僕と風俗嬢!

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 その夜、僕は風俗店に行った。恋人のいない時は風俗店によく行っていた。あれは、多分、10年以上前のこと。



 僕は、何日も前から或る風俗嬢(綾女)を指名していた。奮発して2時間コース。2時間も行為にあけくれるわけではない。行為の後、ゆっくりまったり風俗嬢とお話するのが好きだったのだ。そのために、僕はいつも長めのコースを選ぶ。


 時間通りに行くと、綾女の顔が真っ青だった。


「体調、大丈夫?」


 と聞いても、


「大丈夫」


と答えるだけだった。


 ホテルの一室に入り、一緒にお風呂に入ったら、綾女はいきなり吐いた。落ち着くまで背中をさすった。


 綾女はホステスと風俗嬢をやっている。この風俗店に来る前、ホステスの仕事の方で飲まされて悪酔いしてしまったということだった。吐き終わると、お互いに体を綺麗にしてベッドへ。


「今、何したい? 冷たいお茶とか飲む?」

「飲む」


「はい、お茶。水の方が良かった?」

「両方」


「はい、水。その様子やったら今日は無理やな」

「ごめん、寝たい」

「わかった」


 僕はTVを見て時間を潰した。やがて、2時間の10分前のベルが鳴った。


「起きれる? まだ無理?」

「もうちょっと、寝ていたい」

「もうちょっとって、どのくらい?」

「あと1時間だけ寝かせて。あと1時間もあれば回復すると思うから」

「ほな、店に電話するわ」


「もしもし、すみません、崔ですけど。綾女ちゃん1時間延長お願いします」

「わかりました」


 僕は、またTVを見て時間を潰した。

 またベルが鳴った。


「綾女さん、起きれる?」

「うん、起きる」

「はい、1時間の延長代金」

「あ、ごめんな」

「もう閉店時間やろ? 早よ帰ってぐっすり寝た方がええで」

「うん、そうする」



 合計3時間の料金を支払って、結局、何もしなかった。TVを見ていただけだ。ついてない。だが、まあ、そういう日もあるさ。僕は風俗店に行ってもトークだけで終わることもある。だから、あんまり気にならなかった。



 と思ったら、翌日、綾女から電話があった。


「昨日はありがとう! 店で会うのではなく、プライベートで普通にデートしようよ!」


とのことだった。長く風俗通いをしていると、こんなラッキーもあるのだ。僕は狂喜乱舞した。それから、綾女とは普通にプライベートデートをするようになった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と風俗嬢! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る