルフィさんも外に出てくる。


「ユーリくん!起きていたのか!」


「おはよう、ユーリくん。疲れは·····取れるはずがないわね」


「えぇ。でも、ベッドまで運んで頂いたので少しはマシになりました」


「そう。それなら良かったわ」


「立ち話もなんだし、ユーリくんさえ良ければ中で話そうか」


 ――それからエルスさんの家に入り、昨日はあの後どうなったのか話を聞いた。


 驚いたことに、村を襲ってきた奴らは魔族らしい。前々から少数での襲撃はあったらしく、数こそ少なかったからなんとか対応出来ていたようで、今回は相手の数に圧倒されてしまったのだという。

 

「それにしてもユーリくん。隠密行動スキルの高いうちのエルフでも奴らにはすぐに居場所がバレたというのに、どうしてあんなにもバレずに戦うことができたんだい?」


 ········え?


「えっと――ただ茂みに隠れながら戦っただけです·······」


「それは本当なのか?だとしたら君は天才かもしれない。君が奴らの前に現れるまで我々には全く察知出来なかったし、"この世界"の者であれば誰もが持っているはずの魔力の流れを君から感じ取ることができないんだ」


 (あっ······魔力の流れに関しては多分。"この世界"の生物ではないからだと思いますよ――)

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