第3話 小人属との遭遇

パピは何時ものように森の中で果実やキノコ、森菜もりなを採取しているとガサガサと下草を揺らして何者かが近づいて来ました。探索すると身長1mにも満たない子供くらいの大きさの人間の女性でした。鑑定すると【小人属の少女】です。その後ろに複数のコボルト。小人を追跡しているみたいです。小人族は戦闘力の弱い種族です。

一方、コボルトはさほど強くないモンスターですが、群れで行動するので厄介な相手です。少女が草に足を取られて転んでしまいました。するとコボルトは寄ってたかって少女に襲い掛かります。

パピの前世の呉羽桃恵くれはももえは、虐められていた自分を思い出して、許せない!と憤慨しました。


「お前ら寄ってたかって弱い者虐めするなー!!」

パピは魔力の塊をコボルトの頭に落とします。あたかも拳骨でお仕置きをしているみたいです。

キャインキャインキャイン

コボルトは慌てふためいて逃げて行きました。

「大丈夫?怪我してる?」

小人はパピを見てプルプル震えています。よっぽど怖かったのでしょう。

「あ、血が出ている。怖がらないで、今治癒魔法を掛けてあげる」

パピは出来るだけ優しい声で話し掛けます。

小人はオドオドしながらも

「お願いします」

と、治癒を受け入れました。


「ヒール」

小人の身体が暖かい光に包まれて血が止まり。傷口が綺麗に塞がりました。

「お嬢さん有難う。痛みも無くなったよ」

「あたいはパピよ、あなたは?」

「わたしの名前はルミ。パピさん、この辺に【花鳥亭】という宿屋がないかな?」

「それ、あたいの家よ。泊まりたいの?」

「ブルースさんという冒険者さんに困ったことが有ったら【花鳥亭】を訪ねる様に言われていたの」

「ブルースはお父さんの名前よ。困りごとが出来たのね。いいわあたいが案内するわね」

「有難う。助かるわ」



「お母さん。お父さんのお客さんを連れて来たわよ」


ルミさんのお話によると、彼女の暮らす村は魔族の獣人ウルフ族とモンスターの森に挟まれていて、非力な小人賊を襲ってくるのだそうです。質が悪いのは、そいつらは小人を喰らうわけでも無くただ泣き叫ぶ小人をいたぶるのが楽しくてただただ虐めるためだけに生かしておくのだそうです。

そのことを縁あって知り合えたSSSクラスの冒険者であるパピの父のブルースに相談したところ、1度奴らをいさめてくれたけれど、何時までもその村に居るわけにもいかないので、

「俺が居なくなったらまた襲われるかも知れない。どうしても我慢できなくなった時は魔のトライアングルに有る【花鳥亭】を訪ねて相談するように」と紹介状と魔物避けのブレスレットをくれて次の村に去っていったというのです。


ピキーン

虐めはパピの逆鱗に触れる愚劣な行いです。

 「お母さん、あたいそいつら懲らしめてやりたい。お願いします。あたいを旅に行かせて!」

「やっぱりそうなるのね。お父さんの手紙にもパピに任せてやってくれと書いて有ったわ。小人村だけでなく、理不尽な虐めにあっている人たちを救う旅に送り出して欲しいとね」

「お父さんいつかあたいが言ったを覚えていてくれたんだ。嬉しい」

 「本当にパピとお父さんはそっくりな性格なんだから」

父のブルースも困っている人を放って置けなくて世界中飛び回って人助けをしているのです。

「まるで1卵生親子ね、そんな2人が大好きよ」

「お母さん良いのね、旅に出て行っても」

「いいわよ、でもおばあちゃんにちゃんと言ってお許しを得て来なさいね」


 「私の予知能力通りパピは出て行くんだね。仕方ないことさね、餞別にこれを持っておいき」

おばあさんはパピに綺麗なピンクの魔石のペンダントを渡しました。

 「わー綺麗、あたいの髪の色みたい」

万が一の時にパピの中の桃恵を守ってくれる魔法具だよ、元気でね、気を付けて行っておいで。いつでも戻って来てもいいんだからね」

「うん。おばあちゃん有難う。行ってくるね」

こうしてパピの旅が始まったのです。

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