最終話 演奏をこれからも

「なぁ、やっぱこれかっこいいよなー!!」

「いつまでそれ言うんだよ、陽ちゃん」


 7ヶ月後、入学式の日、部室にて。

 私たちが眺めているのは、軽コンでもらった優勝トロフィー。


 今でも大切にしまわれているトロフィーは、金ぴかに輝いている。

 北原さんにも言われた。


 ――『君たちは本物だよ』


 って。

 あれから玲奈先輩は軽音楽部に姿を現さなかった。

 もちろん3位以内には入ったし、大和くんが北原学園に行ってしまうこともなく。

 クラスの友達には未だ褒められ、彩里たちからは『私たちの自慢~!』と言われている。


 夢だったんじゃないかって思うよ。

 優勝したことも、あれだけの人が見ていたことだって。

 賞をとった後に公開された私たちの4次選考の動画は、すでに100万回再生を突破している。


「弱小軽音楽部だった僕らがね……」

「ここまで成長できると思わなかったよね」


 高校2年生になったかずかずとつばっさーも、満足そうに言っている。


「あー、胡桃、メシ買ってきてー!」

「え、私⁉」


 陽ちゃんがそう言ってシッシと追い払う仕草をする。


「まぁ私もお腹空いたしな……じゃあ行って来まーす」


 そう言って部室を出た。みんなの好きなものは大体わかるから、一番近くのコンビニで買ってこればいいかな。


 部室では陽ちゃんがギターを持ち込んで練習するのが日課になっている。

 それくらい、陽ちゃんはギターがだいっすきなんだ!

 そう思っていた時。


「フンフンフフフ~ン」


 階段の下から鼻歌が聞こえた。


 はっとした。


 このメロディーは今、陽ちゃんがギターで弾いている曲だ。

 音も、リズムも、正確。

 私は居ても立ってもいられなくなった。

 1段飛ばしで階段を駆け下りる。


「……はぁっ、はぁっ」


 見つけた。

 新入生の、男の子だった。

 私が目の前に現れるまで、何やら両手の指先を動かしていた。


 これは――サックスの指の動かし方だ。


「あ、あの……どうかされましたか……?」


 ふふ、私よりしっかりしてるなぁ。

 でもね、この時点で君のキラキラした学園生活は終わりだよ!


「ここは花里学園軽音楽部。さっ、君も入部しよう?」

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ここは花里学園軽音楽部。さっ、君も入部しよう? こよい はるか @PLEC所属 @attihotti

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