第23話 『ちんもくステーション』 その7


 『うらないましょか、あなたのみらい。』


 女性は、呟くように、呻くように、言ったのであります。


 『あなた、失礼ですが、駅の許可とってますか?』


 キオスクのおばさんが、ちょっとだけ、いつもより怖そうに言ったのです。


 『あい。許可証です。』


 その人は、免許証くらいのカードを差し出しました。


 『ああ。たしかに。あなた、すごいもの持っていますね。』


 『あい。』


 『なんだい? すごいものって?』


 おじさんが訊ねたのでした。


 『いやあ。すべての夢ステーションで、営業してよいという、コンプレート占い許可証です。あるとは聴いていましたが、見たのは始めてです。しかし、夢ステーション協議会の四次元スタンプが押してありますから、本物です。』


 『はあ。』


 『あら、あなたのきっぷも、そうですよ。』


 『あら、そ、そうですか?』


 『はい。首にくっついていますよ。移動範囲制限なしの周遊きっぷです。』


 『わ?』


 ぼくは、首のあたりを触ったが、分からない。


 『自分には見えないのですが。それも、めったには発行されません。』


 『いやあ、なんで?』


 『さて、それは、本人にしか分からないのです。』


 『いやあ。分からないなあ。』


 『たしかに、あるな。あんた。みためより、ただものではないな。』


 おじさんが、秘仏を見るように言いました。


 『うらないましょか、あなたのみらい。』


 その女性は、また、言いました。


 『200ドリム。おひとりさま、一回限りです。』


 『ふうん。いいでしょう。売店の、200ドリムサービス券4枚でいかがですか?』


 『あい。結構でございます。順番は、自分でお決めください。順番は、結果に影響しますが、予めは、誰にも、分からないのです。』




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