特別編 虹の兆し、そして未曾有の大厄災

 ゴゴゴ。


 普段から自然の一環として彷徨う存在は、生きた雷が集結したが如く蠢きを天に響かす。


「動いているな」


 空に居場所が在る、有象無象と同様の形。

人という種がいち早く危険を察知していた。


 遍く人々から神に対する侮辱、不吉な獣、寄生虫との同時に排斥思考の高さを披露し、隔絶された世界に追いやられたが故に――。


「お怒りでしょうか」


「いや、目覚めたのだ。決して、神の逆鱗に触れた不埒な彼奴等を駆除せんが為ではない」


「何処へ向かっているのでしょうか」


「この距離、角度。南の中心部辺りだろう」


「ですが、まさかを動かすとは只者ではないようですね」


「勇者に値する者同士の争いかもしれんな」


「では、遂に世界が壊れてしまいますね」


「あぁ、だが、これも運命。抗う術を持たぬ我々は理不尽であろうと素直に従うしかない」


「私にも力があれば……」


「求めてはならない。それは過ちへの一途だ」


「はい」


「そう嘆かずとも、まだ希望は消えていない」


「信奉者。ですね」


「さぁ、皆で祈ろう」


「はい」


 虹の架け橋に住む民は手を重ね合わせる。


 神に、信徒に、魔王に。


 大地にも同様に。


「神よ、どうかあの子だけでもお守り下さい」


 偶像に祈りを捧げる母親の遥かなる頭上、空を破らんばかりの進行を続ける龍が来る。


 そして――噴火と思しき轟音が放たれた。


 大地へと。


 南の5本の指に並ぶ、国。勇者輩出による圧倒的な力は一瞬にして、灰燼一切に帰する。


 世界大陸をも呑む、虹龍の歩みによって。

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