第五話 能力
メデューサという神話の怪物がいる。
若い女性の姿をしているが、その姿はよく見ると、髪の毛の一本一本が全て蛇できている。
こいつの恐ろしいところはその能力だ。
なんとこいつは、その眼で視たものを石にしてしまう能力を持っているのだ。
さて、話は戻って白黒の少女メアリー・グレースについてだ。
彼女は今、俺達を襲ってきた怪物を、その眼で視て、石のような白黒の色に変え、動きを止めてしまった。
これは、神話で語られるメデューサの能力とかなり一致している。
だが、今までの彼女の動きや、
そこのところをちゃんと、彼女から問いださなければいけない。俺はそう強く思った。
正直、メデューサのような眼の能力が現実にあるとするなら、詳しく実験してやりたいという、知的好奇心の方が勝っていたとも言える。
「メアリー、お前は何者なんだ! なんで怪物を止められる!」
「ヒッ……すみません……何もしないでください……」
今の俺以上に、メアリーの様子がおかしい。
どうやら、この能力に対して、なにやら嫌な記憶があるようだ。
そりゃ普通に考えたらそうだろう、自分が化け物ですと周りに言える訳がない。
そんなものがバレたら、イジメ一直線だ。
俺は、どうにか彼女の警戒心を下げようと、言葉を考える。
「君のことが詳しく知りたいだけだよ」
「そんなことを言う人に、殺されそうになったこともあります」
しまった、これも地雷だった!
世の中にはとんだマッドサイエンティストもいるものだ。
「誰が殺したりするものか! 俺にはお前が必要なんだ!」
……告白みたいな言葉になってしまった。
だが今、あの怪物を止められるのは彼女しかいない。
愛想を尽かされるとこっちの身が危ないから、この言葉は俺の本音だ。
「え?」
メアリーはきょとんとした顔をしている。
まさかのギャルゲーみたいな選択肢が当たりなんて。
「私がここにいてもいいんですか……?」
俺の言葉をとても深く受け取っているようだ。
「そうだ! 俺はお前を否定しない、ずっと一緒にいてくれ!」
少なくともあの怪物がいるうちは。
何か取り返しつかないたたみかけをしているような気がするが、今は非常事態だ。
「あの……ありがとうございます」
なんとか打ち解けたようだ。
ここで俺は本題に入る。
「俺は君のことがもっと知りたい。メアリー、君の持つ、その能力について詳しく教えてくれ」
「それなんですが、私も詳しく分からないんです。私がこんなこと出来るかもしれないって思ったのもついさっきの事ですし」
(「お願いだから止まって!!」)
そんな言葉が聞こえてきたのはそういうことだったのか。
おそらく、なにかの拍子に一度怪物が止まったから、もう一度同じことを試そうとしたのだろう。
しかし、この能力を使うには発動条件、もしくはクールタイムがあると。
前者の線はまだ情報が不足しているが、後者の線で考えるとある程度の時間は絞れてくる。
メアリーの声が最初に聞こえてからあの停止能力が発動した時間まで、およそ10分。
もしクールタイムがあるとするなら、そのくらいになる。
後必要な情報は……
「メアリー、最初に怪物を止めた時、あの怪物は何分、もしくは何秒止まっていた?」
「いや、あの時はまだ私が止めたのか分からないです。まだ何かの要因で止まったかもしれませんし……」
「それだとしても停止するまでの時間が大事なんだ。覚えている範囲でいいから教えてほしい」
「分かりました話します。私が最初に怪物が止まっているのを見たとき、およそ10分ほど止まっていたと思います」
なるほどな、ある程度形はつかめてきた。
仮定に仮定を重ねている気もするが、今はこれで考えるしかない。彼女の石化能力(仮)は10分待つ事に一回、10分間だけ怪物を足止めすることができる能力らしい。
もしこの仮定が正しいのだとすると、俺達はもう、安全になったということだ。
「メアリー、もしかすると、俺達はもうあの怪物を恐れる必要がないのかもしれない」
「どういうことですか?」
「怪物を再び止められるまでの時間を考慮して、そいつが追ってくるまでの距離を稼げばいい。その時間はおそらく10分、後は計算をすれば……」
さっきは一直線に俺達の元に向かってきて焦ったが、奴は人間が歩くくらいのスピードだ。そこまで早いわけではない。
10分間、怪物の速さ、一直線、この三つの要素があれば、後は簡単な計算で導ける。
分速×10が、奴が近付ける限界の距離ということが。
そこまで逃げてしまえば後は怪物の石化が解け、俺達の元に向かってくるまで合計20分、もし彼女の能力がクールタイムで再び使えるのであれば、待ち伏せして元居た場所に戻るだけで
「なら多く見積もって700メートルを直線距離で移動すればいいんですね」
「計算早っ! 俺が教えてやろうと思ってたのに……」
「こういうのは得意ですから!」
導き出した計算を元に俺達は走って怪物から離れていく。
町への被害も考えて、出来るだけ直線的に。
森を抜け、緑のじゅうたんが敷かれている草原までやってきた俺は、息を整えながらメアリーに問いかける。
「でだメアリー、安全になったところでもう一つ聞きたいことがある」
「何ですか?」
「お前が過去何があって、どのようにここへ来たのか詳しく教えてくれ」
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