第115話 カーテン
もうどれくらいになるだろう
まだまだ幼かった私は
風の入る窓の側で
揺れるカーテンを見ていた
カーテンが動くたび
光も影も揺れる
いろいろな形に変わる光を
掴みたくて手を伸ばして
掴めなかった手に影が差し
また私は光を求めた
なぜこんななんてことない光景を
いまだに思い出すのだろう
特に思い入れがあるわけでも
強烈なオチがつくわけでもない
ただの日常の風景
それなのにどうしてか
この場面は私の頭から離れない
これからもきっと思い出す
なんだか頼りなかった窓枠とか
揺らめいていたレース模様とか
なんてことない景色
よくあるようで唯一無二の
そんな思い出で
今の私は作られているから
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