新たな日々を前に
母さんだけでなく、リリスとセレンが傍に居る。
その状況は間違いなく幸せな一つの形ではあるが、アリオスやリリーナも居たら完全にここは同窓会の場となってしまうだろう。
ちなみにリリスに聞いたのだが、アリオスたちは昨日から外交のために国を出ているとのことで、数日会うことは出来ないらしい。
「それでセレンさん? 死者を蘇生させる魔法の研究は……どうするつもりなんですか?」
「そんなもん止めよ止め。もうトワが帰ってきたんだし、それが分かったのなら必要のないものだしね」
「……分かってはいましたが、切り替えが早いですね」
「完成一歩手前までは行けてるし、いっそのこと開発を続けるのも悪くはないわ。でもほら、死者を復活させることの出来る魔法なんて生み出しちゃったら碌なことにならなそうだし」
ちなみにセレンは完全に調子を取り戻していた。
リリスもそうだったけど、ブライトオブエンゲージによって壊れた心の損傷は激しいが、逆を言えば修復されて心が立ち直るのも早い……こうなると俺の命って俺だけの物じゃないんだなと強く思わせられる。
「どうした、トワ」
「あ~うん……その、俺もこれから頑張らないとなって思ったんだ」
握り拳を作ると、母さんが両手で優しく包んでくれた。
人間ではない吸血鬼とはいえ、その温もりは俺をどこまでも安心させてくれる……そうだよな。
俺はずっとこの温もりに守られていた……母さんに出会わなければ、巡り巡って今日の再会もまたなかったということだ。
「母さん、それからリリスもセレンも」
「なんだ?」
「なんですか?」
「どうしたのよ」
向けられる三人の視線に、ほんの少し圧倒されてしまう。
だがそれでも言わなければならないこと、それを伝えるために俺は言葉を紡ぐ。
「突然のことで驚きはまだあるんだけど、ブライトオブエンゲージ……それが発現したみんなと俺は向き合わないといけない。まだ至らない部分はあるし、そもそも体はまだ子供だ――それでも俺は、みんなの前から居なくなったりしない。俺もみんなと一緒に居たい……っと、それでどうだろうか?」
最後までビシッと言えば良かったのに、そこは経験の無さが出た。
だが俺が口にした言葉が間違ってなかったと思えたのは、母さんが俺のことを強く抱きしめてきたからだ。
もちろんリリスとセレンが動こうとした瞬間は見えていたが、それよりも早く母さんが俺を捕まえた。
「今はまだそれでもいい。それでも私の気持ちを知ってくれて尚、傍に居ることを許してくれるのならそれだけで嬉しいんだよ」
「母さん……その、ブライトオブエンゲージ云々がなくても母さんには傍に居てほしいけど?」
「はぁ……なんて嬉しいことを言ってくれるんだお前は」
俺が嬉しい気持ちなのはもちろんだが、母さんはそれ以上らしい。
ただ母さんの抱擁が苦しく感じるのは気のせいではなく、その豊満な胸が俺の顔に押し付けられているせいだ。
……正直なことを言ってもいいか?
子供のままだからこそやっぱりこれは役得というか……男である以上、これをされてしまうと他のことがどうでも良くなってしまう。
「ちょっと、私たちにもトワさんを貸してください!」
「そうよ吸血鬼! あんただけ卑怯じゃないのそれは!」
「ふんっ! 母親兼未来の妻としては当然のことだろう? 悔しければ力づくでも奪ってみるんだなぁ?」
お~い。
俺を挟んで物騒なことをしないでくれよな!?
そんな俺の願いが通じたのか、迸る魔力の奔流は感じたものの実力行使がされることはなく、仕方ないと母さんが折れたことで次に俺はリリスとセレンに挟まれた。
「トワさん、好きです……愛しています♪」
「好きよトワ。ずっとずっと、あんたのことが好き」
鼓膜を震わせる二人の声にドキッとしたのはもちろんだが、それ以上に意識を向けさせられたのは他でもない――左右から俺を挟み込む圧倒的なまでの弾力だった。
俺は今!
サキュバスとエルフにおっぱいサンドイッチをされているぅ!!
……なんてテンション高くやっていないと、面白くなさそうに見てくる母さんの視線に耐えられないんだ。
決してスケベ心を爆発させて喜んでるわけじゃないし、これからムフフな生活が待っているのかと期待したわけじゃないんだうん!
「薬を使う是非はともかく、もう少し大きくなったらいっぱい癒してあげますからね? 私はサキュバス……あなただけの女なんですから♪」
「あ、あたしだって頑張るわよ!? 経験はないけど、色々と一級品だと思うし! あたしの全部、トワにあげちゃうんだから!!」
いや、こんなんもう色々と予約されちゃってますやん。
思わずニヤニヤしてしまうが体は子供ということで、まだ反応の方は残念ながら……とはいえ、冷静に考えるとこれはこれで大変では……?
しかしながらこれから一緒という気持ちは共通認識となり、それは正に俺たちの新しい始まりを意味するのだった。
▼▽
「今日は……疲れたなぁ」
「ははっ、確かに大変だったなぁ」
リリスとセレンが一旦帰った後、母さんとのんびりしていた。
セレンはしばらくリリスの家に泊まるようだが、数日もすればアリオスがセレンのために作っていた魔法研究所を住居にするとのこと。
いつでもセレンが王都に戻っても大丈夫なように、魔法馬鹿のセレンのことを考えて研究所は作られたとのことだ。
「本当ならお前がもう少し大きくなって諸々伝えるつもりだったが、手間が省けて良かったよ」
「そのせいでかなり濃い一日になったけどね」
「まあ、これくらい刺激的な方が私にとっては良い。トワが息子になってからずっと刺激的な日々だが、ただのヴァンパイアとして生きていた年月は本当に退屈だったからな」
母さんもまた、リリスとセレンの二人と仲良く出来そうで安心だ。
でもこれ……俺はこれから三人の女性と過ごすわけで……それはつまりお嫁さんが三人出来たという認識で合っているはずだ。
「なあ母さん」
「なんだ?」
「今の自分のことを考えた時、昔のアリオスみたいに調子に乗れる性格なら良かったなって思うよ」
「良い女が三人も傍に居れば仕方ないだろう。だがまあ、トワだからこそ私たちは愛しているんだ」
「……うん」
「それに」
「それに?」
「私たち三人はトワを好きになったと同時に、ブライトオブエンゲージによる関係性もある。その時点で仲間意識も芽生えているからな……私たちは喧嘩をしたとしても、仲違いは絶対にないだろう」
「……そっか」
やっぱりそういう繋がりもあるんだな。
「だからトワは、安心して私たちに愛されるといい。そして私たちのことも愛してくれ」
「う、うん……頑張る!」
「あぁ♪」
母さんの満面の微笑みに、やっぱり綺麗だなとボーッとしてしまった。
でも改めて考えてみても……俺がこうして実際にハーレムのような状況になるとは思わなかった。
嬉しいか……嬉しいに決まってる。
ドキドキしてたまんないし、俺だって一人の男だから……でも同時にプレッシャーも感じている。
母さんもリリスも、セレンも男なら誰もが求める美女たちだ。
そんな彼女たちが傍に居ることもそうだけど、もう俺は絶対に居なくなることは出来ないから……リリスとセレンの苦しみを知ってしまえば、絶対にもう俺は死ねない。
「今日は特別な日だ。さあトワ、もう夜は遅いから寝るとしようか……こうやってイチャイチャしながらな♪」
……まあ、一旦今は軽く考えればいいか!
母さんの温もりと柔らかさを感じながら俺は、明日からの新たな日々に楽しみを見出すのだった。
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