撃墜そして不時着のち死の宣告

『警告 警告 エンジン出力低下30% 直ちに離脱してください』



「うるせぇ!今逃げてる真っ最中だろうがこのポンコツAI!」



 ここはアガルタ銀河セレネ・ブレス星雲のヴァル・アトラス帝国とヘリオス王朝同盟が領有域を争っている係争領域の一つ、俺の爺さんが生まれる前から戦争をしている帝国と同盟はここの他にもいくつも領有域をめぐって争っている。


 そこで艦隊の配置や補給所の位置を探る役目が必要になってくるが、何の因果か俺はその役目である深部領域探索猟兵となって帝国側の領域深くまで偵察を行うこととなった……



「その安請け合いの結果がこれかよぉ!!」



 係争領域の中でも一番偵察艦隊が来る確率が低かった場所を選んだんだが、まさか俺が偵察に赴いたその日に練習艦隊が来るなんて予想できるわけがなかった。


 こちらはスピード重視の機体だがセンサー類ばっかり載せていて武装はほぼ無し、向こうは最前線で使うようなしっかりした機体と新型の機体がごちゃまぜで編成されていた。

 どうも新型機体のテストでここに来たみたいだが、そこに運の悪い俺が来てしまったという訳だ……そりゃあ、必死になって追いかけてくるよな!



 ドォン!!!「うぉあ!!?」



 出会い頭に食らった敵弾でエンジンに被弾してしまい、何とか逃げようと近くのガス帯へ逃げ込もうとしたが、無理をさせたのかエンジンが小爆発を起こしますます出力が落ちていく……!



『警告 撃墜確率が30%を超え被拿捕率が20%を超えました これより情報保全プロトコル【コール条約】に基づき機体の保全に移ります』


「はっ?!なんだそりゃ?!……って操縦が効かない?!!」



 聞いたことない単語をAIが伝えてきたと思ったら、操縦を勝手に乗っ取りやがった!コントロールが全く聞かない!!



「どうなってる?!おい!勝手に操縦するな!」


『上位プロトコルによる指示のためその命令は拒否されました これより最も近い惑星へ着陸します 乗員は当該機体の情報保全プロトコルのための準備をしてください』


「なに?!ちょっとまて!……うわぁ!!!」



 俺は必死になっていろいろ操作をしてみたが全く受け付ける事はなく、いつの間にかあった赤黒い雲に覆われた惑星へと機体が進んでいくのを見ていることしかできなかった……



「おいおいおい!見るからにやばい星だろ!着陸とか無理だろうが!」


『データベースによれば着陸可能惑星であるため着陸シーケンスを実施します』


「おまえ!いい加減に…」  ドォォォン!!! 「うおわぁぁ!!」


『警告 エンジン出力さらに低下中 乗員は情報保全プロトコルの準備を行ってください』



 とうとうエンジンがお亡くなりになったのか、ひときわ大きな揺れと音を残して機体は目の前の惑星に着陸というより墜落していった……




『警告 エンジン出力15% 自力航行困難のため大気圏内慣性航行へ移行します』



 操縦席のすぐ外は宇宙から見ていたのと同じ赤黒い雲ばかりで、今自分が惑星のどの位置にいるのかすらわからなかった……



「くそっ!ええと、サバイバルキットとそれに自衛の武器と……」



 俺は操縦席に備え付けの品を懸命に探していて、気づいたのはもう目前のことだった…



『警告 前方障害物発生 回避不能』


「なに!?って山の頂上だと!?」



 俺に出来たのは機体が山の頂上へ当たって岩やらなんやらを弾き飛ばすのを確認することと、見つけた品々を抱え込んで操縦席の脱出装置を稼働させることだけだった。




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「痛たたた……くそっ!まったくツイてねぇ!AI!機体はどこにある!」


『警告 当該機体の残存率60% 乗員は情報保全プロトコルに従ってください』


「あれだけ派手にぶつかってまだ六割も残ってるのかよ……じゃあ情報保全プロトコルとやらをするから手順を教えてくれ。」


『手順を開示します 当該機体のAI及び収集データを消去のちエンジンをオーバーロードさせ機体の破壊を行います それが行えなければ機体中央部にある自爆シーケンスを作動させてください なお乗員が死亡ないし機体より離れ合流が困難と判断した場合AIが自爆シーケンスを起動します 乗員による手順の実行は不可能と判断 自爆シーケンスを起動します』


「はっ?おい!俺はまだ生きてるぞ!こっからだって歩いていけば…」



 ドォ………ン



 それなりに遠い所から爆発音が聞こえてきた…機体が自爆したんだろう、じゃあ残ったのはこの宇宙服についてるサポートAIだけか…



「はぁ~……ったく…で?AIさんよ、今度はお前さんを消去したらいいのかい?」


『応答 本AIは使用者の死亡後残存データを送信後自動的に消去されます』


「あっそ、そりゃお利口なこって……あーあ…飯と水があるから最低三日くらいは生きられるか?帝国にしろ同盟にしろデータ送信があったら確認しに来るだろ…救助なり捕縛なりきたら俺がデータを消去するってことでいいのか?」


『応答 使用者がその行動をする可能性はありません』


「………なんでだよ?」


『応答 本AI使用者の生存可能残り時間は約30分だからです』


「………………………………………………はっ?………………………はあっ?!お、おい!この惑星のデータを出せ!」


『応答 現惑星のデータを表示します』



 表示されたデータは、見なければよかったと思う単語や数値の羅列ばかりだった…この惑星番号はD262、惑星番号は見つかった順番と頭のアルファベットでランクが表示され居住可能かが判別できる。

 Aは何も手を加えなくても人類は生存可能、これは本当に貴重で今までで見つかっている惑星を合わせて番号が三桁いくかいかないかでほとんどが各国の首都惑星で富裕層や要人がそこを占めている

 Bは簡易な惑星改造プラネット・フォーミングを行えば済むことが可能な惑星で、このランクはかなりの数が見つかっている。もちろんある程度の金があれば済むことは可能なものからAランクの惑星に近いものまでピンキリだ。

 Cは重度の惑星改造を行ってやっと少数の人間が住めるという惑星で、こちらは発見された惑星のほとんどを占めている。もちろん出来るというだけで、実際にやるのは貴重な資源が見つかったとか重犯罪者を閉じ込めておくためだけにやるとかといった目的がなければ行わないクズ惑星ばかりだ。

 問題なのは今俺のいるD262だ…このランクDは何をどうやっても居住不可能な惑星につけられるもので、惑星全体で濃硫酸の雨が降っているとかもうすぐブラックホール化するとかというようなものばかりだ……そしてこのD262の待機成分には現代科学でもわからない謎物質が蔓延しており、装備品等がとてつもない速度で劣化していくということだそうだ、つまり長くてもあと30分ほどで宇宙服に穴が開き、もちろん酸素は存在しないため俺は見事に体の水分が蒸発してミイラと化すのだ……



「………25年の人生があと30分とか……ははっ……どうしろっていうんだよ……」 

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