第26話:満月の稲妻
ふと見下ろした。俺に助けを求めた者達を。よかった、攻撃されてない。
自由落下の中そんなことを考えていると、下から何かが来るのを感じた。咄嗟に稲妻の壁で防いだ。ちりちりに散っていくそれを見てようやく分かった、レールガンだと。
「余所見するほどの余裕のある相手なのだな!」
「いいや、そうだった。今は君に100%の夢中を注ぐよ!」
自由落下から急降下し、目の前の敵だけに集中した。衝突と共に地面は大きく凹み、流石に人の身体では耐えられないが、この身すでに人にあらず、だ。
「『朱雀之鍵爪』」
3本の斬撃が真っ直ぐこちらに飛んでくる。質量のある残像、と言ったところか。だから剣士は嫌いなんだ。
その攻撃を避ける事なく、真正面から受けた。舞い上がった土埃から深紅の稲妻が飛び散る。
「その技、いいな。何より響きがいい」
「普通の人間はこれを喰らって原型を留めておけるはずがないのだがな。やはり『龍』か」
振り上げた剣は微少な稲妻を帯電させている。それが次第にバチバチと増大していき、最後には微少とは呼べないほどの稲妻が帯電されていた。
「新技ぁ…『雷龍之鍵爪』!」
振りかざした剣から5つの稲妻が先程の朱雀之鍵爪のように飛ばされた。即座に見よう見まねで作り出したそれは、未完成ながらも絶大な威力を有していた。
咄嗟のことにマッカーティも反応できなかった。直撃した、そして衝撃で背後の障害物に風穴を開けた、島を囲う壁さえも。
俺たちはただをそれを遠目で眺めることしかできなかった。だがそんな俺らの注目を割った存在がいた、アーチャーだ。
「何が起きているかはあとでいい、今は時間がない急ぐぞ」
その言葉の意味がわからずいたが、目の端で動く物を捉えた気がした。壁を走る二つの影、燃え広がった炎で照らされてようやくわかった。レイガートとオウエンだ。彼らは迷いもなく戦場に飛び入った。
「えぇ、あなたたちは逃げて!ここまで来れたってことは帰れる手段があるのでしょう?この場は私たちに任せて」
「でも… 」
「大丈夫、伊達に騎士団長やってないのよ。彼も、私もね」
彼女目に映っているのは絶望でも強がりでもなかった。純粋な希望と信頼だ。アカライ… 彼の実力は確かな物らしい。
俺らはその場を後にし、走って抜け出した。隠していたボートに全員を乗せて出航しようした矢先、停泊されていた敵の船が爆散した。アーチャーたちの罠が作動したんだ。
俺たちの方には追手は来なかった、島の戦力は軒並みあの二人の方に行ったのだろう。途中、島の異変を察知したミツたちが船を動かしていて、割と早い段階で合流できた。
再会の喜びに割く時間もなく、俺らはすぐさま帰路についた。背には日が登っていた。
「アカライ、か…」
そう遠のく島を遠目に呟いた。
俺たちの島へ辿り着くと、もう青空が広がっていた。島民も目を覚ます時間帯だ。船の全容を捉えた誰かがみんなに知らせたのだろう、俺たちが停泊した頃には人だかりができていた。歓声の声をあげて俺らの生還を祝った。あの中に、満身創痍のオウガがキサキの肩を借りながらオドオドと歩いてきた。
「なんだ、大事ねぇじゃ… ねぇか…」
「オウガはまだ寝とかないと…!」
「馬鹿野郎!友の生還を祝わない… 男がどこにいる… 」
今にも途切れそうな声で言った。
「よく帰ってきた、タケル」
「ありがとう、オウガ」
俺たちは一旦ホワイトハウスに戻りこれまで起きたことを話した。
闇夜が蒼穹に変わった頃、カイジョウマルの大地は焼け野原になっていた。
戦場で立っているのはもはや5人だけ。
アカライとマイカ、マッカーティとオウエンとレイガートだ。
「そろそろ体力が底を尽きてきた頃合いだろ?」
「貴様も、とは言えないようだな。大地から直接魔素を吸い上げて魔力と共に体力も賄っているのか」
3人の月光国最強を相手してもなおアカライは倒れなかった。
「もうさ、やめにしない?」
そう切り出したのはまさかのアカライだった。
「俺そこまで戦いに執着してないんだよね。なんならこの戦争に飽き飽きしてる。だからもうお互いここで手打ちとしましょや!」
「舐め腐っているのか、アカライ」
レイガートがヘルメットで籠った声で発した。
「マジさ!別にこのまま戦ってもいいけど、勝敗はもう決まったも同然だろ?」
「ロウゼンと言う男を知っているか。あの人は… 貴様があの日!デント海で葬った艦隊指揮官の名だ!そしてこのオウエン・セイジョウの実の兄だ!」
オウエンが怒り任せに剣を振るった。細身のアカライとは違って大柄な男であったオウエンが振るう攻撃をまともに喰らえばタダでは済まない。だがオウエンの攻撃はズレた、なぜか彼の身体はさっきいた場所から3m離れた場所に移っていた。
「先ほどからのこのズレ… やはり貴様か、女狐!」
「女狐なんて失礼ね!私は立派なレディーなのよ!」
マイカの使うこの魔法は、魔法の使えない彼らを翻弄した。
「ま、そろそろ帰りたいし、朝食も取りたいからさ?ここらへんで帰るわ」
そう言うとアカライはマイカを抱き抱えた。赤面するマイカなんて気にせずに、アカライたちは雷に消えて行った。
焼け野原になった島に残されたのは3人だけ。戦闘による疲労からレイガートとオウエンは地面に座り込んだ。
「ここまでなのか… ボクの力は…」
そうマッカーティは一人呟いた。
「我らも帰ろう。この一件を報告しなければならない…」
「マッカーティ殿、そう気を落とすでない。相手が悪かった」
レイガートの慰めなんて耳を通らず、マッカーティは心の中で自身を責めていた。
建国譚 不細工マスク @Akai_Riko
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