20250810
早朝6時前。アパートの私室にいる。一階で、ベランダの向こうは畑と山が広がるのどかな場所だったので、レースのカーテン越しに夜明けの空が見えた。鱗のように散った雲が登り始めた太陽に照らされ、桃色に染まっていた。空は黄金と水色を混ぜ合わせたみたいに美しい。私はその光景をどうにかもっと近くで見たくて、母に一言言って外に出る。せっかくだし散歩にでも行こうか。夏だけれど、この時間なら歩くのにも随分ましだと思える気温だった。
ずっと景色には緑があって、土道が続いている。踏切を越えて、学校の敷地に入り、様々みて周り、帰りに崖下のビーチを通る。海で遊ぶ人が多くごった返していて、日差しも出ていたのであまりのんびり楽しむことはできない。それでも海は素晴らしかった。散歩に出てから二時間近くが経っていた。そういえば母に連絡していない。
左手に山が広がる道に差し掛かった頃、証明写真機のような箱が現れる。いや、あるいはファミレスのボックス席、あるいは洞窟だった。そこには魔王が封じられているらしい。ただの悪魔だったかもしれない。あまり違いはないけれど、性別を言うなら男というのが正しい。
そこから声を聞いたのだ。私は誰かとその証明写真機じみたゲーム機を遊んでいた。言語を認識できない歌のようなものがかすかに聞こえて、岩壁に開いたうろに誘い込まれる。魔王を出してやらなければ。彼はそれほど悪い存在ではなく、むしろ、なんだったかな、すごく、私たちに近い。
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