第37話 『第2じごくステーション』
汽車の中は、またまた、がらんとしました。
なぜ、あんなにたくさんの人が乗っていたのに、この箱にはだれもいなかったのか?
でも、いなくて良かったとも思いました。
自分には、いわゆる、前向きな会話はできないしなあ。
そうも、思ったわけなのです。
前向きな会話ができないと、面接試験も通りにくいし、なにやっても、認められません。
けれども、後ろ向きだって、前には進めるではありませんか。でも、それは、社会ではあまり評価されないのです。
ああしかし、車窓から見える風景は、がぜん、凄まじくなってきたのです。
それは、まさしく、地獄の有り様だったわけです。
突然に、アナウンスがありました。
『みなさまあ。当列車は、これから第2じごくに参ります。じごくは、無限の広がりがございまして、第2じごくといいますのは、まだ、ほんの、入口にすぎません。しかし、せっかくですので、地獄長さまは、お客様へのサービスといたしまして、じごくの風景の一部を、路線の周囲に配置いたしました。このさき、本地獄には入らずに、現世や天国、また、ほかのじごくに行かれるかたもありますので、この機会をお見のがしになりませんよう。進行方向向かいまして、左側です。じごくは、よく、八大地獄と、申しますが、こちらは、火星の女王さまが運営します、私立地獄です。
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