異世界の三つの恩恵~生活魔法で万能! 食事バフで無双! 状態異常無効で最強!~

サカイヌツク

チュートリアル編

第1話 プロローグ

 俺、家成いえなり竜馬りょうま(十六歳)は異世界に迷い込んだみたいだ。


 その日は街に行って、高校二年目の教材を予約し、帰路についた時だ。

 気づけば見知らぬ景色、見渡す限りの緑、そして後方の大洞窟。


 大洞窟の入口には看板が立て掛けてあった。


【魔境イニシティ 危険なためうかつに入らないこと】


 日本語とは違う文字で、英語とも違うのだが何故か読み解ける。


 その不可思議な現象に、考えてもわからないとの結論に行き着いた。


 次に目にしたのは手に持っていたスマホだ。

 高校の進学祝いで親から贈答されたものだ。


 指紋認証でロックを解除すると、いつもの待ち受け画面ではなかった。


=====================================================

 ワールドをインストール中


 ・インストール待機中、チュートリアルを受けますか?

 →YES

  NO

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 チュートリアル? よくわからないけど、イエスで。


 イエスをタップすると、画面が遷移して、ここが異世界であることを説明し始めた。


『ようこそ竜馬、ここは地球とは違う異世界。貴方はこの世界のシステム循環に編成されたため、召喚されました。突然の出来事でとまどっているやもしれませんが、以後よろしくお願いします。私はこの世界を統べる神々の一柱、ノヴァと申します』


 ふむふむ。

 画面を続けてタップする。


『竜馬には三つの恩恵が与えられました。一つは魔法、この世界の住人は自分の適性に見合った魔法が使えます。貴方が使える魔法は生活魔法と呼ばれ、炊事掃除洗濯が自由自在に出来ます。また生活魔法の一部には亜空間倉庫と呼ばれる物を収納できる特別な空間へのアクセスが可能です』


 と言うことで、俺こと家成竜馬は生活魔法が使えるようになった、てってれー。


 ノヴァの指示に従って生活魔法の使い方をマスターする。

 亜空間倉庫とやらに「アクセス――亜空間倉庫」して、傘と財布をしまう。


 するとノヴァは俺を『お上手です』と褒めてくれた。


『二つ目の恩恵は、貴方のステータス上昇に関する食事のパッシブスキルです。貴方が何かを食べるたびに、ステータス値が上昇します。試しにこちらを食べてみてください』


 差し出されたのは霜降り肉だった。

 赤身と差しのバランスがよさそうな、上質な肉だ。


 でも生肉なんだよな……お腹壊すと駄目だし、生活魔法で焼いてみよう。


 生活魔法の一つ「ステーキ」と唱えると、人差し指が淡く光った。

 その指で肉に触れると、霜降り肉は一瞬でステーキになった。


 ついでに魔法で一口サイズに切ってから、口の中に放り込む。

 口内熱で肉が溶けて、一瞬で消えて胃に落ちた。


 う、美味すぎる……! 今までの人生で一番美味いレベルで美味い!


 食べる手が止まらず、四百グラムはあった肉厚ステーキは瞬く間になくなった。


『お気に召しましたでしょうか? 今のはオークの肉です。この先竜馬がオークに遭遇した際は積極的に狩猟するといいでしょう』


 オーク!? 俺はてっきり牛肉だとばかりに思ってた。


『今の食事で竜馬のステータス値が上昇しました。食事のパッシブスキルは竜馬の味覚が美味しいと感じるほどより効果します。ですのでステータス値を効果的にあげるためには食材を欠かさず美味しく調理しましょう』


 ありがとう、このパッシブスキルがどれほど優秀なのかは定かじゃないけど。

 続けてタップすると、ノヴァは最後の恩恵について触れ始めた。


『最後の恩恵ですが、これは貴方だけが使えるユニークスキルになります。その名は状態異常無効というもので、例えば敵対するモンスターが麻痺や毒を使ってきても貴方には無意味です。またあらゆる万病にもかかりません』


 ほうほう。

 それはまた健康的でいい。


 俺は昔から風邪やインフルエンザにかかりやすく、それで苦労したものだし。


『以上で竜馬への三つの恩恵の説明は終わりとなります。他にも貴方のステータスを調べたい場合はこの端末を通じて把握してください。一見は百聞に如かず、色々と試して、この世界で生きてみましょう』


 ……そもそもの話。

 俺はこの世界で何をすればいいんだっけ?


 例えば魔王を倒したり、勇者をざまぁしたり、そういった目的もない感じ?


 十六歳の自分に下った試練としては、酷く大雑把だなって思いました。


 生きるって――何?


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