第111話 虚飾は救出劇の始まり




「──む?」




 薄暗闇に怪訝な声が響いた。

 しかし、それに応えられる者は居ない。なぜなら、唯一反応できるであろう者達はすでに殺された後だったからだ。

 その証拠に死体は足元に転がっている。

 無造作。遺体に対して一切の敬意や配慮の窺えない、まるでゴミでも転がすかのような扱いであった。


「……サタナキアめ」


 扉の前に立つ人影は、苛立ちを隠さぬ声音を発する。

 魔力知覚に長けた者ならば、サタナキアほど強大な魔力の動きを見逃すことはない。ただし、人影はそれをサタナキア自身の意思に則る移動でないと見破った。


 事実、この時サタナキアはアスに〈跛魔の月剣〉を浴びせられ、通路へ蹴り飛ばされていた。

 だが、それをこの地下深くより感知するには、余程魔力知覚に長けた者でなければ不可能である。


「屑め。遊び過ぎだ」


 罵詈雑言を漏らす人影が立つは大聖堂の地下深く。

 ともすれば、地下水路より深部に位置する、教団内でもごく一部の人間にしか知らされていない秘密の領域にあった。


 そこで人影は扉の前で延々と手を動かしていた。

 硬い扉にはうっすらと紋様が浮かび上がっているが、人影の挙動に合わせて明滅を繰り返す。


 しばらくして明滅が激しくなったかと思えば、途端に紋様を描く光が、割れたガラスのように砕け散る。


 すると、扉は重厚な音を奏でながら開かれた。


「……チッ」


 意気揚々と歩を進める人影。

 だが、眼前には再び扉が立ちはだかる。先程とはまた違う紋様が刻まれた扉だ。


「やはりサルガタナスを……いや、迎撃術式が発動するだけか」


 ぶつくさと独り言つ人影。

 再度、扉に向かって手を滑らせては紋様──〈聖域〉の魔法陣に干渉を始めた。扉に刻まれた魔法陣は複雑かつ精密。外部の侵入者に容易に解除されぬよう気を配りつつ、実用性も突き詰めた魔法陣の構成は、芸術と呼んで過言ではない代物であった。


 それを人影は時間を掛けて解除する。

 太古より受け継がれし叡智が、また一つ突破された瞬間だった。


「……」


 黙々と、人影は手を動かす。

 闇の中、その姿の輪郭は浮かび上がらない。闇に溶け込まんばかりの漆黒は、ただひたすらに人類の叡智と孤独な戦いを繰り広げているのだった。




 ***




 無事、〈転移魔法ミグラーテ〉は成功した。




 その証拠に俺は見事サルガタナスの〈聖域〉に侵入!

 ──したところで、今まさにお婆たまアグネスがトドメ刺されようとしてたので、大慌てで救出した。

 気分は卒論締め切り五分前にパソコンがフリーズした時並み。内心心臓バックバクよ。今にも爆発しそうだわ。


「ったく、お年寄りは労わってあげなさいって教わらなかったか?」


 致命傷と思しき腹部の傷を幻影で応急手当。

 『勇者と言えば回復魔法も』ってことで、〈回復魔法ティオ〉系の適性がないなりに回復手段を手に入れようとあれこれ努力した甲斐があったぜ。


「てめェ、どうやって……!?」


 一方、サルガタナスは唐突に現れた俺に愕然としていた。


 ……なんだオイ。右手に物騒なモン持ってんじゃねえの。絶対あれロクでもない罪器だろ。俺は分かっちゃうんだからね。


「どうやってぇ? おいおい、主語ははっきりしたまえよチミィ。主語なし人間は他人に嫌われちゃうぞぉ~?」

「っ……どうやって俺様の〈世界ウェニ・ウィディ・ウィーキ〉に入りやがった?」

「たくさんのご愛顧を賜り──ってとこだな」


 ビキッ、と。

 あからさまにサルガタナスの血管が浮かび上がる音が聞こえた。ビックリした。本当に血管が浮かび上がる音って聞こえるもんなんだな。


「ハハッ、そうカッカすんなよ」

「チッ!! ……まァいい。どうせてめェは殺すつもりだった。ここで殺そうが外で殺そうが結果に変わりはねェ」

「いやいや、変わるだろ」

「あァ?」


 自分の罪魔法で生み出した〈聖域〉なんてホームグラウンドも同然。

 当然、術者に有利な効果が働いているはずだ。


 ま、それはそれとして……と。


「良かったな。こん中なら自分の負ける姿を誰にも晒さずに済みそうだぜ?」

「──」


 鉄仮面の僅かな隙間から流れ込んでくる空気が、二、三度ほど上昇したように感じられる。

 これは熱気ではない、殺気だ。

 肌を突き刺す痛いほどの殺気が、気温が上昇したと錯覚させたのである。そして、それはつまり奴が煮え滾るほどの怒りに駆られている証拠。


「──てめェはあの時から気に入らなかった」

「どの時だよ」

「忘れたとは言わせねェぞ」


 サルガタナスは立てた親指、その爪先を己が頬に突きつける。

 そこにはうっすらと傷痕が残っていた。初めて奴と対峙した際、俺が虚を衝いて刻んでやった剣の傷だ。


「良い趣味のタトゥーしてんな?」

「ああ、そうだ。俺様に傷を付けた奴ァそう多くはいねェ」


 己が力への自負か。

 堂々と胸を張って口を開く姿は、敵ながら見惚れてしまいそうになるくらいの覇気と威厳に満ちていた。


 同時に感じる明確な怒り。


 こいつはアグネス殺害の邪魔をしたというより……。


「俺様は忘れてねェ。あの時、てめェが浮かべてた目を」

「……ヤダ。俺そんなにお前のことエロい目で見てた?」

「違ェ」


 さらりと受け流された。

 やめろよ……小ボケでもノータッチは心に来るぞ。でも、これって俺から仕掛けたから自傷行為になるか。反省しよう、やめないけど。


「で、俺がどんな目を浮かべてたって?」

「──俺様に勝つつもりでいやがった」

「あん?」

「てめェはあの時!! そう目で訴えていやがった!!」


 吼えるサルガタナスを前に、俺は耳を塞ぐ──つもりだったんだけれど、鉄仮面被ってるんだったわ。押さえられないから鉄仮面の中に、あいつの声がガンガン響き渡る。


「……だったらなんだよ、もぉ~」

「気に入らねェ!! 怯えるでも臆するでもねェ!! ただ一人、てめェだけは俺に勝てるつもりでいやがった!!」


 沸き上がる怒りに駆られたまま、サルガタナスは三日月刀を振るう。

 直後、〈聖域〉内に暴風が吹き荒れる。あれも奴の〈罪〉──もとい、その罪魔法が刻まれた罪器の権能を揮ったが故だろう。


 しかし、それでサルガタナスの怒りが収まるはずもない。

 奴の怒りは、この荒れ狂う暴風よりも荒々しい。まるで災害、いや、天災だ。


「要はなんだ? 『ナメられたから許せません』ってか? どこのヤンキーだよ」

「悪魔の世界は力こそ──“暴力”こそ絶対だ!! 勝てると思い込まれた時点で、そいつは俺様を侮辱してるんだよッ!!」


 悪魔の価値観をサルガタナスは捲し立てるように語る。

 その間俺は応急手当も済み、休息の眠りについたアグネスをそっと遠くの方へと運んでいく。十分な距離を取った後、俺は彼女を優しく地面に寝かせた。


 か細い寝息だ。それこそ、今にも聞こえなくなりそうなほど。

 傷ついた聖女を十分な寝具にも寝かせることのできない中、俺はゆっくりと振り返る。視線の先には、彼女を傷つけた下手人が見えた。




「──で?」




「許さねェ!!」




 サルガタナスは魔力を解き放つ。

 やはり、六魔柱の名は伊達ではない。暴力的なまでの魔力の奔流が、距離の放れた俺にこれでもかとビシビシ押し寄せてくる。




 ……けどな、




「許さねえはこっちの台詞だ、サルガタナス」

「あァ!?」


 押し寄せる魔力。

 物理的な圧力を孕んだ波濤を前に、俺は構わず歩を進める。


 向かう先は当然前。

 憎き仇敵の存在する方角だ。


「お前はアグネスを傷つけた」


 彼女は控えめにいって素晴らしい聖女だ。

 慈悲深く、感謝を忘れない。

 豪快で親しみやすくもある。

 だが、何より他人を救おうとする剛毅な精神性が、清廉潔白な聖女像を見事に体現していた──そんな尊敬すべき人間であった。


 多くの人間から感謝され、愛されて然るべき彼女を……サルガタナスは手に掛けようとした。


「今度は逃がさねえぞ」

「逃がさねえだァ?」


 怪訝な声音を漏らすサルガタナス。

 でも、だってそうだろ?


「デケェのは口と態度だけみたいだしな、三下。他人にケツ叩かれたら仕事を優先しなきゃならねえのは下っ端の辛いところだな」


 感じる。

 この上なく怒りのボルテージが上がっていく感覚を。


「……三下はてめェもだろうが」

「アッハッハ! おいおい、俺のどこが三下だってぇ~? 頭の天辺から足の爪先までよ~くご覧なさいよ。どっからどう見ても勇者様以外の何者でもないだろ~~~!?」

「てめェが勇者だァ?」


 不意に顔を伏せるサルガタナス。その肩はプルプルと震えていた。

 直後、サルガタナスは顔を上げる。


 意外ににもそこには怒りの色はない。

 むしろ彼は──破顔していた。


「ク──ハハハハハァ! 笑わせんな! てめェ如きが勇者名乗れんなら俺様は大魔王だ!」

「おっと、こいつは一本取られたな。でも、実際その方がいいかぁ……」

「……あァ?」


 訝しむサルガタナスに、俺は突き付ける。


「お前如きが大魔王なら世の中安泰だろうしな」


 抜き放った剣の切っ先。

 実剣と舌剣。突きつけたのは両方だ。


 当のサルガタナスは言葉を失い、じっとこちらを見据えている。

 浮かぶ眼光は、最初の円から次第に細くなっていく。研ぎ澄まされた眼光はさながら刃のようだ。見ているだけで斬られたと錯覚してしまいそうな殺気に彩られていた。


「……」

「……」


 しばし、沈黙が場を支配する。

 だが、それも長くは続かない。


「……ヘヘッ」

「……ククッ」

「ヘヘ、ヘヘヘヘッ」

「クク、ククククッ」

「ハハ、アーッハッハッハ!」

「クハ、ハーッハハハハハ!」




「「──告解するッ!!」」




 同時。

 決意と覚悟を固めた両雄は、互いの敵を見据えたまま全力を解放せんと動きだした。


「我が罪は〈虚飾きょしょく〉!!」

「我が罪は〈愚癡ぐち〉!!」

「俺は──」

「俺様は──」

「──〈虚飾きょしょくのライアー〉!!」

「──〈愚癡ぐちのサルガタナス〉!!」


 紫紺と白銀の炎が舞い上がる。

 それは紛れもなく俺達より噴き上がる魔力だ。義憤と憤怒の顕れであった。


「サルガタナぁーーースッ!!」

「ライアァーーーッ!!」


 互いに火焔を巻き上げながら肉迫。

 そして、衝突寸前に消失した。これも今日で何度目かになるか分からないお決まりのパターンだ。


 俺の力は幻影。

 奴の力は転移。


 文字通り、能力としては全く違う別系統。

 一見競合するはずのない能力に見えるが──それは大きな間違いだ。


「──〈ラテルクルス〉ッ!!」


 不意に空中に現れるサルガタナス。

 幻影で姿を隠しているだけの俺からは、奴の姿は一方的に確認することができる。それ自体は会談の間での激突で相手も十分理解しているだろう。


 だからこそ


「ぐっ!!?」


 〈匣〉──空間を掴み、強引に自分の方へと歪める技。

 すると肉体は重力ではなく、奴が生み出した引力に従属を強いられる。すなわち頭上だ。

 地上と違い、空中では翼で飛ぶか飛天でなければ、あの引力からは逃げられない。


 俺は咄嗟に飛天で引力から離れようとする。

 が、そこへ。


「おォらッ!!」


 罪器の一閃。

 空間を破断する暴力は、一点に引き寄せた空間目掛けて振り下ろされた。喰らえば当然即死だ。避ける以外に術はない。


「フッ!!」


 それを咄嗟に〈もう一人の自分〉を生み出し、本体おれの足裏と合わせるよう互いに蹴り飛ばさせる。

 そうやって空間を断つ斬撃を寸前で、そして目の前で回避。同時にサルガタナスの懐に潜り込む。


 今度はこっちの番だ。


「──〈二枚舌デュエット〉」


 罪魔法で第二の口を生み出す。

 一方、俺と同じく攻撃を回避した分身も、一回分ある〈もう一人の自分〉生成の使用権を行使。


 ここに居る俺は、分身と合わせて総勢三人。

 全員が全員〈二枚舌〉による高速詠唱を行い、左手に生み出した極大の魔砲弾をサルガタナス目掛けて解き放った。




「「「──〈魔神の弾丸デウス・エクス・マギア〉!!」」」




 三方向から同時の〈魔神の弾丸〉。

 分身が繰り出す一発でも小さな家なら吹き飛び、クレーターが生まれるほどの威力がある。それが本体おれと合わせて三発。サルガタナスを中心に花開く爆炎は、分身をも巻き込む大爆発であった。


「ヘヘッ、これなら流石に……」

「──殺せると思ったかァ?」

「ウニャ~ン……」


 刹那、渦巻く爆炎が幾条かの流れに沿って四方に引き剥がされる。

 サルガタナスは健在だった。多少爆発によって衣服が煤けている部分が確認できるが、それでも最上級魔法を三発同時ブッパしたにしては少なすぎるダメージである。


 俺も思わずネコちゃんになっちゃったぜ。


「もうちょい喰らっとけよぉ~……」

「てめェのやり口は大体理解してるぜ」


 最後にサルガタナスは掌を閉じる。

 すると、引き剥がされた爆炎は見えない手に握り潰されたかの如く、一点に収束して消失した。


「正面から俺とやり合っても勝てねェ。だから、こそこそ幻影で化かして背後から刺そうとする」

「こんだけやりゃあ馬鹿でも理解できるか」

「……だが、そいつァ真正面からヤリ合っても勝てねェと証明してるも同然だ」


 ニィ、とサルガタナスは口角を吊り上げる。

 裂けた唇の間に浮かぶ白銀の三日月。今まで啜ってきた数多の血を幻視させる鋭利な輝きは、さながら凶星のようだった。見ているだけで身震いしてくる。


「引けた腰で振るう剣で俺様を殺せると思うな」

「……」

「俺様を殺したきゃ、刺し違えるつもりでかかってきやがれ……!!」


 たしかに。

 サルガタナスの言う通りだ。会談の間でも〈聖域ここ〉でも、俺は徹頭徹尾距離を置いた戦い方を選んでいた。それは結局奴の罪魔法を警戒していたからこそ。


 当たれば即死。掠っても重傷。

 前衛職は言わずもがな、後衛職とて転移で距離を詰められる。


 ……聞けば聞くほど、ゲームならクソ敵認定もやむを得ない相手だな。俺がプレイヤーだったらコントローラーぶん投げてるぞ。

 何はともあれ、サルガタナス相手に最小限の犠牲で勝つには、幻影を囮に使える俺こそが最適だった。俺自身、幻影を最大限生かすには一人の方が都合もいい。


「……だったらお望み通りにしてやるよ」

「あァ?」


 サルガタナスは眉根を寄せる。

 懐疑が顔に現れている。それもそのはず、俺の言葉をそっくりそのまま信用するのであれば奴はこう捉えるはずだ。


「ハッ……笑わせんなっ!! 今更正面からヤリ合おうってのかァ!?」


 嘲りを隠さないサルガタナスの哄笑が響き渡る。

 勝算がないから背後に回っていた。そんな奴が急に正面から戦うと宣えば、大概の相手は『勝ちの目を捨てた』と認識するだろう。


 俺だってそう思う。

 もし友達と対戦ゲームをしていて、負けそうになった瞬間、ヤケクソでトンチキムーブな神風特攻をしたことなんざいくらでもある。


 けど、忘れてはならない。


 これは真剣勝負。

 死ねば自分が──そして、仲間たちの命も掛かっている戦いだ。


「一つ言い忘れてた」

「あァ?」

「俺、結構よく負けてる」

「……はァ?」


 突拍子のない告白に、サルガタナスも唖然としている。


「新人の頃はしょっちゅう魔物に殺されそうになったり、酒場で荒くれに殴り負けたりもした。挙句の果てにゃ、この前レッサーパンダに脛を蹴られて負けたばかりだぜ」

「パンダは強ェだろ」

「え?? 皆そういう認識なの??」


 ヤベェ。

 ここに来て思わぬ心理的カウンター喰らっちまった。


 あのパンチやキックしてくるパンダ共は、この世界でも強者の部類らしい。

 でもそうだよね。ワンパンで天地を裂くパンダが居るんだもんね。


 いや、俺が言いたいことはそういうことじゃない。


「負けなしって素晴らしいよなぁ~。俺も言ってみたいぜ、『常勝無敗』!」

「……何が言いてェ?」

「──

「っ!!」


 消失。

 サルガタナスの姿がパッと消えるが、すぐさま奴の気配は現れる。


 真後ろだ。

 俺──の分身の。


 横薙ぎに振るわれた三日月刀。しかし、吹き荒れる暴風を浴びるサルガタナスは、手応えのなさからそれが俺の幻影だと理解したのだろう。


「どこだ、〈虚飾〉ゥ!!」

「──自慢じゃあねえが、俺は……」

「!!」


 ここで負ければアグネスが。

 外で戦っている仲間達が。

 リオを救おうとするハハイヤが。

 それ以外にも罪のない大勢の人間が。


 俺一人の敗北で彼ら全員が死ぬかもしれないのだ。


 なら……負けられるはずもない。


 虚空を、まるで暖簾でも捲るかのように気軽に姿を晒す。

 先よりも数段警戒心を高めたサルガタナスの視線が突き刺さるが、覚悟を決めた今、その程度の殺気なんて屁でもない。


「そいつが俺様に勝てる理由ってか? ハッ……何かと思やァ、ただの希望論じゃあねェか!!」

「本当にそれだけだと思うか?」

「あァ?」






「──〈降臨ペンテコステ〉」






「ッ!!?」


 瞬間、爆発。

 全身に魔力を鎧う炎が、大きな人型を象る。紫紺の炎をメラメラと身に纏う姿は、いわば炎の巨人。


「馬鹿な……どうしててめェがそれを」


 驚愕に瞠目するサルガタナスも束の間、炎の巨人が一刀を振り下ろす。

 寸前で我に返り、転移で回避するサルガタナス。未だ信じられないものを見るような瞳を湛える奴であるが、


「ッ……!!?」


 ギロリと。

 そんな効果音が似合いそうな眼光を、サルガタナスへと差し向ける。


 周囲には暴風が吹き荒れていた。

 しかし、それは悪魔が空間を切り裂いたからではない。現実を理解したサルガタナスは、とある事実を認めざるを得なかっただろう。


「聖霊……!!」


 レイエルやベルゴ、そしてアグネスが振るいし力。

 選ばれし資格を持つ者にのみ扱えぬ、魂を己が剣と鎧とする技術。


「てめェは一体……!?」

「──聖女を救いに来た勇者様だ」


 戦慄する悪魔に、俺は平然と嘯いた。




 さて──どこまで〈虚飾おれ〉を見破れるかな?




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