ソウル・オブ・ジ・オリジン編 10話「死をも凌駕する運命の魔剣」
自身に眠る力は、時として世界の運命すらも変える力になるが人族一人程度の力など、我の手でいくらでも壊すことができる。
赤子が創造した世界を、大人が簡単に壊すように繋がれたレールの方向を少しずつ変え、我らの管理する世界へと導こう。
一番目の夢から未来を掴む力を得るため、この世界の理を凌駕する魂を成熟させる。
彼らがもう一度歩みを止めることを考えぬよう、世界を救う二番目の魂を作るため、君たちを犠牲にする。
心配することはない、現実もまた夢の一つだ。それは世界の心理にもなり、答えにもなる。
君たちの手に持つ運命の魔剣は、黒い霧がかった道の先を照らす希望光の灯火になるだろう。
長い・・・長い夢を見ているようだ・・・。夢から意識が離れていく瞬間、心の奥で何故か、遠い先の未来の光景が見えた・・・。彼女はずっと泣いている。この先の酷たらしい未来が、ずっと彼女の足を掴み続け、一生癒えぬ傷跡が残っているようだった。そんな彼女が僕に手を差し伸べるとき、僕はベッドの上で天井に手をかざしていた。
「ッハァ・・・ハァ・・・ハアッ!い、いまのは・・・夢・・・だったのか・・・?」
脈動する心臓は、自分が今ここに生きていることを自覚させるために動いている。だけど、あの夢は、きっと・・・。
コンコン。
誰かがドアをノックしている・・・。身体を動かすよりも、頭を支えるほうが重く気だるかったが、少しフラフラとしながらドアを開けるとマルタが目元を赤くしながら抱きついてきた。
「リヴァンさん!よかった・・・生きてた・・・!ウワァァァァン・・・!」
「マルタ・・・大丈夫さ、僕はここにいるよ。」
泣きじゃくるマルタの頭を撫でると、マルタは顔を上げて、僕の瞳を見つめながらえへへと笑う。そんな彼女の表情に、僕は少しドキッとしてしまう。
「マ、マルタ・・・このままだと、少し・・・恥ずかしいかな・・・アハハ。」
そう言うと、マルタはハッとし、両手で頬を抑えながらより一層顔を赤らめてその場で腰を落としていく。僕がアワアワしながらうろたえていると、奥の通路際にレインとリセルが顔だけだしてこっちを見ながらニヤニヤしている。
「あの奥手のマルタが大胆な行動にでたなぁ~。」
「これにはあの鈍感のリヴァンもタジタジになっているわね~。」
「ちょ、ちょっと!二人とも!?」
み、見られてしまった・・・あぁ・・・この話はまた酒の場で二人の肴になるんだろうな・・・と思うと、僕は少しだけ冷静を取り戻したようだった。
「ま、まぁいいか・・・。マルタ、一緒に買物に行くって約束したよね?僕で良ければ今から一緒に行こうよ!」
マルタは目を輝かせて、僕に純真な笑顔を向ける。
「はい!お願いします・・・!」
マルタの笑顔を見ると、何故かとても懐かしい気持ちになる。何故だろう、僕は遠い記憶に同じ光景を見たことがあるような、そんな考えが頭の中を過る。でも、今は今だ。せっかくの休日だし、マルタとの買い物を楽しもうと思う。
少し整った普段着を着て、宿舎の一階でマルタを待つ。数分後にマルタがニ階から降りてきた。普段の仕事着ではなく、いつもとは違う、どこかの令嬢のような気品を感じさせるような姿で、マルタはまた優しい笑顔で駆け寄ってくる。
「リヴァンさん!お待たせしました・・・!」
「大丈夫、今来たところさ。ところで・・・マルタ・・・。」
「は、はい!な、何か変なところが・・・?」
「いや・・・。率直に言うと普段と違う服装だから、素直に可愛いと思ってさ。」
「へぇあぇえ!?か、かかかか、かか、か、可愛い!?」
マルタはどんどん顔を赤らめ、頭から蒸気を噴出するかの如く、真っ赤になりながら目を回して倒れた。そんなマルタを間一髪で抱えることができた。
「マルタ!?マルターーーーー!!」
数分後・・・。
「リヴァンさん・・・大変失礼しました・・・。」
「いやいいさ、それより大丈夫かい?今日は買い物は休もうか?」
「い、いえ!私はもう大丈夫なので、買い物にいきましょう!」
マルタの逸る気持ちを無碍にするなんて、僕にはできない。あの笑顔だけは守らなければならない、そう思うんだ。
~~秘水の恩恵の街【レウートサクス】繁華街~~
マルタはとてもうれしそうに僕と買い物を続けた。あちこちの屋台や店を一緒に巡り、一緒に入った骨董品屋でマルタが遺跡のアイテムに目を輝かせて食い入るように眺めている隙に、この店でこっそりあるものを購入した。
「あれ?リヴァンさん、何か買ったのですか?」
「あぁ・・・まぁ、少し気になるものがあったからね。」
「それって、どんなものですか!?」
マルタはキラキラとした目で見つめてくる。その表情にまた少しドキッとしてしまうけど、なんとか話をそらさないと・・・!
「マ、マルタ!あのアイテムってどんな使い方をするの?」
「リヴァンさんも気になりましたか!?あの遺物は千機文明ヒエラコン時代の代物で!この部分を押すと中の魔力をうんぬんかんぬん・・・。」
マルタが楽しそうに話している姿は、とても懐かしい光景に感じるんだ。マルタが笑顔になりながらこちらに振り向く時、何故か僕の妹を思い出した。マルタの表情、仕草が、僕の妹と瓜二つだった。何故だ?何故今思い出す。元気だった妹はいつもこんな感じだった。そんな考えが頭から離れずに、身体が、勝手に、ふらつく。
「リヴァンさん・・・?リヴァンさん!」
マルタが駆け寄る姿が見える・・・僕の意識が途絶える瞬間、マルタの姿が僕の妹の姿に、一瞬見えたようだった。
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