第15話・ライフを犠牲にカードをドローするのは当たり前ですよね!

《2ターン目のメインタイム。プレイヤー、バルサ》

・プレイヤー、シアン

・ライフ10、手札6枚〈1枚は風来サムライ〉

〈フィールド〉

・緑服の踊り子〈ライト状態〉

・風切りゴブリン〈ライト状態〉

・鍵猫〈ライト状態〉

・マインカード、1枚。

 ー

・プレイヤー、バルサ

・ライフ10、手札3枚

〈フィールド〉

・ウォーター・ガトリング〈ライト状態〉

・フロスト・ドラゴン〈ライト状態〉

 

『ファンサ・バルサからのアビスカードを認知。アビスフィールドの危険度が1から2に上がります』

「これでダメージを受けたら現実まで響くハメに……」

「まあでも、負けるよりはマシじゃね?」

「そうだけどマスターは楽観的すぎないか!?」


 ダメージを受けるのは覚悟の上だし、そもそも負けるつもりはない。

 楽観的と言われてもソウル・ファンタジアが大好きなだけで特に問題ないはずだが?

 アタフタと焦るミカエラさんを尻目に、俺はニヤッと笑う。


「その余裕がいつまで続くかな?」

「さあな? それよりもアタックしないのか」

「もちろんやるさ! 僕はメインタイムを終了してバトルタイムに入る」


 やっとバトルタイムに入ったか。

 アビスカードは予想外だったが、この後の展開は大体わかるので。

 コチラは備えるだけでいい。


「ウォーター・ガトリングでアタック!」

「そいつのソウルはユニットでガードされないだったよな」

「そう! まずは君のライフをいただくよ!」

「あー、

「ッ!?」


 悪いけどその攻撃は通さない。

 別に相手の攻撃を防ぐ手段はユニットでガードするだけじゃない。

 自分フィールドに存在するマインカードをこのタイミングで発動。


「マインカード、烈風をコール! コイツのソウルでウォーター・ガトリングのアタックを無効にした後、フロスト・ドラゴンをダウン状態にする」

「しまった!」


 綺麗にカウンターが決まり、相手のフィールドに存在するユニット2体はダウン状態。

 これで次のターンは攻撃が通りやすくなり、さっきまで余裕そうな相手がいきなり焦り始めた。


「これでソチラは動けなくなったがどうするんだ?」

「ぐっ、僕はエンドタイムに入る」


 おそらく相手はメインタイムでマインカードのセットを忘れた可能性もあるか。

 偶に起こるプレイミスだが、魂が掛かったアビス・グレイズでは命取りになりそうだな。


「マスターがいきなりゲス顔になったんだが?」

「そうか? まあグレイズに戻って。ドロータイム、スタートタイム、メインタイム」


 ミカエラさんが若干引いているようだが今はスルー。

 手札は潤沢にあるけど追加でドローしたいので、身を切る思いで動いていく。


「まずはライフ1を払ってグリモカード、風魔法の書物をコールしてデッキから2枚、ぐうぅ!」

「こ、この痛みは」

「アホだと思っていたけど自分からライフを減らすとは」

「でもまあ、これで向こうも理解が出来たと思いますよ」


 この重圧と電撃を受けたような痛み。

 静電気とは別格の強さに冷や汗が流れる中、俺は思わずニヤッと笑う。

 

「ミカエラさん、悪いけど付き合ってもらっていいか?」

「この状況で言えるセリフ……。まあでも、そんなマスターに付き従うのが救われた私の仕事だから大丈夫よ」

「助かる」

「こ、コイツら頭が狂っているのか!?」

「それはどうかな?」


 確かにお前らの言う通り俺はアホかもしれないが、勝つための代償なら割り切れる。

 俺達は互いに顔を見合わせた後、軽く拳を突き合わせた。


「さあいくぞ!」

「おう! 俺は手札から2体目の風切りゴブリンをサモン」

「また手札交換をするつもりか!」

「もちろん! 風切りゴブリンのソウルでギルド・ウィンドのカード1枚を捨てて2枚ドロー」


 風切りゴブリン

 攻撃2、防御1、火力1


 風切りゴブリンはステータスは弱いがソウルは強力。

 前世では一時期デッキに1枚制限カードで、4枚フル投入が出来るようになったのは去年の世界大会前の制限改定。

 そのおかげでギルド・ウィンドのデッキパワーが上がったのが個人的に嬉しかった。


「さらに風人形をサタンしてソウルを発動! コイツの効果で墓地に存在する風来サムライをクール」

「小細工ばかりだけど強いユニットを出さないなんてウチらを舐めているのですか?」

「さあな?」


 風人形

 攻撃1、防御2、火力1

 ー

 風来サムライ

 攻撃3、防御2、火力2


 フィールドにはダイヤ2以下のユニットが6体揃ったが。

 ただ向こうはコチラのユニットを見て鼻で笑っており、見下すような視線を向けてきた。


「もしかして雑魚をサモンしまくって数でゴリ押す気かい?」

「さあな?」

「ッ!? なんだこの重苦しい威圧感は!」


 シアン、ライフ9←7


 ソウル・ファンタジアを楽しむのは大切だけど、勝つためには貪欲に行かないといけない。

 さっきまではアホ行動やミカエラさんとボケ・ツッコミをしていたが。


「ライフ2を払った後、フィールドに存在する風切りゴブリンを破壊」

「また自傷するのかい!?」

「勝つためなら当たり前だろ」


 ダイヤの高いユニットはそれだけコストを払わないといけないんだよ。

 ライフを払った影響で体に痛みが走るが、我慢しながら一枚のカードを半透明のテーブルに置く。


「コストは支払った! これで緑風の剣豪・斬月をサモンできる!」

「こ、これで君のフィールドの火力を合わせると10になるのか……」

「ああ、これでお前の首根っこを掴める」

「アホだと思いましたがコレが狙いだったのですね」


 北風の剣豪・斬月

 攻撃4、防御4、火力3


 いや、本来の狙いはこれじゃないが。

 向こうの2人は驚いているから何かあるな。

 ならこのターンで決めようとせずに動く方が良さそうだ。


「これで勝てるわねマスター」

「それだといいけどな」

「?」


 隣では目を輝かせているミカエラさん。

 確かにその読みが当たればいいが、おそらく無理なので俺は保険をかけながら対策していくのだった。


 

《3ターン目のメインタイム。プレイヤー、シアン》

・プレイヤー、シアン

・ライフ7、手札5枚〈1枚は風来サムライ〉

〈フィールド〉

・緑服の踊り子〈ライト状態〉

・風切りゴブリンA〈ライト状態〉

・鍵猫〈ライト状態〉

・風来サムライ〈ライト状態〉

・風切りゴブリンB〈ライト状態〉

・風人形〈ライト状態〉

・緑風の剣豪・斬月〈ライト状態〉

 ー

・プレイヤー、バルサ

・ライフ10、手札3枚

〈フィールド〉

・ウォーター・ガトリング〈ダウン状態〉

・フロスト・ドラゴン〈ダウン状態〉

 

 



 

 

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ソウル・ファンタジア〜カードゲーム世界一位がTCG世界に来たなら当然一位ですよね? 影崎統夜 @052891

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