第9話 求める心は私を壊す
持って帰ってきてしまった。
ほぼ、反射的に。
コイツがなにかを訴えかけてきているようで、私はそうせざるを得なかった。
社内規定的には完全にアウト。
どんなに魅惑的、蠱惑的なモノを目にしようとも私はゴミ屋。
ゴミとして出されたものをただ、塵芥車に放り込み、ただ作業を行うだけ。
だが、ゴミにまみれた私の部屋の中に今、これがある。
二十文字×二十文字の作文用の原稿用紙の束。
幼少の頃には憎しみまで感じていたコイツが、ある種異様な雰囲気を放ち、私の前にある。
いつものように安い発泡酒を一気に煽る。
だが、コイツは目の前に存在し、より自己主張を強めたようにすら感じる。
「クソぅ……。俺は一体なにを考えているんだ……」
ひとりきりの部屋にごちたコトバが反響する。
もう一杯、発泡酒を煽る。
酒による酔い気なのか、夢想なのか、アタマが少し緩くなる。
「俺は……、お前との時間を……、ただ、欲しかっただけなんだ……」
気づくと私は、明との時間をその憎らしい肌色のそいつにぶつけていた。
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