おっぱいフェチの陰キャが隣のギャルに太ももフェチ開発させられてしまったら

さばりん

第一話 フェチズム開眼

 朝、HR前の教室は、どこか殺伐とした雰囲気に包まれていた。


 シャッ、シャッ、シャ、シャ、シャシャッ……。

 無言で白紙の用紙にペンを走らせるアーティスト。


 ペラッ、ペラッ、ペリッ。

 速読の世界チャンピョン並みの速さでページをめくっていく猛者。


 カッ、カッ、カッ、カッ。

 指で机をつつき、一定のリズムでビートを刻むミュージシャン。


「南無阿弥陀仏般若心境極楽浄土……」

 魔法詠唱の呪文を唱える異世界からやってきた魔法術師。


「あぁぁぁーっ!」

 ガシガシと頭を掻きながら奇声を上げ、今にも『どうしてなんだよぉー!!!』とでも叫びそうな裏切り者。


 全員変わり者のように見える光景も、ただみんな目指していることは同じ。

 そう……ここにいる皆、ただテストでいい点数を取りたいだけなのである。


 無言で白紙の用紙にペンを走らせるアーティスト=紙に何度も同じ単語を書き込み脳へインプット。


 速読の世界チャンピョン並みの速さでページをめくっていく猛者=教科書の重要な単語だけを丸暗記。


 指で机をつつき、一定のリズムでビートを刻むミュージシャン=ノートとにらめっこしながらイライラして指でカツカツ。


 魔法詠唱の呪文を唱える異世界からやってきた魔法術師=テスト範囲の仏教用語を唱えて暗記しようとしている者。


 ガシガシと頭を掻きながら奇声を上げ、今にも『どうしてなんだよぉー!!!』とでも叫びそうな裏切り者=諦めの境地に達して気勢をあげるクラスメイト。


 皆各々の方法でテストに向け最後のスパートをかけているのだ。

 西舘和哉(にじだてかずや)もまた、クラスメイト達と同様、机にかじりつき最後の追い込みをかけていた。


「墾田永年私財法……墾田永年私財法……墾田永年私財法……」

 ぶつぶつと単語を呟く魔法詠唱スタイルで、頭に無理やり記憶を詰め込んでいく。

 今日は中間テスト最終日、残りの科目は暗記科目の日本史のみ。

 和哉は二週間前からコツコツと試験に向けて勉強をしてきていた。


 ではなぜテスト直前まで根詰めているのかというと、生徒会副会長として威厳を保つため!

 ……というのは表向きの理由で、本当は友人と合計点数で勝負しているからである。


 事の発端はテスト前日に、友人が勝負を吹っ掛けてきたのがきっかけ。

 売り言葉に買い言葉で、和哉は友人二人とテストの合計点数で競い合うことになってしまったのだ。

 普段のテストの成績からすれば、和哉の勝利は同然。

 しかし、ここまでのテストで、あまり好感触の科目がなかった上に、二人から『今日のテストめっちゃ感触良かったわ』という煽りメッセージに触発されて、焦りが出始めてしまったのだ。


 最後の追い込みがあまり意味ないことは分かっているものの、勝負を挑んでしまったからには、1点でも多く点を取って、友人との合計点数バトルに勝ちたいのである。

 ただその一心で、和哉は血眼になってテスト範囲のノートを見返していく。


「えーっ⁉ それマジ⁉」


 すると、和哉が必死に最後の追い込みをかける中、隣の席から暢気な声が聞こえてくる。

 少し苛立ちを覚えてちらりと隣を見れば、そこには仲良さそうに友達と談笑する一人の女子生徒の姿があった。

 金髪に染め上げた長い髪の毛。

 制服のシャツのボタンを大胆にも第二ボタンまで開き、胸元がくっきりと見えてしまっている。

 丈の短いスカートから伸びる健康的な太ももを惜しげもなく晒しており、足を組み替えるたびに見えそうで見えない絶対領域が憎らしい。


 クラスメイトのギャル米浦亜美(よねうらあみ)は、教室のピリついた緊張感など気にもせず、余裕たっぷりと言った様子でけらけらと笑い声をあげて談笑している。


(こういう余裕かましてる奴に限って、ろくに勉強もしてないんだよな……)


 和哉はつい恨みがましい視線を亜美に向けてしまう。

 時には諦めも重要であることは重々承知している。

 けれど、こうして隣で必死こいて頑張っている人がいる中で、楽しそうに話している姿を見せつけられたら、イラっとしてしまうのも仕方がない事だろう。

 しかし、テストに対するモチベ―ジョンは人ぞれぞれ。

 亜美には亜美なりにテストへの向き合い方があるのだろう。

 和哉は気持ちをぐっとこらえて、再び視線を教科書へと戻した。


 キーンコーンカーンコーン。


「ほら、席付けー」


 HR開始のチャイムが鳴り響くと同時に、担任が教室の前の扉から教員簿を持って入室してくる。

 クラスメイト達が一斉に席へと着席していく。

 朝のHRが始まっても、和哉はテスト範囲とにらめっこをしていて、担任の話などほとんど聞いていなかった。

 手短にHRが終わり、テストまで残り5分を切る。

 和哉が必死こいてラストスパートをかけている時だった。


「今日のテストやばいわー! マジ勉強してないんですけどー!」


 そんな独り言を隣で嘆きながら、ぐっと伸びをする亜美。

 大胆に開いた胸元からちらりと黒字にピンクがあしらわれたセクシーなブラがチラ見えしている。


「ねぇねぇ、だてにしーはどんな感じ?」


 すると、亜美は血眼になって最後の追い込みをかける和哉へ呑気に尋ねてくる。

 隣の席ということもあり、陰キャの和哉によく亜美は声を掛けてくれる優しいギャルなのだ。

 ちなみに『だてにしー』というのは、和哉が亜美から呼ばれているあだ名である。

 しかし、最終テスト前直前という緊迫した時間に声を掛けられたということもあり、和哉は眉間に皺を寄せて、ギロリと鋭い視線で亜美を睨み付けてしまう。


「うわっ、そんな怖い顔しないでよーっ、ちょっと聞いてみただけじゃーん!」


 和哉の鬼の形相を目の当たりにして、驚いた様子で両手を上げる亜美。


「うるせぇ。少し黙ってろ」


 ドスの効いた声をつぶやき、和哉は視線を教科書へと戻すと、亜美はめげずにちょっかいを掛けてくる。


「そんな最後にやったって結果変わらないって!」

「分からないだろ! もしかしたら最後に覚えた単語が出るかもしれないし」

「直前に覚えた単語なんてテスト中にピョーンって飛んで行っちゃうんだから」

「まっ、亜美の場合はそうだろうね」

「あーっ⁉ アーシのこと今バカにしたっしょ!? こう見えても結構点数いいんだからね?」


 腕を組みながら、むすーっと唇を尖らせる亜美。

 手で胸が支えられたことで大きさが強調される。

 シャツの間から胸の谷間がくっきりと浮かび上がっていた。


「はいはい、そうですか」

「ひっど!? むぅー見てろ! だてにしーより絶対いい点数獲ってやんだから!」

「頑張ってね」


 亜美の胸元を軽く堪能しつつ、適当にあしらって和哉は教科書へ視線を戻した。


「はーい、教科書類を仕舞ってください。今から問題用紙を配りますよー」


 ほどなくして、テストの試験官代わりの担当教員が入って来て、勉強時間は終わりを告げる。

 和哉は教科書とノートをカバンに仕舞い込み、筆記用具だけを机の上に置いて、問題用紙が配られるのをじっと待つ。


「あれっ、おっかしいな……」


 問題用紙が配られ始めると、何やら隣の席が騒がしい。

 様子を窺えば、亜美がガサゴソとカバンの中を漁りながら探し物をしていた。

 身体を下に向けているので、大胆に開いたままのシャツの隙間から谷間がくっきりと見えてしまっている。


「……ない」


 亜美が顔を上げると顔面蒼白。

 この世の終わりみたいな表情をしていた。


「どうかしたの?」


 流石に和哉も見かねて亜美に声を掛けざる負えない。

 亜美は和哉の方を見つめると、胸の前で手を合わせて潤んだ瞳を向けてくる。


「お願い。筆記用具持ってくるの忘れちゃって、シャーペンと消しゴム貸してくれない?」

「何やってんの?」


 テストに筆記用具を忘れるとか、どんなミスだよ。

 とはいえ、ここで貸してあげないほど和哉も鬼ではない。

 仕方がないので、和哉は予備のシャープペンシルと消しゴムを筆記用具から取り出した。


「はいこれ、和哉のでよければ貸してあげるから」

「ほんとに? サンキュー! だてにしーマジ神!」


 亜美が神を見るかのような瞳で和哉を見つつ、手元からシャープペンシルと消しゴムを受け取ろうとしたところで、和哉は手を引っ込める。

 受け取ろうとした亜美の手は空を切った。

 前のめりになり、亜美の胸元がぷるんと揺れる。


「ちょ、それはひどくない⁉」

「俺から借りる代わりに、今回のテストで50点以上を取ることが約束な」

「えぇー⁉ そんな高い点数無理だよー! 赤点回避すら危ういのにぃー!」

「筆記用具を忘れた自分を悔やむんだな」

「むぅ……」


 先ほどまで自信満々に点数獲れると豪語していた威勢はどこへ行ってしまったのか。

 不満げに口を膨らませる亜美。


「冗談だよ。まっ、50点取れるように念を送ってあげるから頑張って」


 そう言って、和哉は亜美へ再びペンと消しゴムを差し出してあげる。


「絶対取るし……」


 すると、亜美な顔を上げると、闘志に満ち溢れた表情を浮かべている。

 目はメラメラと燃え上がっていて、完全にやる気スイッチが入っていた。


「こうなったら、もし50点以上取ったら、アーシのお願いだてにしーに聞いてもらうから!」

「はっ? なんで俺が貸してあげる立場なのにお願いをきかなきゃいけないんだよ⁉」

「うっさい! だてにしーがバカにするのがいけないんだからね! それともアーシが50点以上取れるから怖気づいてるんでしょ?」

「なっ、ちげぇし!」

「じゃあ、もし私が50点取れなかったら、あんたのいう事なんでも聞いてあげるっつーの!」

「えっ……今何でもって言った?」

「そうだけど?」


 腕を組みながら好戦的な目を向けてくる亜美。

 和哉の中にあらぬ妄想が膨らんでしまう。

 豊満なその果実のようなおっぱいに触れると、艶やかな声を上げる亜美。


「いいぜ、その勝負乗ってやるよ」


 和哉は欲に忠実で単純な男だ。

 売り言葉に買い言葉。

 和哉は亜美の挑発にまんまと乗っかってしまう。


「ふっ、見てなさい! 絶対50点以上取ってやるんだから」

「頑張れー」

「むぅ……絶対その口をへし折ってやる……だてにしーが私に日本史の点数負けてたら、逆に何でも言うこと聞いてもらうから」

「望むところだ。俺はこう見えてちゃんとテストに向けて勉強してきたんだ。一夜漬けの米浦さんには負けないね」

「言ってくれるわね……! 勝負してやろうじゃん!」


 こうして、和哉はまた余計な勝負を引き受けてしまった。

 和哉が再び筆記用具を差し出すと、亜美は掌からパシンっと勢いよくシャーペンと消しゴムを奪い取る。


 とそこで、事件は起こった。


 ポロッ。


 和哉の手から消しゴムを受け取ろうとした矢先、亜美の指先からポロリと消しゴムが滑り落ちてしまったのだ。

 宙を舞った消しゴムは、そのまま重力に従って落下していき――


 ポフンッ。


 見事、亜美の太ももと太ももの間へと着地する。

 消しゴムが間に挟まった瞬間、亜美の太ももがむにゅりと動いた。

 その一瞬で、亜美の健康的な太もものムチムチ具合が分かってしまう。

 亜美の日焼けした太ももに挟みこまれる消しゴム。

 とんでもない光景を目の当たりにして、和哉は亜美の太ももから目が離せなくなってしまう。


「あらら、よっと」


 何事もなかったかのように亜美は消しゴムを指で拾い上げると、和哉の方を向いて軽くインクをしてきた。


「それじゃ、悪いけどテスト終わるまで借りるねー! 絶対負けないから」

「あっ、う、うん。どうぞ」


 太ももに意識を持っていかれていたため、和哉は素っ気ない返事になってしまう。


「どした? なんか呆けたような顔してるけど」

「いや、何でもない。お互いテスト頑張ろう!」

「うん!」


 にこっと笑みを浮かべて、亜美は視線を前へと向けてしまう。

 和哉も倣うようにして視線を前に戻す。

 すると、丁度問題用紙と回答用紙が手元に配られた。

 残りの冊子を後ろの人に手渡してから、和哉は手を膝に置いて試験が始まるのをじっと待つ。

 全員の所へと行き渡ると、試験官の先生が時計を眺めて始まりの合図を待っていた。

 緊張感漂う無言の時間。

 しかし、和哉はといえば、落ち着きがなく身じろぎをしていた。

 そしてちらりと気づかれぬよう、隣に座る亜美の太ももをチラ見。

 亜美の健康的な太ももは相変わらず眩しくて、和哉の思考を奪い取るには十分な破壊力を宿していた。


「それでは、試験を始めてください」


 試験官の声で一斉に問題用紙と開き、回答用紙を表に向けて、名前を書き始めるクラスメイト達。

 和哉も出席番号と名前を書き終えて、問題へと取り組もうとするものの、先ほど起こった『消しゴム、亜美の太ももムチムチ事件』が何度も頭の中でフラッシュバックしてしまい、全く目の前の試験問題に集中出来ない。


(ダメだ、ダメだ! このテストは勝負が掛かってるんだぞ!)


 和哉は首を振って無理やり煩悩を振り払おうとする。

 しかし、こびりついた記憶はすぐさま呼び起こされてしまい、問題を解いている間にも、亜美のムチっとした太ももが頭の中に容易に浮かびあがってきてしまう。


「~~~~~~!」


 結局、和哉は頭を抱えることしか出来ず、直前で無理やりねじ込んだ記憶は泡と化し、試験に全く集中出来ぬまま、日本史のテストを終えることになってしまうのである。

 しかしこの時、和哉は気が付いていなかった。

 自身がとんでもないフェチズムを開眼してしまっていることに……。



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 初めましての方は初めまして。

 お久しぶりの方はお久しぶりです。


 新作はいかがだったでしょうか?

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