第25話 覚えている


覚えてる覚えてる

軽く整備された石畳の道とか

音もなく流れる水路とか

その横にひっそり立つ茶色の柵とか

何度も取り出しては見返す

そんなくっきりした記憶じゃなくて

不意に脳に過ぎる画像程度の

曖昧で薄れかけた思い出

でもちゃんと知っている

すれ違う人なんて誰もいなくて

どこに繋がるのかも分からなくて

なのにひどく穏やかだったあの道を

あの一生懸命でどこかちぐはぐだった

そんな毎日の中の1ページを


覚えている



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