第10話 新たな敵幹部! 生意気なガキ!

「よ」

「神様」


 普段、脳内に声だけで話しているが、夜は身体も見せてくれる。ベッドに突然現れるもんだから、ドキッとしちゃうね。

 神様は中学二年生くらいの、ちょっとツンとした小悪魔的な顔。髪は金色、肌は白。全体的にすらりと細身。スレンダーではあるが、痩せすぎずにちゃんとぷにぷにともしている。

 神様の見た目は、俺の理想の見た目らしい。正直、カワイイにもほどがある。

 ベッドから立ち上がり、壁にかかった時計をぴっと指差した。


「さて、時間だな」


 時間だから現れたんだろうに、優しいなあ。

 プライベートな時間もあるだろうということで、夕食が始まってから23時までは話しかけてこないこととなっていた。

 その間に、アレやコレやを済ましておくわけだ。詳しくは言えませんけども。ええ。


「まあ、アレもコレも見てたけどな」

「ちょっと、神様!?」


 プライベートな時間への配慮が無意味じゃない!?

 どうなってんだよ。


「だって神だから」


 全然悪気ないよって態度だ。

 見てなかったって言ってくれてもいいじゃない!?

 神様に見られてるのが一番恥ずかしいというのに。んもー。


「まあまあ、オカズにする写真撮っていいから」

「神様!?!?!?」


 マジで?

 え、マジで?

 恥ずかしさを嬉しさが遥かに上回ったぞ!

 ええ!?

 神の愛ってすごいね!?


「戦闘が終わったらなー」

「頑張ります!」


 モチベーションMAXだよ!

 その状態で、俺達は瞬間移動。だだっ広い荒野に。


「さて、来たな」

「ナメック星ですね」

「よくわかったな」

「え!? よくわかったな?」

「ドラゴボを参考にして用意した場所なんだ」

「そうだったんですね!?」


 似てると思ったら、似せてたとはね。

 あと神様ってドラゴボって呼ぶタイプなんすね。

 さて、ワギュウさんはどこかな?


「ふーん。アンタが変身する前のブタキャラか」

「ぬ!?」


 ワギュウさんじゃない!

 別の悪の幹部の登場だ!

 ワギュウさんは巨乳のお姉さんでしたが、どうやらちびっ子ですね。12歳くらいかな?

 黒髪のおかっぱで、あまり派手ではない見た目です。顔も丸くて、まさにお人形さんみたいってやつだな。目が大きくて、口が小さいよ。服装はいわゆるゴスロリってやつ。

 この人も養殖の食材の名前なのかしら。

 

「わたくしは、ナマガキ」

「生牡蠣かー! んまいよなー!」


 もちろん生のままで酢牡蠣も美味いけど、カキフライが好きだなあ。バターソテーもいいな。実は天ぷらも美味しいんだよな。いや、牡蠣食えなくなるのツラいよ?

 こりゃ頑張らなきゃいかんね。

 ナマガキちゃんは、形のいい眉毛をひそめながら、侮蔑の表情で俺の顔を見る。


「ワギュウは、こんなのに負けたの? おっぱいがでかい女はバカって本当ね」

「うわー。生意気なガキじゃん。生意気なガキ、略してナマガキってこと?」

「違うわよ! たわけ!」

「たわけ、か」


 うーむ、罵倒されてるのにあんまりだな。たわけって。渋すぎて味がしないというか。


「もうちょっと他の言葉ないですかね。バカとか」

「莫迦もの」

「あ~、なんか趣きがございますね。大変うれしゅうございます」


 品がある罵倒。まるでレトロな純喫茶で飲む、ネルドリップの珈琲のやうな、じんわりと心に染みる味がします。

 味わっていると、神様の目線が痛い。痛い=気持ちいい。至福の時間です。

 しかし、戦うわけじゃないよな。「幹部ですよね」と神様に一応確認すると「そう」と答えてくれた。


「あの、怪人を出さないんですか?」

「貴方こそ、その状態では戦わないのでしょう」


 あらっ、お優しい。

 しかし確かに悪の幹部って変身前に襲ってくるとか、変身中に攻撃はしてこないよな。紳士淑女の集まりなんだなあ。


「スーパーヘンタイパワー! プリーズヒットミー!」


 いつものように変身。ちゃんと途中で全裸になるし、肝心な部分は隠れる仕様です。結果的にはただ着替えてるだけなんですけどね。


「ブタキャラ……本当に気色が悪いですわね」


 ふむ……普通の人間だったら相当キツイと思うが、俺は嬉しい。特殊性癖が人を救うことってあるんですね。

 ナマガキちゃんは、右手を上げて召喚を行う。ゴスロリ少女の召喚は似合いますね。


「エービエビエビー」


 うわ、エビ女だ。怪人ってメス型もいるんだ。ていうか、なんでこの怪人はこんな派手な格好してんだ。


「あれはアオザイをイメージしてるんだ」

「えっ、神様なんですかそれ」

「ベトナムの民族衣装だよ。ベトナムでエビをいっぱい養殖してるから」

「あ、そういうことなんですね?」


 そっかそっか。養殖って日本だけじゃないから。


「日本人じゃなくて、全人間の代表だからね、お前は」

「いやー、責任重大だな」


 改めて思いますよ。ベトナムのエビの養殖を守るのが俺とはね。いやはや。


「エビエビ!」


 怪人エビ女が白いムチのようなもので攻撃してきた。コレ何?


「フォーのムチによる攻撃、耐えられるかしら」


 あ、フォーなんだ。ナマガキが教えてくれました。ベトナムを代表する米の麺ですね。そっか、エビ乗ってるな。

 まあ、こんなの避けられるでしょ。


「ぎゃー!」


 1本だと思っていたら、何十本のムチだった。こんなの避けられないよ!

 なお、相手が女だから嬉しいのではという勘違いをされている方がいるかもしれませんが、そんなことはないです。怪人なんて性別がメスというだけよ。こんなん女じゃないよ。エビのバケモンですよ。

 ナマガキちゃんだったら、嬉しいですけども。

 クソ痛いだけです。ぶっ殺す!

 こちとらMPはめちゃくちゃ溜まってんだよ!


「くらえっ!」


 鋭利な空気による魔法のイメージ。無数の風の刃がフォーのムチと、エビ女を切り裂く。


「くっ……」


 悔しそうに唇を噛むナマガキ。いい表情だ。


「エビエビ……」


 まだ生きているのか。ま、とどめを刺しておくか。


「侮蔑の眼差しに、興奮を感じ……軽蔑の言葉に、歓喜を覚え……足蹴にされては、恍惚となり……罵倒を食らわば、快楽とする……今、変態の力を、魔力に変えて、尊き命が食材にならんことを!」


 このセリフね、噛まずに言えるように練習してます。


「ブタキャラ・クッキング・ジャスティスパワー!」

 

「エビ―!」


 爆発の魔法によって、破裂した。


「な、なんという魔力なのかしら……どれほどの経験をしたらこのような魔力になるというの」


 女児にトランポリンにされるという苦行です。ええ。


「覚えてなさい」


 メスガキが消えた。一生覚えてますよ。


「めしあがれー」


 そして登場する、アジアンなテーブル。


「エビの生春巻きだって。パクチー大丈夫?」

「あ、好きです」


 神様は飯食うとき優しいんだよね。


「あ、うまーい」

「スイチリもっとつけな」

「ありがとうございます」


 今回も仲良く料理をいただいた。ベトナムのエビ、守れたことを誇りに思います。

 

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変態ドM魔法戦士ブタキャラ 暮影司(ぐれえいじ) @grayage14

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