この作品群は、日常の食卓や季節の移ろいを繊細に切り取った俳句の集まりであり、それぞれの一句から料理の香りや味わい、そしてそこに宿る人々の営みや感情が伝わってきます。まず、食べ物のリアルな描写に心惹かれました。例えば「焼鮎の粗塩の腹くわれけり」や「脂ごと裂く箸先や焼き秋刀魚」は、素材の質感や食べる動作の音までもが目に見えるようで、五感に訴えかける力強さを感じました。また、「一粒も残さぬ茶漬飯の春」では、春の季節感と共に、食べ物への感謝や満足感が丁寧に描かれています。
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