生き延びよ 愛しきひとを 弔うも 敵に抗うも 生あればこそ

 2024年10月7日。

 「アクサの洪水」事件でハマスによる目を覆いたくなるような犯罪の数々が報じられ、世論は「テロリストを許すな」の声で溢れました。

 一方、国際政治や軍事情報を発信している人々はコメントを差し控えるか、「今後かつてない規模の人道犯罪が行われる可能性が高い」と警告を発し……


 残念ながら、その予見は的中したことは皆様もご存じだと思います。

 そして「テロとの戦い」の口実のもと、筆舌を尽くしがたいジェノサイドが始まってからは、アラビア語のSNSでは復讐を求め、死ぬまで戦おうと呼びかけるポストが大量に並んでいました。


 そんな中、とある虐殺のサバイバーでもある野戦指揮官の呼びかけが目に留まりました。


「死が終わりではない」


「何があっても戦い抜こう」


 こういった勇ましいポストが並ぶ中、彼はこう繰り返し呼びかけていました。


「今は少しでも安全なところに移動してください。まずは生き延びることが大切です。戦うのはそれからです」


 彼の故郷は四半世紀前に紛争でめちゃくちゃになっています。そして複雑な事情があったにせよ、国際社会は彼の故郷の復興のための支援はほとんどしませんでした。

 ただ、ワッハーブ派の富豪たちだけは違いました。

 彼らは何の見返りも求めず、壊された家や学校、モスクを建て直し、子供たちに教育を施し、才能のある子が望めば大学に進学する手助けまでしてくれました。

 これは「ウンマ」というイスラーム教徒にとっての強烈な共同体意識から来る助け合いの精神によるものでしょう(ウンマはもっと複雑な概念ですが、今は大まかなイメージだけ感じとれれば充分かと)


 そんな環境で育った彼が、なぜ故郷を遠く離れた土地で傭兵として戦い続けているのか、平和な日本での平穏な暮らししか知らない私にはわかりません。

 ただ、彼の「まずは生き延びることが大切です」という呼びかけに、どれほどの想いが籠っているかと考えると胸が痛いです。


 彼の心にいつか平安が訪れますように。

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