第11話:教会

コウが目覚めたのちに教会を後にした。オウガがコウを小舟に連れて行くといって、俺は食糧調達をしに市場へ向かった。船の中で見つけた金になりそうなものを質屋に持っていって、金に換算してもらって、市場で必要なものを買う。正直もう魚系には飽きたし、どうせ食べるなら肉だよな。

そんなこんなで買い物していると、酒場にいた兵士がいた。何やら険しい表情で辺りを見回してる、察するに何か、あるいは誰かを探している。バレたのか?一応物陰に隠れ様子を伺う。そこに他の兵士が走ってきて、何かを伝えた、それを聞いた兵士は急いでどこかへ向かった。跡をつけてたどり着いたのは教会だった。教会前にはすでに数十名の兵士が集まっていた。すると正面ドアを蹴り破って兵士が流れ込んでいった。俺らのせいでレンが危ない状況下にある、そう思い俺も跡を追おうとしたが、裏から走っていくローブ姿の人が見えた。もしかしてと思い追ってみると、確信を持った。

「レン?何してるんです?」


驚いた様子だったが、鋭い目つきでナイフを突きつけられた。

「声を出すな… 君、他の人たちは?」


「先に船に戻ったよ」


「そうか… すまないけど、君をこのまま人質に使わせてもらう」


「提案がある、俺たちと来ないか?」


レンは驚いていたが無理もない。

「実は俺たちも追われてるんだ」


「まさか、脱走奴隷か!?」


「うん、俺らはこのまま李国へ行くつもりなんだ。あんたも来ないか?」


「… 騙してるわけじゃないよな?」


「まさか」


数秒沈黙があったが、外で兵の声がそれを遮った。

「わかった、船に乗らせてもらう。だがもし私を売ろうとした場合、すぐさま船を爆破する、いいな?」


「それでいいよ」


どうにか信用してもらえた。街影に隠れながら港まで歩いた。どうやら兵は一軒一軒訪問してるらしい、港にも何人かいるかもしれない。案の定、兵が5人港を封鎖していた。オウガも小舟に居座ったまま身動きが取れてない。

「さて、どうしたものかな」


俺はいいとして、レンは確実にバレる。強行突破しかないのか?一か八か、やってみるか。俺らは平然と兵士の横を通り過ぎようとしたが、やはり引き止められた。

「おい、どこへ行くつもりだ」


「船に戻るんですよ」


「そこのフードの男、顔を見せろ」


顔は流石にやばい、1発アウトだ。どうする?どうしたらいいんだ?そうあたふたしていると街の方から一人の男が歩いてきて話に割って入ってきた。

「そこの人たちは僕の部下ですよぉ、通してやってくれませんかねぇ?」


糸目ボサボサ髪の男がそう言った。

「貴方は?」


「あ、どうも失敬!名乗るのを忘れていたっス」


すると腰にかけてある袋から何やら鉄の板を取り出した。それを大大と自慢げに見せてきた。

「アークジュリオット家直属の行商人!?これは失礼しました!」


「いいんスヨ、肩書きだけっスから。じゃ、行きましょうか」


俺らはその人の後に続いて港に入った。アークジュリオットが何か知らないけど、運よく助けてもらった、のか?

「あの、ありがとうございます」


「いいんスヨ全然!同じの匂いがしたのでつい」


「俺らはあっちの小舟なので、ここでお別れです」


「そうスカ。それじゃまたいつかお会いしましょう。達者でねぇ、


そう言うと駆け足で彼は自分の船の方角に走って行った。

「なんだ?知り合いじゃないのか?」


「全然… なんで助けてくれたんだろう」


「というかなんで名前知ってたんだ?」


え?と思ったが確かに最後名前で呼ばれてた。自己紹介もしてないのに。

「おい、早く帰るぞ」


小舟からオウガが催促した。ガレオン船に戻るとマストの物見櫓からアーチャーが降りてきた。

「さっきからずっと後ろの方で沈黙する敵船がいる」


「?攻撃してこないのか?」


「攻撃どころか、一向に距離を縮めようとしない。何かあるぞ」


距離を縮めてこない?見張ってるのか?それとも俺たちだという確証がないのか?

「一旦出航しよう、それでもし近づいてくるならその都度対策する」


「おいおい何勝手に指揮してんだ、今は俺が船長だろーが」


オウガが割って入ってきた。

「それによ、あれは古典的な追い込み漁だ」


「追い込み漁?」


「もうすでに俺らは包囲されてんだろうな。あそこの船はオレらを罠に陥れるための囮さ」


「じゃあこのまま進んだらダメか… いっそのこと後ろに行くか?」


「いや、後ろは二段構えだ、あれは先遣隊であれを突破しても今度は五隻以上の艦隊で妨害される。どっち道もう逃げれねーよ」


完全に油断していた!ここはまだ月光の領海内、出るまでは安心できない。なのに… 迂闊だった。どうする?もう引き返せないし、進んでも死ぬだけだ。どうやったら挽回できる。

「噂程度だが、李国との国境付近には船舶があまりないらしい。なんたって黒い墓標?とかいう海賊船団が大暴れしたらしい」


レイが口を開いた。最初、彼のことを不思議な目で見ていた他の人たちも今や希望を見る目に変わった。その中でもオウガは特に驚いていた、と言うよりは感激したような様子だった。

「信憑性がない、第一お前誰だよ」


ヤマトが突き放すように言った。

「私はレン・サイガ、魔術解放団マジッシレボルの生き残りだ」


魔術解放団マジッシレボル?なんのことだ?困惑しているとガイムが反応した。

「魔術解放団!?どこの部隊だ!他の生き残りは!?」


「いない、私の所属していた南方部隊は壊滅した。お前こそどこの所属だ?」


「俺は… 北東部隊所属だ」


「あの北東部隊…!噂では殺されたか収監されたと聞いていたが」


「あぁ、俺と他3名は収監されたが…」


「そうか」


どうやらガイムが所属していた反乱軍が魔術解放団マジッシレボルだったらしい、そしてレンも。

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