第20話 『ちんもくステーション』 その4
ぼくは、ふたたび、おじさんに会えたので、ひどくほっとしたのです。
考えてみれば、たしかに、いままでいた人が、ぱっと消えたり、いなくなったりは、あんまりしていないようでしたが。
なんとなく、おじさんも、急にいなくなるような気がしたのです。でも、最初は、へんなおじさんだ、とか思っていたので、申し訳なくも思いました。
最初に現れたおじさんも、変な人でしたが、悪い人ではありませんでした。
第一印象が大切だ、なんとも言いますが、それは、ごく一部分の事象に関する必要に迫られての話だと思います。
人間なんて、何十年かかったって、なかなか、中身は見抜けないものなのです。
『ちと、ホテルの中を見せてもらおうか。』
『あい。』
ぼくたちは、客室の通路を歩き始めました。
しかし、すぐに、冷や汗が流れてきました。
『こりゃ。終わらないなあ。』
そうなのです。
どこまで行っても、キリがありません。
また、先が見渡せないのです。
遥かな先まで、同じように通路が続き、客室が並びます。
『部屋番号は、どうなんだべな。』
おじさんが、やや、お国訛り気味に言いました。
『652、653、654、656、657、………続き番号ですが、すごいですね。』
『となりの駅まで行きそうだなあ。』
途中には、階段とかエレベーターは見つかりません。
『ぼくたちの部屋は、すぐに、エレベーターがありましたね。』
『んだ。このあたりだと、いらいらするよな。』
『671、672、673、…………』
と、やがて、ついに、むこうから、人がやってきたではありませんか。
『あ、キオスクのおばさまだあ。』
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