第十三話

樋口くんから唐突に告白をされてから悩みに悩んだ。



私の小さな頃の夢は『玲央くんのお嫁さん』だった。



しかし、その夢が手に入りそうになると人間は突如として失う恐怖と戦うことになる。



付き合って合わなかったら?


この3年で何かが変わっていたら?


とか。



様々な不安と戦わなければいけなくなる。



私も頭が腐るんじゃないかと言うくらい悩んだ。



悩みに悩みに悩んで答えを出した。



今日がその答えを伝える日である。



告白されたファミレスで待ち合わせをする。




樋口くんが現れた。

当たり前のことなのに鼓動が早くなる。



「お待たせ。」



「全然待ってないよ」




と手短に挨拶を済ませると本題に入ることとなる前に料理を注文しようとなった。




「うーん、私はチーズハンバーグにする」



「チーズハンバーグ好きだよね!」



些細なことを覚えていてくれる樋口くんの優しさが心地よい。


優しくありたいと言う人と本当に優しい人は違うと私は思っている。



優しくありたいと思う人は『優しくいなきゃいけない』ってどこかで思って気がしていて!



でも本当に優しい人は『優しくありたい』とかではなく、本当に優しいのである。



『優しさ』とは時に残酷なものでもあるが、やはり優しいのは武器でもある。


優しさを持ち合わせてる人はやはり強くて他人を思いやることができるからである。



樋口くんもそうだ。

優しさと人を思いやる心を持ち合わせていていつも誰かを優先に考えている。


そんなところに惹かれたんだと思った。




チーズハンバーグを前にそんなことを思いながら


「チーズハンバーグ美味しい!」


と幸せこの上ないという顔で食べている私を樋口くんは優しく見守ってくれている。




そして、お腹も心も満たされたところで本題に入ることとなる。




「私、この数日悩みました。すごく悩みました。この先のことも考えたし、幸せってなんだろう?って思ったし。結婚ってなんだろうって思った。」



「うん。」



「でも、結婚って何かわからなかったし。考えても考えても答えは出なかった」



「うん。」




「でも考えたんだよ。考えた分、不安にもなった。この先の人生たった20歳やそこらで決めていいのか?とも思った。」



「うん。」



「でもね、考えたことに対して出てきた答えは…私が私自身を幸せにしたいってことだったんだ。誰かを幸せに出来るほど私は出来た人間じゃない。だったら自分が幸せになれる道を選んだっていいじゃないかって思ったの」



「うん。」



「だから、私は私のこれからの人生きっといろいろある。メンタルだって強い方じゃ決してないし、打ちのめされる日だってあると思う。だけど、私が私自身を幸せにしちゃいけない法律なんてどこにもない。なので、これからの人生何があるかわからないからこそ、好きな人と一緒に苦楽をともにしたいと思いました」



「うん、ありがとう」




樋口くんからは優しい笑みが溢れていた。



静かに聞いてくれた気持ちと私が正面からぶつかった気持ちを受け止めてくれた。



私たちの未来は今から始まる。


つらいこともあると思う。

泣くことだってあると思う。



嬉しいことだってたくさん、たくさんあると思う。



でも樋口くんだから乗り越えていきたいと思ったこと。



玲央くんだからずっと約束を忘れなかったこと。



ずっとこの先も変わらない想いがあるかどうかなんてわからない。



でも、いつかこの道を選んでよかったなって思える日がくるといいな!と今は思っている。




「あなたの小さい頃の夢はなんですか?」



私は小さい頃の夢が叶いました。



願うことも自由です。

誰かをそっと思うことも自由です



今日も誰かをそっと想っているひとの気持ちが少しでもいい方向に向かいますように。



私は私自身が幸せになれるようにこの道を選んでいきます。



みなさんもどうか少しでも心暖まる日が訪れますように。




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小さな頃の夢はなんですか? ささらなみ @ponponta3

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