第25話 首都の病院へ
*
山脈を超え、西リラの区分に入ったラインハルト一行は、馬車を雇い、人の少ない道を選んで、オールバニの町を目指した。
「オールバニまで行くって・・・?そりゃあ長旅だねぇ、お客さん!」と、馬車の御者さんが言った。
「馬車を2~3個乗り継いでいくことになりますよ」と、御者が言った。
「構わない」と、ハルモニア。
「こっちは急いでいてね・・・お金ならはずむから、頼むよ、御者さん」と、ハルモニアが言った。
「大きな赤い鳥まで連れて」と、御者が珍しそうにプラトンを見る。
「プラトン、喋っちゃだめよ」と、ファニタがこっそり注意する。プラトンは心なしか不機嫌にも見える。
「では、お客さん、早速出発しましょうかね」ということで、一行は出立することになった。
御者の話では、3週間ほどの旅になるということだった。
「ヘーゼル、もう少しだから・・・」と、ファニタが思わず心配になって、馬車の中で心の中で思う。
「ヘーゼルはどうしているか、ノア君に聞いてみるか」と、ラインハルトが言った。
「ノアさんって、文通の鳥持ってたっけ?」と、ハルモニア。
「俺の記憶では、二人は文通・・・いや、なんでもない。まあ、とにかく、ノアさんはコムクドリを持っていらっしゃる。今度馬車から降りて乗り換えするとき、そこらの野鳥を使って、手紙で聞いてみよう」と、ラインハルト。
「そうね、気になるわ」と、ファニタ。
「この馬車の中で、手紙を書いておくから、二人とも寝ていいぞ。野宿続きだったからな」と、ラインハルトが言った。
*
「え!?!?へーゼルを首都の病院に移すって!??」と、ノア。
「そうなの、ノアさん」と、オフェリアが気落ちして言った。
「手術でもするんですか?」と、ナスターシャ。
「違うの、へーゼルの容体が、昨日の晩悪化してね。このままじゃ持たないって、お医者さんが。とりあえずできるなら首都のいい病院に移さないと、って」
「あの、お医者さんには、兄上様が、星のしずくをとりに行っていて、それを待つという手段があるということは言ってあるんですか??」と、ノアが慌てて言う。
「もちろん話したわ」と、オフェリアが椅子に座って言った。
「けど、旅は一向に終わらないし、ラインハルトたちは帰ってこないし、とりあえずヘーゼルはこのままだともう数か月も持たないのよ、だから、首都の病院で、ラインハルトたちを待つことにするの」と、オフェリア。
「・・・・そうですか・・・」と、ナスターシャ。
と、その時、小窓をノックする音がした。
オフェリアが近づく。
「あら、小鳥さんだわ」その言葉にピンときたノアは、立ち上がってその小鳥の足元を見た。確かに手紙をぶら下げている。
「待ってください、オフェリアさん」と言って、ノアが代わりに手紙を受けとった。宛先人は「ノア氏」だった。
「ラインハルト兄上様からの手紙のようです」と、ノア。
「まあ!」と、オフェリア。
「私にも読ませて、ノア!」とナスターシャが言う。
「どうやら、星のしずくの居場所が分かったのと、今東リラのとある町まで到達した、とのことです!」とノアが言う。
フーヴェルは働きに出ていたが、3人は、居間で、机を囲んで、その手紙を回し読みした。
「どちらにせよ、このままだとヘーゼルは持たない。首都の病院に移すことを、ノアさん、返事に書いて下さらないかしら」と、オフェリア。
「お安い御用です」と、ノア。
「私からも一言」と、ナスターシャが意気込む。
こうして、返事の手紙をしたため、ノアはコムクドリに手紙を頼んだ。
「頼んだぞ、ヘーゼルの命もかかってるんだ・・・・」と、ノアが心の中でつぶやく。
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