第28話 キャッチリリース外来種
「で、この子どうしよう」
「うーん、海に返す?海底火山までは無理だけど」
「むしろ火山に返したらどうかな」
『水流に乗って拡散する、動物と植物の中間みたいな生き物です。戻すよりは新天地に根付かせてあげた方がいいですよ』
「水と温度が必要かな?どのくらいあればいいかわかる?」
『水は泳げるくらいで、温度は温泉くらいは欲しいかと』
「そういえばさ、火山の方に温泉の源泉みたいなやつがあるの知ってる?」
「うん、整備されてないやつね。一応あそこ私有地です」
「何で知ってるの?」
「知り合いだから。熱泉生物の繁殖とかにたまに借りてる」
「げっ。火山魚食べに行った帰りに寄ってた。あれネッターが飼ってたの…」
「えっ。もしかして、もしかしてだけど、ちょっかい出したことある?上は防御魔法で覆ってあるけど下はどこに繋がってるかわからないから、流れちゃったかと思ってたんだけど」
「……てへ⭐︎味見しちゃった♡」
こぉんのお!あざといポーズしやがって!どこで覚えたの!
けしからんもっとやって下さい!
「フタしてあったでしょーが!」
「ペラッとめくったらいい匂いだったんだもーん!」
「その話は一旦後にして。その知り合いに頼んで、泉を借りたらどうかな?」
「生態系への影響がわからないけど、やってみても良いかもね」
「ごめん…普通に使ってた…。あそこ、火山から帰る途中で休むのに丁度いいんだもん。火山魚増やせないかなーって卵入れたのもワタシです」
「あれか!突然火山魚の卵が出てきて、大混乱だったんだよ!最終的に鳥のせいで落ち着いたけど、まさかの故意!こんな所に犯人が!」
「落ち着いて、話それてるから。その件は後で話し合ってってば。」
補足すると、知人の先祖は以前火山の麓に住んでいて、噴火のガス影響で立ち入り禁止になっちゃった時に、街に引っ越してきたそう。で、今でも土地があるのだとか。登記の都合で現地確認した時に源泉を見つけ、ほったらかしていたことを、僕が元職場で熱水系フィールドワーク用の熱水汲めるところを探していた時に思い出して教えてくれた。それからちょくちょくお邪魔している。
「今日の衝撃の犯行自白ネタでレポート3本くらい行くから、それを手土産にすれば余裕で貸してくれるよ。あの防御魔法を野生生物がペラッとめくるなんて想定外が過ぎる。あとゆきちゃんのいい匂いって多分魔力を見てると思うから、魔力グラフィーとかで上手く可視化できれば、フィールドワークが変わる。ほんっとゆきちゃんはネタの宝庫だね。賢くて可愛いくてふかふかで最高だねぇ」
「ダメだ、ネッター知らない世界に行っちゃった。今日は使い物にならないと思うから、一旦ダンジョンは連れて帰ろう」
「仕方ないね。じゃあまた明日相談に来るからよろしく」
『はい、こちらでも考えておきますね』
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