第1話 新村駿一君(32歳、引きこもり歴11ヶ月)(筆者)
『あー? 今月のノルマが達成出来ていねーだと?』
『申し訳ございません』
『言葉なんていらねーんだよ。どーすんだよ? あ?』
『えっと……』
『じゃあお前ここから飛び降りろ』
『ええっ』
『お前なんかいらないんだよ!! おい、お前ら手伝え!!』
『やっ、やめてくださぁい』
「うわっ」
飛び起きる私。
周りを見渡したら実家の自室。
(また夢か)
ホッとして布団から起き上がった。
壮絶なブラック企業を退職した私は実家に帰っていた。
そして当時職場でやられた事の悪夢と戦いながら日々を過ごしていた。
なんて書くとあたかも辛い日々で何か病院でリハビリでも通っているように聞こえるかもしれないが、要するに実家でゴロゴロしているだけだった。
「駿一、あんたいつまで家にいるのよ」
そして今日も昼過ぎに起きてきて居間でゴロゴロしている私に母が呆れた様な声で言う。
うーん、と生返事をしていると、
「せめてバイトでもしなさい」
1枚の紙を差し出してきた。
「自立支援施設?」
そこにはそう書いてあった。
「そうよ。そこでガタイの良い男性が足りていないからお父さんマークII(母の再婚相手)が駿一君にどうかなぁ、って」
母親もお父さんマークIIもまだ若いし俺みたいな無職が1年近くも同居しているのに何も文句を言わす接してくれているが、やはり色々心配はしてくれているのと同時に邪魔でもあるのだろう。
だが正直ブラック企業の幹部で激務だった頃の疲れと心の傷が癒えていない様な気がしていた。
「じゃあ疲れが癒えたらそれやるよ」
生返事をしたと思う。
「あなたねぇ、いつまでバイトもしないで家でゴロゴロしているのよ! 部屋も散らかし放題で!」
母が怒り出した。
「何だよ、家賃なら毎月払っているだろ。部屋も片付けるし、家にいるのが邪魔だったらバイトにも行くよ。だから起業の準備が出来るまでもうちょっとまってねー」
寝転がりながら言う私。
そんなふざけた態度の私に向かって、
「いい加減にしなさい!! いい若い者が1日中ゴロゴロゴロゴロ。たまに出かけたと思えば朝までお友達とお酒呑んでくるかパチンコ。起業の準備だって半年以上前から言っているのに何もしていないじゃない!! 1年近く我慢してきたけどお母さんもう限界!!」
久々に怒った母はやっぱり怖く、私はいつの間にか起きて正座して縮こまって聞いていた。
そして、
「お父さんマークIIが紹介してくれた施設で働くか、お母さんと一緒に◯ぬか選びなさい!!」
母が究極の2択を私に突きつけてきた。
「わっ、わかったよぉ。働く、そこで働くよぉ」
こうして私の実家に戻っての引きこもり生活は幕を閉じたのでした。
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