第38話 私の考える最愛のカワイイ

「ネッターさんごめん、やりすぎちゃった」

唐突に始まる自白劇。何事かと思っていたら、飴の不動産屋から連絡が。

「大変です!ミーシャさん監修の『かわカッコいいは正義パック』に問い合わせが殺到していまして、いつ販売になりますか!ローカル新聞にも載っちゃいました!」


「はい?」

「温泉に来た家族連れのお子さんが釘付けで、おじいちゃんおばあちゃんから孫のお誕生日に買ってあげたいと!まあ孫にあんな顔されたら誰だってグラッとしますよ。これは流行りますねー」

何したの?


「ゆっくんとスラりんと3人で、温泉の休憩所にガーリーでコスモなキッズスペース作ってみたら、子供が釣れちゃって釣れちゃって」

「コスモって普通シュッとしてるだろ、それが雲みたいにフワッと可愛いんだよ。宇宙服も無重力ドレスでさぁ!苺デブリを捕まえようと子供があっちこっち夢中で手を伸ばしてて、もうジジババが溶けまくってた」


「君たち温泉に行ってたの!?」

「いやー猫のアイディアで『先行変身中』って背中に貼ってたら、誰も何にも言わないのな!警備ザルすぎじゃね?」

「まあまあ、こんなところに本物の魔獣が出るとか思わないし。休憩所のお年寄りがおやつくれて、孫かわいいトークしてたから、ついね」


「あれはカワイイよ…。親も写真撮りまくってたし」

「ごめん、リピーターが増えまくって辞めるに辞められないの。早くテクスチャパック作って街にも普及させてもらわないとスラりん過労死しちゃう」

「そんなに?」


呼び出されて温泉に行ってみたら、本当にジジババが溶けまくっていた。

「これは…すごいね…。やばい、独身三十路過ぎには尊すぎて毒だよ」

「地方紙でこれですからね。少しでもいいので先行販売で出せませんか。うちの知り合いでよければ、初回分は採算度外視のお急ぎ便で進めます。それと、この宇宙船のお土産ぬいぐるみかキーホルダーを作ってもいいですか」


「何か気合い入っていますね」

「元々商売人なものですみません。うちの本家も小さい子がいるので、街で買えるようにしたいんです。もう本当にこのご縁に感謝しています」

「この大きさなら急ぎでデータ起こしすれば3日くらいで原本出せます」

「それなら温泉のイベント初日にも間に合います!ありがとうございます!」


とは言ったものの。

「うっわぁ…。これこんなレイヤー重ねてたんだ。センス天才か」

「いやぁ、スラりんの表現力が凄くて、ついね…」

「レイヤー重ねて質感調整はユキグモ仕込みのノウハウだけど、この幻影でここだけヒラヒラさせんのってセンスだよなー。猫すっげぇ」


神デザイナーと神造形師が、出逢った。そんなナレーションが聞こえた気がした。

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