魔聖最恐ペアが宇宙を駆ける!えっ?オレ?その二人のおさんどんしてますが何か?
R・S
決着と裏切り
ここは人間族と魔族が住む大陸のちょうど真ん中辺り、そこに築かれた難攻不落と呼ばれた迷宮【アガルタ】その地下百階では魔族の頂点である魔王と人類の希望である神に選ばれし聖女と人族最強の勇者パーティーとの決戦が繰り広げられていた。
炎と氷、風と雷が交差し勇者の剣が魔王を傷つけ、反撃で勇者もダメージを負うがその傷を聖女の光魔法が癒してゆく。
お互い満身創痍になりながら、それでも各々の未来をつかみ取るために全力で相手を倒す、その意思はいまだに聖女も魔王も崩れることはなかった。
「ハァッ……ハァッ……フ、フフフ…聖女エステルよ……因縁深い貴様との勝負もいよいよ余の勝利で終わるのだな!」
「フゥッ……フゥッ……何を馬鹿なことを……忌々しい魔王エインシェント…!あなたを打ち倒して平和な未来を手にするのは私達です!ハァ…ハァ…勇者ヴァイス様!私の後に続いてください!」
「ハァ……ハァ………分かった、手筈通りに魔王を頼む!」
「フハハハ!これが正真正銘最後の戦いだ!来るがよい聖女一行よ!」
「神の加護を受けた光の魔法を食らいなさい!」
聖女が光魔法を打ち出し、それに呼応して魔王も己の魔法で迎撃を試み、両者の魔法は激突し合い拮抗状態となった。
「ヴァイス様!今です!」
「ああ!手筈通りに封印魔法を使うぞ!」
「なんだと?!…!グアアアァァ!よ、余の腕が!?」
勇者が封印魔法を起動した瞬間、魔王エインシェントの指先から腕にかけてあっという間に光り輝く黄金へと変貌していく……そして、それは聖女も同じであった……
「えっ?!きゃあああああぁぁ!な、なんで私も?!しかもなぜ黄金に変化して?!」
「ふう……ようやく終わったぜ……ご苦労さんだったな聖女様よ、後はそこの魔王共々永遠に封印されてくれや」
「なぁっ?!ヴァイス様?!いったい何を言って!」
「まったく…お前さん勝ちすぎなんだよ、こっちがいい塩梅に勝って負けてしてるのを空気を読まずにてめぇはホイホイ兵士の傷を全開させて負け戦をひっくり返しやがって、おまけにさっさと俺様に抱かれてればいいものを…堅物女め、清々したぜ!」
そう言い放った勇者の顔は酷く醜い笑顔をしていた…聖女エステルはここにきて裏切られたことにようやく気付いたのだった。
「そ、それがあなたの本性ですか?!勇者とあろう者が!神に弓引く愚か者め!」
「ハハハッ!所詮平民上がりの聖女だけはある!政治や経済ってものを全くわかってないなぁ!……なあ、お前さんもそう思うだろう?」
「ヒヒヒヒヒ…確かにそうだな…そちらの聖女も我らが魔王様と似た者同士だったようだなぁ……」
そう言いながら現れたのは、ボロボロのローブを羽織り色とりどりの宝石がはめ込まれた大きな杖を持った骸骨だった。
「なっ?!貴様はエルダーリッチのアラミス?!貴様は上層で防衛線を指揮していたはず?!」
「おおっ!魔王エインシェント様、その通りでございますとも……もっともあなた様が話していたのは私の分身ですがねぇ……ヒヒヒヒヒ……」
骸骨なのでアラミスの表情はないはずであったが、エインシェントはこやつが醜悪な笑みを浮かべている様を見ることができた。
「貴様!余を裏切ったのか?!」
「ヒヒヒヒヒ……この〔密議〕のアラミス、お前さんの参謀として長年尽くしてやっていたが……わが研究の邪魔になるどころか実験体を開放せよなどど抜かしおって!200年も生きておらぬ魔力が高いだけの小娘が!……そう、魔力が高いだけあって並大抵の方法では貴様を排除することはかなわなかった……そんな時にこの勇者ヴァイス殿が接触してきてくださったのだよ!」
「こっちも甘っちょろい聖女をどうにかしないとせっかく俺の王国が他国の愚民共から物資や資金なんかを防衛のためってもらっているのがパァだからな!まっ、アラミスさんにゃあ感謝してるぜ?何しろこの迷宮地下百階に封印術をこさえるなんて俺らには無理だったからなぁ!」
「ぐ……!き、貴様らぁ……!!ぐあぁぁぁ!!」
「こ……!この不信神者共めぇ!があぁぁぁ!!」
魔王と聖女がお互いの裏切り者へ魔法を放とうとするが、時すでに遅く腕は肩まで黄金へと変貌し、下半身ももう腰まで黄金になっていた……
「ああそうだ!ご立派な聖女様は魔王をその命をもって封印したって上で戦ってる連中には伝えといてやるよ!特に聖女様の美人な副官様はベッドの中でたっぷり慰めておいてやるよ!」
「ヒヒヒヒヒ!こちらも魔王様は聖女を相手に口伝で伝えられていた闇の魔法でその身をもって封印されたと伝えておこう……そんな魔法は数百年過ごした吾輩も知らぬがなぁ!」
「おいおい!口伝なんだから知らなくて当然じゃね?」
「それもそうじゃな!ヒヒヒヒヒ!……ついでに伝えておくとお前さんらの体がすべて黄金になったら、この部屋全体が強固な結界魔法で覆われるように作っておってのぉ……ミスリルやらアダマンタイトやらをふんだんに使っておるから数千年以上はこのままじゃ!吾輩の邪魔をしたことを後悔しながら黄金像へと変貌するがいい!」
「そりゃぁいいや!じゃあな聖女様よ!一遍その体を味わいたかったが、それは副官たちに責任取ってもらうから安心しておきな!は~はははははっ!……それじゃあ、約束わかってんだろうなアラミスさんよ?」
「わかっとるわい、隷属魔法を付与した淫魔族や獣人族の若い女子をそっちに送るのと引き換えに……」
「おうよ!こっちも残ったうるせぇ貴族やら爺共をそっちに引き渡しゃいいんだろ?まかせろって……」
二人はそう話をしながら階段を上がっていくが、魔王と聖女はさらに浸食した肉体に増える激痛でそれを聞くどころではなかった……
「ぐあぁぁぁ!おのれぇ!!!何が数千年だ!この恨み絶対忘れぬぞ!貴様らの子孫末代まで根絶やしにしてくれる!!!アラミスぅぅぅぅ!……………かは…………」
「ああああああ!か、神よ!なぜ何もお答えにならないのですか!なぜですか!あああああ!こ、こんな!このような目にあっても信心が足りぬというのですかぁ!!酷過ぎます!ヴァイスのような不信心者に神罰も何もしないのにぃぃぃぃ!!お願いぃぃ!誰か助けてぇぇ!……………あ…………」
むかしむかし、わるいわるいまおうがいました。まおうはせかいをわがものにするためにんげんのくににせめてきましたが、ゆうかんなゆうしゃさまのかつやくでともにたたかったせいじょさまがそのいのちをかけてまおうをとめているすきにやっつけたのです。せいじょさまはそのたたかいでなくなってしまいましたが、そのやくめをおえたせいじょさまはぶじにかみさまのもとへたびだっていったのです。そのあと、ゆうしゃさまのおかげでにんげんのくにはへいわになったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます