危うい彼女
彼女はいついかなる時も危うい。
拾ったハンカチを初めて彼女に手渡した時はまだ気づかなかった。
それが彼女の危うさの一部であることを。
足取りは綱渡りのよう。歩きスマホをしているわけでもないのに、しっかり前を向いて歩いているはずなのに、歩幅も速度も一定のはずなのに、存在しない空間、見えない奈落へと足を踏み外しそうな雰囲気を常にまとっている。
ふとした時に、彼女は僕の目の前から一瞬で姿を消してしまうのではないか、そんな予感が頭から離れない。
彼女はよく物を落とす。ハンカチはもちろん、家の鍵、スマホ、財布、免許証、もういい年齢なのにこっそりバッグの中に住まわせているキャラクターのぬいぐるみ。そんな大事なものばかり落としていたらいつか彼女は自分自身という存在もどこかへ落としてしまうのではないだろうか。
彼女の危うさに僕はだんだんと目が離せなくなってしまう。これは恋だろうか。
いや、冷静に考えろ。彼女はただ、だらしないだけだ。
こんなだらしのない女に恋をするなんて。
芽生えかけた恋愛感情を別の感情に書きかえ今日は彼女のハンドクリームを拾った。
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