第四十五章 戦いがいがある!!
「いや・・・・・・ っていうかなんで私?」
「おや? さっき説明したじゃありませんか?」
「あ、いやそうじゃなくて・・・・・・ ほかに強い女性なんているんじゃ・・・」
「何を言っているんですか?」
加櫻が立ち上がり、私の手を取る。
「あなたほどの女性なんてそうそういませんよ。お気づきかはわかりませんがあなたの実力はこの世界のトップ10に入るほどの実力なのですよ」
「えっ!?」
その話を聞いて私は背筋が凍るような感覚を覚えた。私がトップ10に入る? でも私は不意打ちとはいえ黄金のレイにも勝てなかったし、次射とタイマンで勝ったこともない・・・
すると私の気持ちを察したのか加櫻が続けて話す。
「今まであなたが戦ってきたのはかなりの強敵たちなのです。その証拠に普通の高校生では絶対に倒せないはずの暴徒たちを相手にできているのですから」
え!?こいつらってそんなに強いの!?
「この暴徒たちは通常の一般人が倒すのは困難。戦闘のプロが戦って満身創痍で一体倒せるくらいのレベルです」
「・・・・・・」
加櫻の話を聞いて唖然としていた。こないだまで普通の魔物でもなんとか戦えていたレベルだったのに・・・
「おそらくそのオーラのおかげでしょう」
「え?」
「オーラは解放したときに能力が上がりますがそれは身に纏っている時でも同じです。まあ解放したときの半分の能力ですがね。ですが結果的にあなたは普通の高校生から逸脱してしまったのです」
「そんな・・・」
「それによって悩むこともあると思われます。しかし私でしたらその相談に乗ることができます」
「どうして・・・?」
「私はオーラを持ってはいませんが今まで雷獣のスミー様のお悩み相談役をしていましたので」
「え・・・」
幹部の中のお悩み相談役とかいたんだ・・・ なんかどんどん幹部のイメージが崩れていく・・・
「まあ、説明はこのくらいですね。それでどうでしょう? 改めて答えを聞いてもらっても」
「私は・・・」
私は覚悟を決める。
「私は、あなたとは結婚できません!!」
「・・・・・・そうですか」
加櫻は少し寂し気な表情を浮かべた。だが次の瞬間、満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ・・・・・・殺しますか」
「!!」
その瞬間、気が付くと加櫻が私の目の前に来て拳を構えていた! だが次射たちでこのスピードにも慣れているので寸前でかわす。そこからさらに追撃を仕掛けてくる! 私は的確に防御をし、一度加櫻と距離を離す。
一息、深呼吸をした後、私はオーラを解放した。オーラを使っていくとどんどん人間的な感情が薄れていくらしい・・・ だけど今の状況でそのようなことは言ってられない!
私は加櫻と正面対決をした。加櫻の拳を避けながら隙を見ては拳を突く! この戦闘スタイルは私の得意分野! このまま肉弾戦で持ち込んでいけば私に勝機があるはず!!
だが次の瞬間ッ! 加櫻が突然私の前から姿を消した。すると突然背中に蹴られた感覚が!! 後ろを見ると加櫻がいたがすぐに姿をくらませてしまった。そして今度は横腹に重い一撃!
———いったいどうなっているの!?
疑問に思っている私に加櫻が答える。
「確かに正面衝突ならあなたが勝っていたでしょう。ただ! 私にはこのスピードがあるのですよ!! これが私の伝統芸!!」
『
どうやら姿を消したのではなく恐るべきスピードで消えたように見せていたようだ。そのまま私はなすすべなく一方的なリンチに遭った。姿をとらえきれず、死角から攻撃をモロに受ける! 私はそのまま力尽きて地面に倒れてしまった。
———つ、強すぎる・・・!! 今までの敵とは比べ物にならない強敵だ・・・!
もはやこれまでか、そう思っていたその時・・・!
突然私を中心としてまばゆい光に包まれた! 思わず目をつむってしまう。そして目を開いたときにその光景を見て驚愕した! なんと加櫻の動きが見えているのだ! しかもそれだけではない。加櫻が次どこに動き、どう攻撃してくるのかがまるで手に取るようにわかるのだ!
私はその謎の予知能力を使い、加櫻が横腹を狙ってきた蹴りを受け止めた。加櫻は目を見開いて驚きを隠せないようだ。その隙に私は加櫻の横腹に蹴りを打ち込んだ! 文字通りカウンターだった。加櫻が横腹を抑えながらその場に崩れ落ちる。
「ば、バカな・・・私の・・・
正直私も驚きだ。何の能力かはわからないけどこんな能力もあるだなんて・・・
「面白い・・・これでこそ戦いがいがある!!」
そしてまたもや加櫻は姿を消した。また例の
「そこだ!!」
次の瞬間ッ!! 横腹に顔面に両腕。ありとあらゆる方向から同時に攻撃を受けた!
———連続で攻撃を受けていたさっきの
「ハハハッ! この技は私の最終奥義!!
その言葉に私は違和感を覚えた。まるで人間以外と戦ったことがあるような口ぶりだった。だが私にそんなことを考える余裕なんてなかった。
いろんな方向から攻撃がやってくる。同時攻撃を防げるわけもなくそのままなぶられ続けられた。
「グッ! ガァッ!」
手出しもできずにいると私の体に異常が発生した。なんと私の体温がどんどん高くなっている。一瞬なぜこんなことが起こったのか理解できなかったがすぐに私は黄金のレイとの会話を思い出した。
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「オーラの使い方には注意してね・・・」
「それってどういうことです?」
私が黄金のレイからオーラをもらった後、こんなことを聞いた。
「オーラは古来の魔族の力を解放する・・・魔族と人間では体のつくりが違う。使う時間は限られているわ。体温が上昇してきたらそれが合図よ・・・」
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「まずい・・・!」
体温がどんどん上昇している。これ以上のオーラの使用は無理だ。けど素のステータスであのスピードに追いつけるの・・・?
すると私の前に加櫻が出現する。私はとっさに腕を交差して体を守った。だが加櫻の拳は外れる。だが次の瞬間ッ! 加櫻が下にしゃがみ構える。そして死角からアッパーカットを浴びる! 空中に上がったところを加櫻が追撃する! 私のところに飛んできてさらに
———もう・・・立ち上がれない・・・・・・
さっきの攻撃で腕の骨をやったようだ。もはや体力もほとんど残っていない・・・ ここで万事休すか・・・
その時、何かが私の視界を通った。そして「グッ!」という加櫻の痛む声。なんとか体を起こしてみたとき、私は驚愕した! なんと加櫻の左肩から血が流れているからだ。おそらく銃で撃たれたのだろう。
———でもいったい誰が・・・?
「無事か!? 美紀!!」
聞き覚えのある声の方を振り向き、またもや驚愕した。なぜならそこにいないはずの人物が立っていたからだ。
「お父・・・さん・・・?」
そこにいたのは私の父、大場
◆ 大場 義明 ◆
「もしもし・・・ ああ、どうした? ・・・・・・何っ? それは本当か? わかった、すぐ向かう!」
誰かから電話が来たので出てみるとそれは親友の奥さんの声だった。しばらく会っていなかったがまさか一人で最近噂の暴徒の町に行ってるとは思わなかった。
おまけに次射君たちまで来ているかもしれないというじゃないか。これは急がないといけないな。
「あ、大場警部。どこに行かれるんです?」
「急ぎの用だ。お前たちも来い」
「え、あ、わかりました!」
近くにいた森下やその部下たちを引き連れて私は暴徒の町へ向かった。
「こ、これは・・・・・・!」
私たちが暴徒の町に到着した。そこで待ち構えていたのは大量の暴徒だった。
「こ、このぉ!!」
部下の森下やその部下たちが緊急用の銃を取り出し、発砲する。発砲された弾は見事に暴徒たちにヒット! 数多くいた暴徒たちが続々と倒れていく。
だがよく見ると先ほど撃ち抜かれた場所がどんどん塞がっていく!
「こいつら! 自動回復のスキルでも持っているのか!?」
その刹那! 奴らは起き上がり俺の部下たちを襲ってきた! 何人かは避けることができたが数十人の部下たちが餌食となった。
「うわあああああ!!」
「ぎゃああああああ!!」
部下たちが絶叫しながら暴徒たちに噛まれる! 肉が抉れ、血が噴き出ている状況を見て俺はただ愕然としていた。
———こんなところに・・・美紀たちが・・・・・・?
「警部!? どうしました!?」
俺の異変を察し、生き残りの部下の森下が俺のところに駆け寄ってきた。
「ここは一度退きましょう!」
「いや・・・ここを何とか突破して美紀や次射たちのところに行く!」
俺の言葉に森下が驚愕する。
「ちょ、本気で言っているんですか!? もう生き残りは俺と警部と残り数人! この戦力では黒速君のところはおろかここを突破するのも困難です!!」
「大丈夫だ。あれを使おう」
そして俺はあれに指を指す。そう、俺たちがここに来るときに乗ってきた・・・あのパトカーに。
「全員!! パトカーに乗れ! これを使って突破するぞ!!」
俺は全員に指示をし、それぞれが一台ずつパトカーに乗った。そして全員でアクセルを全開! 暴徒たちの前を突っ込み吹き飛ばした!何人かへばりついたりしていたが正面の奴らはワイパーを使って落とし、ドアについている奴らは窓から発砲して撃ち落とす。銃声音が何発か聞こえ、やがて張り付いていた暴徒たちは全員地面に倒れ伏していた。
後ろから暴徒たちが追いかけていないことを確認して俺は安堵する。
「何とか振り切ったか・・・」
俺は一安心し、車についていたマップ機能を起動させた。
このパトカーに搭載されているマップ機能は人の現在地を含む情報を細かく表示してくれる。俺は表示されたマップを見る。そして俺たちの進路の先に一体の生命反応がある。
「全員、警戒しろ。先に暴徒がいるかもしれん」
「「了解」」
そして生命反応があるところにたどり着くと一人の男性が倒れていた。俺はその顔に見覚えがあった。
「虎二!?」
俺の親友の虎二だった。見たところ暴徒化しているわけでもなさそうだ。俺はすぐにパトカーを止めて、降りた。そして虎二のもとに駆け寄った。
「おい、虎二!」
声をかけてみるが反応がない。だが息はある。
「森下! ちょっと手伝ってくれ!」
「は、はい!」
俺たちはパトカーに虎二を乗せて、その場を後にした。
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