第164話 無



ここには何も無いの、とあなたは言った

キラキラ輝くネオンとか

若い子たちのはしゃぐ声

そんなものは何も無いの 

何も無い静かな世界

あるものといえば静寂と

目を閉じたほうが明るい闇

自分の爪先すら見ることもできず

存在すら感じられない

ほら、こんな世界どうしようもないでしょ

そういうあなたの寂しそうな顔

ここには何も無いの、とあなたは言った

それでもあなたが、あなただけはここにいるのなら

それだけでもう充分なんだ




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