13 失われた希望
「着いた……のか?」
石蓋を両手で押し上げ、井戸の外へと出る。
そこに広がっていたのは、見覚えのある神社の境内だった。
整然と並んだ石畳、静かに佇む社殿――崩壊の痕跡はどこにもない。
そして何より、ここには
それこそが、移動に成功したことの証だった。
「
呟きながら
誕生日は明日だ。
イザナミが現れる前に、何とかして
「おそらくこのあたりか、近くの集落に――」
言いかけた、その時。
「……なんだ、あれ」
空に向かって真っ直ぐに伸びるご神木。その中ほどに、ぼろ布のようなものが絡みついている。
距離が縮まるにつれ、それがただのぼろ布ではないことがはっきりしていく。
人、だ。
着物姿の男が、枝に引っ掛かるように宙吊りになっている。
不自然に折れ曲がった腕、力なく垂れ下がる脚。
乾ききらない血が幹を伝って、ぽたり、ぽたりと地面に落ちる。
「……っ」
声が、出なかった。
助けなければ――
そう思った瞬間、背後で空気が揺れた。
「
ゆっくり振り返ると、そこには社殿を背に立つ一人の少女の姿があった。
「……
「鏡、壊したはずなのに……どうやってここまで来たの?」
答えられない
「……ああ。あっちの時代の鏡、持ってきてたんだ。
でも、だったらなんでいつまでも昭和にいたの?」
「お前が鏡を壊したのは、無駄だったんだよ。鏡はもう――」
「――
その様子を見てイザナミが小さく息を吐いた。
「でも……遅かったね。もう、“終わった”から」
イザナミはご神木をちらりと見上げ、笑顔で語り始めた。
「コイツね、前に私をあの石室に閉じ込めたの。
「……
問いかけるような呟きを受け、イザナミは
「そ。やっと会えたじゃない」
軽やかな口調とは裏腹に、その言葉は刃のように胸を抉った。
「目覚めた“あの人”と共謀して、あの鏡を置いて監視までして――
だからね、私は逆に……おとなしくしてやったの」
イザナミは笑顔のまま、歌うように言葉を連ねる。
「おとなしくして、力をためて――最後にバーンって、全部解き放ってやった」
両手を広げる仕草が、ひどく無邪気だった。
「でね、それで死んじゃったと思ってたんだけど生きててさ。
またなんかこそこそ妙なことしてたみたいだから――」
イザナミは再び
「今度こそちゃんと、殺してやった」
世界から、色が消えた気がした。
会うことができれば、何かが変わると信じていた。
その希望が今、無惨な姿で無造作に吊るされている。
「……じゃあ……イザナギ……は……」
「消えたよ」
あまりにもあっさりと、残酷なほど簡単に。
彼女はさらりと言い捨てた。
「
膝から崩れ落ちそうになる。
イザナギが消え、残された自分は――抗う力も、守る力もない、ただの人間だ。
「でもね?」
イザナミは
「これで、ずっと一緒にいられる。
もう十五歳まで、なんて縛りもない。
そう言ってイザナミは静かに一歩、
「大人になった
思考ごと押さえ込まれるような圧迫感。
その声は、狂気じみた幸福に満ちていた。
「最初から、こうしておけばよかった。
色々大変だったけど、この人が生きてることを知れたのは……収穫だった」
「
「――あの子も、殺したわ」
一瞬の間を置いて、イザナミが言い放った一言。
それは呪詛のように重く、
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