第39話 異国の冒険者ギルドにて
しかし、大規模破壊テロリストのカスミに火竜のサクヤ、岩竜のナガヒメ。そして荷物運びのオレ。なんつうパーティーだ。盾役はナガヒメ、アタッカーはサクヤ、範囲攻撃はカスミとして何か根本的に欠けている。回復役だ。
そもそも、目的地が茶店だというのになんでパーティーメンバーが必要かというと、その茶店が遠すぎて、旅銀を稼ぎながら向かわないと着かないのだ。だからクエストをこなせるメンバーとともに稼ぎながら旅をする必要がある。だからこのパーティーの母体となったのは勇者パーティー被害者の会だが、それに竜の姉妹が合流して、グダグダになってる。あと、この国で冒険者として活動するために登録も必要だ。
「というわけで、旅銀稼ぐためにもここの国でも冒険者登録しておこうと思うんだが、どうする?」
「うん。いいんじゃないの?」
「ここの言葉覚えないと次のところ行くにもどうにもならないものね。やっぱり言葉覚えるには座学より意思疎通できないと取引できないところに身を置いて頭でなく身体でわかるのが一番よね」
「私はこの星で使われる動植物すべての言語を理解ししゃべることができます。」
おっと、ナガヒメいきなりチート……。でも問題はそのナガヒメがこっちの意図を変な解釈なしで伝えてくれるかどうかは彼女の良心しか担保するものがない。ホテル取るときも突っ込まなかったら危なかったし。
結局何をするにしても言葉が通じなければ話にならないということで、ナガヒメとサクヤからここの言語を教えてもらった。
ナガヒメは例文まるまる言い切ってその意味を説明してくれてそういう慣用句だと言うのだが、サクヤがそれを文法に区切ってバリエーション作るにはここを変えるとか、活用型があって奪格とか主格とかで単語がこう変わるとか教えてくれる。
サクヤの単語分解しての説明はとても助かるが、やっぱり最終的にはそういう言い方は無いとか、何故か奪格と目的格と主格が活用しない名詞とか、いきなり冠詞とか格助詞が現れるとか謎言語仕様なのだが、結局人が目的に合わせて喋るうちに仲間内で形成されてそれが流通することで作られるものなので、理屈ぴったりに収まるものでもないらしい。
結局、こういう言い回しが存在するというナガヒメの例文を丸暗記するのが正しい学習法らしい。
授業は深夜まで続いた。そして翌朝またいつの間にか侵入してきた女さんたちにいたずらされて目を覚ます。
―――
「頼もう!」
何か絶対に間違ってると思っているが、ナガヒメが言うにはこれがここで依頼する際の声掛けらしい。なんかラブレターとして果し状を出すような違和感だが、ここではこれであってるらしい。
大柄で屈強な男たちが集まる冒険者ギルドで頼もうと声をかけたら、普通にこれ道場破りやろ。
受付嬢が窓口に現れ、
「おー、よう来たなワレ。まぁ座ってかんかい!」
これこれ、女性がそんなガラの悪い言葉使っちゃいけませんと思うが、ここでは普通の丁寧な歓迎の挨拶らしい。
「くさいけん、風呂ハマってけし」
直訳するとニオイがキツイから風呂に入って来いって意味らしいが、ここでは歓迎の挨拶として地元の共同湯(この言葉を言われた人は地元民紹介扱いでなんと無料)にぜひ入っていきなさいという意味なのだそうだ。知らなかったらケンカになるぞ。というかナガヒメよ、本当にオレをおちょくってないか?京都でぶぶ漬けいただきますというようなこと言わせてない?大丈夫かよ。
そして本当に共同湯の鍵を渡してくれた……。マジかよ。そして風呂に行くが、残念。混浴じゃないからラッキースケベなし。いやあいつらと混浴もそれはそれで大問題なのでこれで良いのだ。
風呂にハマってから待ち合わせて再度受付に行く。一応、元の国ではBランクの冒険者で、遠方にバッグの部品を交換しに行くために旅費を稼ぎながらの移動中、仕事のために登録したい旨を告げるが、なんか様子がおかしい。
「筆頭皇祖神であらせられるサクヤさまにお仕えお守りする護衛ならば最低でもSSSランクでなくてはなりませぬ。」
えっと……。サクヤが勝手に付いてきてるのんだけど、いつの間にオレがサクヤに仕えてることにされてるの?
「とーっても強いお姉ちゃんと一緒だから大丈夫だよっ!」
えっと……。まぁ竜だもんね。そりゃあ強いよね。どの程度強いか知らんけど。
「いけませぬ。サクヤさま直々のご指名であっても、Bランクなどを随行させていたらギルドが国王から何言われるかわかりませぬ。ここは我々のメンツを立てるためにもパーティー再編を受け入れてはくださいませぬか?」
「そっち持ちでSSSランク冒険者を護衛に追加してくれるのはいいけど、バローとカスミさんは一緒じゃないとだめだよ?」
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