第5話 桃恵の復讐
パピは助けを求める所へ転移するイメージをしました。するとパピがおばあさんから餞別に頂いたピンク色のペンダントが眩く光ってパピは見たこともない建物の中に転移していました。
そこは学校の教室みたいです。
放課後でしょうか学生は10人しかいません。その中で異様なグループが何事か揉めているみたいです。
そこには転生前の桃恵が5人の女子生徒に取り囲まれています。
その中のリーダーらしき女が桃恵の肩を押してきつい声で言いました。
「だからさあ、私、貴女が生理的に嫌いなのよね。サッサと私の前から消えてよね!」
そうです、これは桃恵がいじめを受けている現場です。
我慢できなくなったパピは大声で言いました。
『お黙り、お前の息こそ臭くてたまらないよ。喋るな!息するなその汚い手を離せ!」
いじめグループの女たちはエッて言ってキョロキョロ周りを見回しています。パピたちの姿が見えていないようです。どうやら魂だけが時空を超えてここに飛んで来たようです。
「あんた!腹話術使ってるの?!生意気よ!」
リーダーの
「痛い痛い痛いよー。手が折れた。何してくれるのよ、治療代寄こしなさいよ!」
パピが桃恵に、とっさに掛けた倍返し反射防御シールドで馨の手は大怪我を負ったようです。
それを見ていたクラスメートはひそひそ話をしています。
「なにあれ自分が殴っておいて手が折れた治療代寄越せだってダサっ」
「でも聞いたことの無い声が聞こえたわよね」
「うん。女の子の声だったね」
「でもそんな子、どこにも居ないよ」
「もしかして幽霊?」
「「「「「キャーッ」」」」」
野次馬と馨の取り巻きは一斉に逃げていきました。
「……」
「……」
馨の声が出ません。一生懸命声を出そうとしますがそうすると息が出来なくなります。
さっき聞こえたあの声が思い出されました。
『おまえの息こそ臭くてたまらないよ!喋るな、息するな、汚いその手を離せ』
痛くてたまらない手を見ると自分の手が青白く不気味な色になって膨らんでいます。
「……」
馨も慌てて自分の家に逃げ帰りました。
両親は驚いて病院に連れて行きましたがどこの病院も治療してくれません。それどころか、醜く腫れあがったその手を見るなりこう言いました。
「悪魔だ!悪魔が神の罰を受けた呪われた手だ。寄るな触るな息するな!」
あの声の言ったことと同じ事を何処の病院でも言われました。
勿論パピの掛けた呪いのせいです。
学校で一体どんなことが有ったのか?馨の両親は学校に行って色々訊きこみました。
「馨さんはいつも呉羽桃恵さんを虐めていました。昨日も言葉で虐めて、桃恵さんの顔を平手打ちしたら自分が痛がって桃恵さんに治療代を寄越せなんてとんでもないことを言い出したんです。そしたら姿も見えない人の声が聞こえたんです。「喋るな!息するな!」」っていう声が」
そしたら桃恵さんが下校時にトラックにはねられて亡くなったのです。私たちは馨さんの虐めが原因で桃恵さんが亡くなった後の桃恵さんの幽霊が時間をよみがえって来たのだろうと思いました」
同級生の証言は両親の思いもよらぬものでした。馨の声が出なくなったのも手の異常な腫れと不気味な色と痛みが、虐めを苦にして亡くなった少女の怨みによる祟りなのではないかと結論を出すしか有りませんでした。馨は学校をやめて毎日桃恵の写真に念仏を心の中で唱えるようになったそうです。でもパピの中の桃恵には何も届きません。
当然です。手が治ったり声が出るならばという打算の念仏なのはお見通しなのですから。
馨が真に悔い改めるまでは治らない呪いが掛かっているのです。ですから一生治らない恐れが大きいです。
もうすでにお判りでしょうが一連の不思議な現象はパピによる魔法によるものです。
『こいつもうこれでいいかな?』
『そうだね。死んでも悔い改めないような奴だからこのまま苦しんで貰おう』
言っておきますが桃恵は自殺ではありません。そんなことしたら巻添えで桃恵を轢いてしまう運転手さんが気の毒です。精神的に不安定になっていて青信号になったとたん歩き出したところへ居眠り運転トラックが突っ込んで来たのです。
『それにしてもこの世界ではあちこちから虐めに苦しんでいる声が聴こえてくるんだから怖い世界だねえ』
『本当だね。じゃあ次の所へ助けに行こうか』
当分の間ここの世界から戻れそうにありません。
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