第55話 一歩前進

 かくして、人間とレギニカ星帯侵攻軍との戦いは終結。

 フラムナトやダスポポなど、人間に協力的だったレギニカ達は、協定を結び人間の星に住むことを許された。

 伴って、彼らの母星から沢山のレギニカが移住のために訪れてくる。

 星乃が夢見た『人とレギニカとの共存』へ、人類は大きく前進したのだ。

 

 ……だがそれでも、SROFAが無くなることはなかった。


『テッカー症ワクチンを完成させた功労者である、元植物学者の樋口さんとレギニカのダスポポさんに話を伺いました……』

「お、樋口さんとダスポポさんが出てる!」


 車内のラジオから流れるニュースに、助手席の星乃が湧き立つ。

 ニュースが読み上げる通り、テッカー症のワクチンは完成した。

 樋口曰く、やはり採取したカブラギの肉片が決め手だったようである。

 もう、人類がテッカー症に恐れる必要は無くなったのだ。


「ワクチンが完成したからこそ、レギニカ達がここに住むことを許可して頂けたんですからね。本当に、めでたいことです」


 運転席で車を操縦する叶瀬が、静かに頷く。

 

「めでたいと言えば、SROFAもだよね」

「そうですね。『駆除班』は正式に『捕獲班』へ吸収合併されましたし……」


 途中まで言った言葉の先を、星乃が代わりに言い切った。

 

「私達の下には、2人の新入りが来てくれたし!」

「新入りじゃねえって!」


 星乃の台詞へ、後ろの席に座っていた千帆が抗議を入れる。

 その隣には、窮屈そうな姿勢でフラムナトが座っていた。

 そう。

 星乃が言う『2人の新入り』とは、千帆とフラムナトのことである。


「着きました」


 報告と共に、叶瀬はゆっくりと停車させた。

 顔を上げると、フロントガラスの先でレギニカが暴れている。


「凄い暴れっぷり。レギニカはお酒に弱いらしいからな~」

「酔っ払ったレギニカが喧嘩騒ぎを起こしているとは聞いていましたが、実際凄いですね……」


 星乃と叶瀬がそんな会話をしながら、車を降りた。

 レギニカだって、人間と同じ。

 良いレギニカもいれば、時には悪事を働くレギニカもいる。

 人の手に負えない後者を逮捕するのが、『SROFA』の新たな使命なのだ。


「それにしても……いいのか? レギニカが、同胞を捕まえるだなんて」

「……? 人間だって、人間を逮捕しているではありませんか」

「確かにそうだったな……悪い、忘れて」


 千帆とフラムナトも前座席の2人と共に車を降り、戦闘態勢を取る。

 全員の準備が完了したのを確認した星乃は、意気揚々と声を上げた。

 

「じゃあ……『げるろぼ』起動!」


 彼女の言葉を合図に、星乃、叶瀬、千帆の3人が戦闘機体を纏っていく。

 フラムナトもレギニカ独自の装置を使って、プレートアーマーのようなピンク色の装備を纏った。

 準備を終えた4名は、暴れるレギニカを『捕獲』するため駆け出していく。

 

 きっと訪れると信じている、希望ある未来のために。

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エイリアン・キャプチャー 染口 @chikuworld

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