第3話 挑戦
(少なくとも週に一回は来ているけど、やっぱり大きい家だなぁ)
庭がきれいに整えられた広い敷地の中に、二軒の家があるのだ。
北側の奥にある日本家屋風の建物が、彼の祖父母が住んでいる家。
一方の西側を玄関にしている
話を聞くに、どうやら彼の祖父が画家であるという。
そのため日本家屋側にはアトリエになっている離れがあるのだが、油絵の具のにおいが普段からするらしい。慣れれば気にしなくなるようだが、
ここまで大きな家を建てられるということは、資産のある家なのだろう。
だが、普段の
晶も、きっかけがなければ
晶はいつもと変わらず日本家屋の家をちらりと見たあとに、
「ただいまー」
「お邪魔します」
家に入るなり、
「一応、食べ物を触るから洗っとかないとね。晶も手を洗うときはここを使っていいからな」
「ありがとう」
晶が大きな流し台で手を洗っている間に、
そして準備が整うと、
「よし、やるぞ」
「うん」
テーブルと卵の接地面を見るため、
一瞬にして緊張感が
(本当に立つのかな……)
「……立った」
「……うん、立ったね」
晶もその卵を見つめたあと、
「こんなにあっさり立つもの?」
晶の質問に
「晶も立たせてみてくれ」
「分かった」
一番難しいのは、重心をとることだった。指先に神経を集中させ、揺れ動く卵の中身を感じながら落ち着く場所を探る。
だが、中々立たない。
(こんなの本当に立つのか?)
晶の手の中にある卵は、手を離してしまうとどうしても右側に倒れようとするのだ。重心を微妙に左寄りにしようとするが、その加減が難しい。
(
向かい側で二個目の卵に挑戦をしている
(頑張ろう……!)
途中、冷蔵庫から出し時間のたった卵は
それをもう一度テーブルに置き、再び立つ場所を探る。
水滴を拭いてから数分は経ったであろうと思ったとき、ようやく落ち着くところを見つけた卵が、支えの手を離すと見事に一人で立ち上がったのである。
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