第52章 紅蓮のほとりでの再会
菱珪玉はけがの状態を百里景砂に聞きに行こうとしたが、そんな機会は訪れないまま菱家に戻る羽目になった。
次に、百里家に訪れることができたのは、菱家で行われていた談会の時だった。談会は、権勢のある家が、他の名家の子弟を集めて、自分の家に都合のいい教育を施すために開催される。百里家でそれが開催されたとき、十一歳になっていた菱珪玉もまたもれなく参加させられることになったが。
しかし、参加したはいいものの、菱珪玉にはどうしても教えられる内容に興味を持つことができなかった。だから、彼は再びその場から逃げ出してしまった。
だが、今度は四年前の反省を生かして走りはしなかった。ただ、菱家とは違い、生命を感じさせる植物を見ながら歩いていただけだった。
しばらくそうしているうちに、彼は百里家で最も有名な紅蓮の池にまでたどり着いた。
(この場所、いつだったか見たことがあるような気がするな……)
そんなことをぼんやり思っていると、遠くから重厚な音を響かせている琴の音が聞こえてきた。その音の方向へ目を向けると、七歳の時初めて出会った女の子がそこで琴を演奏していた。
七歳の時初めて聞いた彼女の琴の音は、十一歳となった今改めて聞いてみると、前よりも壮大な雰囲気を纏っているように感じられた。
菱珪玉はただぼんやりと、百里景砂の演奏に聞き入っていた。その時初めて、彼女の腰に紅蓮の玉佩がぶら下がっていることに気付いた。それが意味するところを、四家に属する人間が知らないはずがない。
(あの子は、百里家の長女だったのか)
演奏が終わり、菱珪玉は肩を落としてその場を立ち去ろうとしたところで、百里景砂は彼を呼び止めた。
菱珪玉は耳を疑いながらも、ゆっくりと振り返ったとき、彼女のまっすぐな視線に自分の軟弱なそれがちょうどぶつかった。
「お久しぶり。また会いましたね」
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