一部

死にたいと思った

戻りたくないと思った。故に死にたいと思った

めんどくさいことばかりだ、故に死にたいと思った

一体俺の事をどう思っているんだろう、それを考えると死にたいと思った

遅い昼食を終え、服を着替え、外に出る。

道を歩く、目的地は無い。

言うなれば死ぬ為に外に出た

いつもの街並みだ。何も変わらない。想像した通りの光景だ

簡単に死ぬなと言う、でも死ぬ方が楽と思える程煩わしいのだ

一体どうやって死のうか、そう考える

ロープ、練炭、ガムテープ・・・

そう思いつくが近くに店は無い、住宅ばかりだ

不思議と道には人は居なかった。

それが当たり前であり、そして煩わしい物事を考えなくて済んだ

ガキどものその場一時の感情の奇声、

散歩する犬のロープや、平然に二列で歩くアベック、

そんなものに苛まれる事が無く誰も居ない道を歩く

少しばかり、心が楽になった。

誰も居ない道を歩く

突然、それは襲って来た

隙を見せるとこの前頭葉って奴は要らないものを差し込んでくる

それは多分、人として正しい事なのだろう

でも今は何も考えたくない、虚無に行きたいのだ

寝れない夜、何度もこいつを取り除いたいと願ったものだ。

しかし脳だ、欠けたらまずい、と思いだんまりを決め込む。

そう考えた時点であいつの洛中なのだ

考えを放棄する為に考える、永遠のループの先、

見るのは、さも当然のように登ってくる朝日だ

何も考えないで辺りを照らす光景を睨む

・・・お前は楽でいいよな、何も考えず、登って来やがって

そんな悪態をついても時間は進む。

時計を見ても、それは平然に針を進める

この世界は実に規則正しい

おかしいのは自身なんだと再確認する。

そして何故と思いつつ脳の奥、海場に意識を集中する、

僅かでもいい、楽にさせてくれ

そう願うがその時点で堂々巡りだ。

最期には負け、無理を承知で外に出る

今日一日だけの辛抱だという。体に念じをかけ

そんな念じにも如何せず、この身体は平然と動く、その時はこの身体を愛おしく思った。

そして、歩く

この身体、多分無理をしているんだろう

そう思うと死にたいと思った

楽にさせてやりたいと思った

こいつだけは良い奴だ、だが、この頭の中に在る奴は・・・

違うものだと思った。

そんな時は何度もあったが、やはり違うものなのだと思った

故に両方とも楽にさせたいと思った。

あべこべの身体と脳、それをどうすればいいのか考える、

そんな俺を想像すると、死にたくなった

出来るだけ、苦しまない方法がいい、

そう思い、俺は道を右に曲がる

その先には、遠いが全てが揃うだろう、大きな店がある

乖離しているのが分かる

脚は地面をあるけど、視界は空を見ている

片方は大地を踏みしめ、片方はあっけらかんとしている

二つが見せる光景は歪んで、ぼやんでいた

二重の世界、霞む視界の先、店の中に居た

「・・・レジ袋はいりますか」

「はい、お願いします」

形式的に言っていた。背中を見るがリュックはない、背負って来た記憶もない

店員は突然。振り返った相手に対して瞬動揺したのが分かった

「・・・いえ、何とも無いです、いくらですか」

「1129円です」

「では」

そういって、会計を済ませた

袋の中を再び見る。何を買ったのか確認する為に

「・・・ロープや、ガムテープなんて無い。それに練炭も・・・」

袋の中あったのは、乱雑に転がった。酒だった

その袋から転がった一瓶を手に取る

「・・・これでいいんだ、全て忘れようか」

そして,俺はベンチに座り、酒を煽った。

「今だけは、全てを忘れられる」

そう、呟く

いつの間にか、夕方は去り、暗闇の電燈の元で、酒を煽った

これはいつか忘れるのだろう

何かしたとしても、忘れるだろう

でも、この時だけは

この時だけ

街灯に瓶を傾ける

「乾杯しよう」

無機質に照らす街灯に乾杯する。

異常者だ、それは分かっている

でも、乾杯せずにはいられなかった

誰も本当の意味を知らない乾杯

誰も知らない。故、掲げる杯

そして、考えた光景故、見知った奴がいる

「要らないな・・・」

齟齬はある、

「同じ酒でも違う味があると思った

そして、その時気づいた・・

「・・・でも今は死にたくはないな」

千鳥あしだ、分かっている。

そして分かっている故に、潜り込み。暖かを感じつつ眠る

これはどうでも無い事、運命女神さえ分からない事

「だったら、考えすら忘れてしまおう」

そうすれば、いい目覚めが出来るのだろう8

「無垢、そして、新しいで買いを、

考えも程も無に帰す。何も無い次へ・・・」

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